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本当の姿

2018.06.29

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.86
サッカーワールドカップで日本が躍進し、冷めかけていたサッカー熱がまた再燃して盛り上がっています。今回も試合会場での日本人サポーターの掃除が話題になり、他の国のサポーターも真似をするようになったと報道されて、誇らしい気持ちにはなりますが、住んでいる横浜にある本牧埠頭近くのトラック通りの道の脇のゴミ捨てなど見ると、すべての日本人が美徳の国民的な報道には疑問が残ります。

相変わらずテレビでは日本人は凄い、日本製品は凄い的な番組が多く、東南アジアをはじめ中国などの公害や建物倒壊の報道もあり、文化や技術でも日本が優れているような事の情報が多く流れています。本当にそうでしょうか?私の子供の頃の新幹線をはじめ電車内の床には弁当箱のゴミが捨てられて、33年前にミラノサローネに行きはじめた頃のヨーロッパでは、日本人の団体旅行が多く、入ったブランド店で勝手に物を触ったり、道で痰を吐く人もいて、同じ日本人として恥ずかしい思いをしました。マナーを守っていると店員さんからは日本人は展示品に勝手に触るし、接客順を待たないので困ると聞いた記憶があります。

最近、中国深圳に行きました。違う業界の会社からデザインの依頼を受け、海外の工場での打合せに何度目かの出張です。10年近く前に上海に行ったきりで、久しぶりの中国に少し驚きました。対日感情が悪くなってからイメージを悪くする報道も多く、自分の中にも悪いイメージが出来上がっていたせいか、今の中国の姿を見て驚きました。深圳は香港空港からフェリーで30分で行ける中国四大都市の一つで、人口1500万人、周辺合わせると4000万人の巨大な都市で、中国のシリコンバレーと言われ、沢山の先端企業の工場が集まっています。工場都市としてイメージし、日本にも飛んでくるPM2.5や排気ガスで曇った大気汚染に覚悟して行きましたが、澄んだ空気の中にある未来都市を見て、自分の知っていた10年前の上海の排気ガスの中の都市とはまったく違うものでした。

深圳へは香港空港直結の高速フェリーで蛇口(シューコウ)港に入国します。久しぶりの中国入管は緊張しましたが、優しげな対応で、驚いたのは、窓口にニコちゃんマークの5段階評価ボタンがあり、利用者が担当官を評価できるシステムがありました。また、ホテルまでのタクシーが電気自動車で、スタイリッシュで高性能なのには驚きました。BYDという深圳のメーカーで65kWhのバッテリーで航続距離400キロで(リーフは40kWh)内装の仕上げは日本製のタクシーとは雲泥の差、欧州車のレベルでインテリアもスタイリッシュです。タクシーの多くが電気自動車で、市内を走るバスもBYD社の電気自動車です。一般車も新しいモデルばかりで、黒い排気ガスを出す車は一台も見ませんでした。また、ほとんどのバイクや自転車が電化されています。高速道路も自動システムが運用されていますが、人のいる料金所もあり、そのゲートに座っている人が綺麗な制服姿で、教育された仕草と笑顔で、最初に通った入国管理と同じで、国を上げてのサービス向上を感じました。

市内を歩いて目につくのがシェア自転車。QRコードにスマートフォンをかざすし鍵を解除して使用できるのですが、驚いたのはタイヤです。自転車で問題になるのがメンテナンスで特にタイヤの空気です。空気無しでも使えるタイヤになっていました。今年の4月に空気不要の自転車用タイヤをブリヂストンが開発し、2019年の実用化を目指すニュースがありましたが、中国ではとっくに実用化して活用されています。海外で発表された物も中国では実用化が早く、本家を追い越し飲み込んでしまうそうです。アメリカのセグウエイも今は中国メーカー傘下になり、空撮ドローンも中国メーカーが世界を席巻しています。飲食の宅配システムも深圳では組織的になっていました。気がつくと世界の企業が中国企業の傘下になっている事も多く、スウェーデンのVOLVOも2011年から中国企業の浙江吉利控股集団(ジーリーホールディンググループ)に買収され、今年、メルセデスベンツの筆頭株主も同じ会社になりました。最初、VOLVOはチャイナマネーに飲まれ、消え行くブランドと言われていましたが、品質と安全性を格段に向上させたニューモデルをどんどん投入し、日本でもカーオフザイヤーを受賞しました。

市内に建つ多くの建築は海外有名建築家が手掛け、日本だけでなく、世界でも見る事のできない建物がどんどん出来ています。中国人ブランドの高級ブティックや、古い街並をリノベーションしたアートシーンのOCTや無印が手掛けたMUJI HOTELなど、建築やインテリアでも世界を牽引しつつあります。それを使う人のセンスや感覚が追いついていないようには見えましたが、、。日本にだけいると、自分達の実力が見えなくなってしまいます。都合の良いニュースやネットだけで情報を得て他の国の事をイメージする事は危険です。私自身はできるだけ自分で感じ見た物を理解しなければと思ってきましたが、久しぶりの中国を訪れて、イメージだけ先行させていた事を本当に反省しました。若い人達もどんどん海外に行っていろいろな物を吸収しながら自分たちの実力も再認識すべきだと思います。

当社は国内生産にこだわって物作りを行ってきましたが、良いパーツはカナダ製のガラスなど海外パーツも使用してきました。秋の新作には海外で製作したパーツを使用する予定です。どのような製品になるか、、お楽しみに!
(クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇) 左:深圳のタクシーBYDe6。BYD(Build Your Dreams)社は深圳郊外に本社を持つ電気自動車などの総合メーカーで、ウォーレン・バフェットも出資をしている。インテリアは流れるようなインパネで、センターの画面には料金以外に運転手の写真と評価の星が並ぶ。右上:深圳の中心街。日曜で車は少ないが驚くくらいの澄んだ空気です。右下:シェア自転車でタイヤをよく見ると孔の空いた空気無しタイヤです。指で押すと空気が入っているような硬さです。 左上:新都心にある深圳市の体育関係の施設は巨大でスケール感に圧倒されました。左下:新都心にはアメリカLAの建築事務所コープ・ヒンメルブラウの現代美術館がオープンしていました。中に入るにはパスポートが必要で写真が取れずに残念です。右:OCT-LOFT 1980年代から空き家になっていた倉庫や寮をリノベーションして工芸デザインセンターが作られ、15万平方メートルの中に多数のショップやギャラリーが並び、中国のアートやデザインの発信基地になっています。

椅子とテーブルの差尺について

2018.05.30

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.85
先日、家具と人間工学について話をする機会がありました。椅子やテーブルは、人間工学的に考えられて設計されます。その基になるのが、人間のいろいろな部位を測定した人体寸法です。私が初めて人間工学を知った高校生の頃には千葉大学の小原二郎先生が測定したデータで家具を製作しましたが、今では国立研究開発法人産業技術総合研究所が217カ所の人体部位寸法を測定しており、日本鉄道車輛工業会の電車のシート規格や、自動車のシート、眼鏡や帽子などファッション関係など、様々な分野で活用されています。

椅子については使用される人体部位は、下肢高(かしだか)椅子の高さや、座位臀・膝窩距離(ざいでん・しつかきょり)座面の奥行き、座高(ざこう)が関係します。テーブル高さについては、この座高に基づいて椅子との差尺寸法が計算されて算出されています。この椅子とテーブルの差尺が合っていないと、使い心地だけでなく、姿勢が悪くなり、肩こりや頭痛など健康被害を引き起こす事があり、とても重要な高さです。しかし、ネットで差尺を検索すると多くのサイト(ほとんどのサイト)で間違った情報が書かれています。差尺とは座の高さとテーブルの差や、椅子のSH(シートハイ)とテーブル高さの差と書かれています。家具メーカーのサイトだけでなく、権威ありそうなインテリアや建築関係のサイトでも同じような書かれ方をしていています。この間違いはインテリアのプロの中でも間違った認識をしている事が多く、カタログに明記されている椅子のSHに差尺を足した物がテーブルの高さと認識されています。

差尺の正式な算出方法は座高÷3-10ミリで、身長が170センチの方で座高が900ミリ÷3-10ミリ=290ミリが差尺となります。そして、その290ミリを座の高さにプラスするのですが、410ミリの座の高さに290ミリを足して700の高さになります。しかし、この座の高さの基準が問題なんです。一般的に販売されている椅子はSH400から輸入品のSH470くらいまでかなり高さに幅があり、同じメーカーでもデザインによってかなり高さの表記が違います。当社の椅子もSH410~SH450と40ミリも違います。それに合わせるテーブルの高さが40ミリ違うかといえば、そうではありません。座の高さの基準になるのが、座位基準点になります。これは座骨結節部(骨盤の下に突き出た部位)で人が座る時に身体を支える場所になり、この座位基準点の高さに差尺を足してテーブルの高さが決まるのです。

当社では椅子のSH表記の高さが違っても同じ座位基準点になるように設計されています。SH410と低いものはクッションが薄く、座の素材が合板タイプで、SH450と高いものは下地にバネを使用し、柔らかなウレタン素材のクッションを置いて仕上げています。そのために、カタログ表記上の座の高さが違っても、座位基準点は同じです。同じメーカーではSHが違っても同じ高さにお尻の座骨が止まるように設計されている事が多いと思いますので、SH表記寸法でなく、座基準がどの辺りになるかを理解して、差尺を足してテーブルの高さを決めるようにしましょう。家具は使われる方の身長によって各部の寸法が決まってきますが、既成製品では平均身長から割り出された寸法になります。日本だと男女の平均身長165~170センチで算出されたサイズになりますが、人間は合わせる許容能力がありますので、ミリ単位で気にする必要はあまりありません。

当社の家具は人間工学に基づいて設計していますので、デザインは違っても、どの椅子に座っても大体同じ座位基準点になり、同じ掛け心地になるようになっています。テーブルの高さはH700~720の高さに合うような基準点ですので、当社以外で購入される場合は、その範囲でお選びいただければ間違いありません。また、大きなお客様用に座の高さを高くしたり、低いお客様用に脚をカットなど特注対応もしていますので、お気軽にお問い合せ下さい。
(クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)
左:座が合板でクッション性の無いアルコはSH420ミリですが、座位基準点は410ミリです。右:座下にバネ下地が入っており、75ミリのクッションを入れているNC-007MはSH450ミリですが、こちらも座位基準点は410ミリです。 左:人体部位寸法から出した差尺表と計算式です。右:差尺の基準になる座位基準点は座骨の先端の座骨結節部です。ここが座って落ち着く辺りが座位基準点で日本人の平均身長では高さ410ミリ辺りになります。椅子のカタログ表記のSHとは違います。

秘境のカフェ

2018.04.27

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.84
先日、沖縄で最後のアメリカ西海岸レポートを終了しました。沖縄代理店のモジュールさんでのセミナーも15年続けていて、毎年楽しみにされているお客様も多くいらっしゃいます。沖縄は赤瓦の塀に囲まれた住宅のイメージですが、沖縄の住宅は94%が鉄筋コンクリートで建てられていています。戦後の木材不足や台風の事など様々な要因はありますが、コンクリートで出来た住宅の多さに驚きます。そういった事もあるのか、沖縄でのアメリカ西海岸レポートの感心の高さで沢山のお客様に来ていただきます。

那覇市にあるモジュールさんはインテリアショップには珍しく文具と家具を取り扱っています。オーナーご夫妻のセンス良く、私自身も沖縄で文具を購入する事が定番となっています。モジュールさんのお客様はモダン住宅の建築設計をされている方が多く、その中でも宜野湾市にある設計事務所のAtelier TAKE5さんは、スタイリッシュな建築を手掛けています。北部のやんばる国立公園内にあるBOOK CAFE OKINAWA RAILもその一つで、那覇市から車で2時間かかる秘境にあり、当社の家具を使いいただいています。今回、どういう場所なのか知りたくて向かいました。

カーナビに住所を入力しようとするのですが案内が出ません、。途中からグーグルマップを頼りにしたのですが、電波が途中から入らず、国立公園内にあるので道案内の看板もありません。うっそうとした木々に囲まれ、恐竜が出そうな森と道をなんとか進みますが、だんだん細くなり不安になります。垂れ下がったシダ樹木の枝が車の屋根をこするようになって、引き返そうと思ったころ、いきなりモダンな建物が現れました。それも何で?と思うくらいモダンなコンクートの建物です。ホームページではなんとなく分かっていたのですが、驚きました。沖縄はしばらく前からカフェブームで、日本の他の地域でもそうなのですが、DIY的に作られたインテリアで、簡単に始めたお気軽カフェが多く、コーヒーや料理に少しがっかりする事が多くあります。ひょっとしてそういったお店ならご挨拶せずに帰ろうかなと思い、とりあえず、コーヒーとケーキを注文して座って見渡しました。

店内はBOOK CAFEというだけあって、片側一面には本棚があり、沖縄県に関係する本を始め沢山の本が並んでいます。厨房にはコーヒー豆の焙煎機が置かれなんでこんな山奥にこんな空間なんだろうと、、それにしても置かれている本もセンス良いし、、。やがて出てきたコーヒーとケーキの器と盛り付けを見て驚きました。カップ&ソーサーはマイセン、ケーキ皿はジノリ、チーズケーキは本格的で美味、焙煎されたコーヒーも美味しい、、。なんだか狐に化かされているのかもと思うくらいなんでこんな秘境にあるカフェで?と思いました。山奥で電信柱も無く上下水道もありそうもありません。でも、照明は付いていて、トイレは水洗でウォシュレットもあります。電気や水などのインフラ網に繋がっていないのになぜ?

オーナーの金城さんに、訪問の訳を話してお店の事や家具の話をお聞きました。民宿をしているお父様が持っていた土地で、宿泊施設を作ろうとしたが電気も水道も無く断念した土地でしたが、今の時代になってソーラーで電気を供給でき、下水を蒸発拡散させる装置などが作れるようになりオフグリッドでもエネルギーを自活して作る事ができたそうです。それでも電線が無いので電気会社には断られ、自ら電気技師の免許を取得してソーラーパネルや蓄電池を設置したり、山の水をフィルター設置して保健所の許可を取ったり、完成まで6年かかり相当な苦労があったそうです。そのせいで料理の勉強をする事を忘れたので、良い料理は出せませんと、、でも店で出されるチーズケーキや和菓子は都内の美味しいお店に負けていません。

建物はモダンですが、回りの動物達に配慮して景色が抜ける方向には明かりがもれるような大きな窓はつけず、落ち着いて本を読めるように音楽や家具にも相当こだわりがありました。ブックカフェという事で、図書館イメージで天童木工の水之江さんの椅子と、他にモダンな空間がしまるようなデザインで長く座れる椅子をさがしていて、当社のイリスにたどりつかれたそうです。椅子を名前で読んでいただいたにも驚きでした。店が完成したのはエリアが国立公園に指定される2ヶ月前で、後だったら作れなかったそうです。

環境に配慮したと言われる空間は作りが自然な作りで、人に我慢を求める事が多く、モダン化と環境問題は反するイメージですが、秘境の中でも環境に配慮したモダン建築とモダン家具で、快適さもあるという事を初めて知る貴重な経験ができました。皆さんもぜひ沖縄へ行かれた際はやんばる国立公園の原生林にあるBOOK CAFE OKINAWA RAILへ行って見て下さい。きっと驚かれます。でも、道に迷わないように、、。秋の新作の企画も進めていますが、ゆっくり本を読める椅子もいいかなと思っています。  (クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇) 左上:やんばる国立公園内の原生林の道を走ります。心配になるくらい荒れた道です。左下:建物の開けた側には小さな窓で光が外に漏れて動物達に影響が少なくしています。右:建物の前には恐竜時代にあったような巨大なヒカゲヘゴがあります。建物はコンクリートのコンクリート打ちっぱなしのモダン建築です。
建物の中の山側には大きな窓がありますが、景色が良いわけではありませんが、風が通り鳥の声が響きます。道路側一面は本棚になっていて、部屋の中心にピアノが置かれます。チーズケーキが置かれた皿はリチャード・ジノリでヒカゲヘゴの葉が添えられます。和菓子は金城さんのお姉さんの手作りです。沖縄で桜餅が食べられるなんて、、。

旅立ちの季節

2018.03.30

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.83
東京では桜の染井吉野がいつもより早く満開になりました。染井吉野は学生時代を過ごした西日本では卒業式の桜で、巣立つ時の少し寂しい花のイメージでしたが、東京に就職して最初の仕事がお花見の場所取りで、東日本の桜は入学や入社の新しい門出の花なんだと思い、同じ桜でも感じ方が違う事を思いました。今年の桜は本当に早く、広尾本社近くの臨川小学校の桜の前で卒業式の写真撮影している子供達を見ながら、この子達は卒業の花のイメージになるんだろうなと思いました。春は当社の新しいモデルの旅立ちの季節にもなっています。

毎年、新作のスタートは遅いのですが、今年は、昨年秋に発表した2018年の新作チェアが好調です。当社のポリシーの「廃盤にしない」「大量生産をしない」「国内生産」ことから、数年先のデザインをイメージをして製品化した製品が多く、いつもは徐々に販売数が伸びてきて数年後に売れている事が多いのですが、今年はすぐに販売実績が上がっています。その製品の出荷前の品質検査に山形の工場へ行き、完成品を見ながら強度試験の時の事を思い出していました。当社の椅子はJIS規格の繰返し試験の3倍をクリアした強度を実証してからでないと発売はできません。その為に製品化の途中で公的な工業試験場で試験実施し、その試験にパスさせる事が製品開発の最後の仕事です。

新製品を創る時には強度的な事も考えながらデザインを行うのですが、太く頑丈そうなデザインではインテリアに邪魔になります。空間に溶け込みながら、どこにでもありそうで無いのが、私のデザインポリシーなので、最初に描くスケッチは細く華奢なラインのデザインになります。華奢なデザインは構造が強度に直結するので、構造自体を考える必要があります。2018年モデルのMD-801は構造的にも初めて取り組んだ椅子なので、強度試験に立会うために工業試験場に向かいました。椅子の強度試験機は昔はほとんどの県の工業試験場にあったのですが、試験機を製作している会社が無くなり、残っている試験機が少なくなった事もあり、日本でもあまり多くありません。椅子を製作してる山形の工場から一番近かった山形市の工業技術センターの試験機も無くなり、試験機があるのは山形から車で2時間にある庄内の山形県の試験場です。県の工業技術センターは地域の特産物の技術力向上を支援する為に設置され、食品から金属製品の様々な技術的研究を行い、様々な試験も行っています。椅子の試験は山形の特産技術部で行っていました。椅子も山形の特産物なんだなと、思いながら試験場に向かいました。

昭和の雰囲気を残す建物の一角の部屋には大きなスチールフレームの試験機が置かれています。フレーム自体は大きいのですが、構造はあっけないくらいシンプルで、かなりアナログです。水平な鉄板の上に置かれた椅子の座に、人が座る事を想定して55キロの砂袋を置きます。そして後脚に蝶番を付けて軸にして、前脚を正確に5センチ上げるように背中の上を後ろからワイヤーで引っ張ります。昔高校生の時に教室でよくした椅子の前足を上げる格好です。それをいきなり落とします。そうすると床の鉄板に前脚からガタンと落ちて滑り前に行こうとします。椅子全体が歪み、グン、バタン、ギャーと音を立てて、椅子から悲鳴が上がり、耳を塞ぎたくなります。通常なら一般家庭用木製椅子なら4000回でパスなのですが、当社は3倍の12000回の試験を行うので、それは過酷な試験です。工業試験場の担当官は椅子の状態を見るために、ずっとその前にいてくれます。全て終えるのに2日かかります。

担当官の方にお話を聞いたのですが、壊れる椅子は機械をセットする時に分かるそうです。当社の事は覚えていてくれて、定期的にずっと試験を出しているメーカーとして認識してくれていました。強度試験をパスするタイプは、動かない固めたタイプと、力を逃して揺れながら持つタイプと2つあるそうです。どちらが良いかは言えませんが、固めたタイプはいきなり壊れるそうで、力を逃すタイプの方が面白いデザインが多いそうです。当社の椅子も華奢で一見持たない印象だけど、上手く力を逃して試験を無事終えるそうです。今回の新作は1度目にクリアして試験的には合格でしたが、フレームにヒビが発生していたので、万全を期して再度試験を受けて完全に合格しました。

そうやって当社の全ての椅子は試験をパスして、初めて製造を始められます。人の全体重を乗せる椅子だからこそ、安心してお座り頂けるように、最初に作られた子達は過酷な試験を受けるんです。そしてやっと世の中に出て行けます。桜の季節になると旅立つ人達が多いのですが、当社の家具たちもお客様の元に旅立ちます。さて、そろそろ2019年モデルの開発に取りかからないといけません。今年はどんなタイプのデザインをしましょうか。お楽しみに!         (クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)



動画:55キロの重りを座に乗せて、前足を5センチ浮かして落下を12,000回(1分間に25回)繰返します。全て終わるのに8時間かかります。途中1,000回ごとに緩みや破損が無いかを確認するので、試験は2日間に渡ります。
左上:山形県工業技術センター庄内試験場です。右上:JIS S1052用の試験機です。今では旧JISになりましたが、総合的な強度試験では実際の使用に近い試験です。さくら製作所が製作した機械での試験となっていますが、その会社が無くなってしまい、この機械が壊れたら試験ができなくなってしまいます。下右から:モーターに回転する円盤が付けられていて、それにワイヤーが付けられていて、回るごとにワイヤーが引っ張られます。床の鉄板に蝶番が固定されていてそれに後脚が付けられます。前脚は床面から5センチ上がるように計測されます。座の上に55キロの重りを乗せて12000回繰返ります。 工業技術センターの正式な書類として発行された試験成績書。左:繰返し試験の成績書で通常4000回の所を12,000回希望して試験をしてもらいます。右:肘部静的水平力試験の成績書で、脚を固定したアームチェアの両肘に内側より30キロの加重を10回負荷をかける。60キロの人が座る時に両肘にかける体重を想定しています。当社は全ての椅子の試験成績書を取得しています。

デザイナーとして見るべき映画

2018.02.28

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.82
デザインに目覚め始めた高校生時代に、映画部に在籍していた事もあり、年間パスを使って映画を沢山見ました。インターネットが無い時代には海外のファッションやインテリアデザインを感じる事ができる有意義な経験でした。青春時代を過した高知市は映画館は少なかったのですが、映画は2本立てで一度入ると何回も見る事が出来て、古い映画を上演する名画座では昔の映画を漁るように見ました。年間百本近くを見たと思います。当社の若いスタッフに映画は何を見ればいいですか?と聞かれた事もあり、若い頃に参考になった映画を思い出す事にしました。

2001年宇宙の、旅の宇宙ステーションに置かれたオリヴィエ・ムルグの、赤いDjinn Chairや先日続編が公開された、1982年公開のアメリカ映画リドリー・スコット監督のブレードランナーなど、いろいろ思い浮かびましたが、他に参考になりそうな映画を思い出しピックアップしたいと思います。下記に少しの感想を添えて箇条書きします。まずは、サスペンス映画の神様、アルフレッド・ヒッチコックの黄金時代と言える1950年代のハリウッドで製作された映画は俳優のファッション、インテリアは見るべき物が沢山あります。その中でも下の2つは印象に強く残っています。

「北北西に進路を取れ・North by Northwest」1959年製作でケーリー・グラント主演。エヴァ・マリー・セイントのファッションと最後のシーンに出てくるモダン住宅はセットと思えないスケールで、アメリカのモダンインテリアには心躍り、今のインテリアシーンとしても参考になります。
「裏窓・Rear Window」1954年製作でジェームズ・ステュアート主演。ニューヨークのとあるアパートを舞台にしたサスペンスですが、主人公の部屋の全容は見えませんが、モダンすぎず適度に生活感のあるインテリアは、快適なインテリアは何かを感じさせてくれ、恋人のグレース・ケリーのコスチュームデザイナーのイーディス・ヘッドが手掛けたファッション本当に綺麗で、美しさは何かを教えてくれます。

フランスのアラン・ドロンとアメリカのスティーブ・マックイーンの映画。二人のファッション今でも色褪せません。

「太陽がいっぱい・Plein soleil」1960年のフランス映画でアラン・ドロン主演、ルネ・クレマン監督の代表作。音楽はニーノ・ロータで音楽も大ヒットしました。アラン・ドロン扮する貧しいアメリカ人青年トムが、金持ちの道楽息子フィリップを殺して彼に成りすまそうと計画する映画ですが、新上流階級の生活からリゾートスタイルまで感じる事ができ、住宅やホテルのインテリアなど刺激になりました。またアランドロンは本質的な格好良さとはを感じさせてくれます。
「ブリット・Bullitt」1968年のアメリカ映画でスティーブ・マックイーン主演、ピーター・イェーツ監督作品。マックイーンが運転する1968年型フォード・マスタングGT390と敵のダッジ・チャージャーによる、サンフランシスコの急斜面を利用したカーアクションがあり、マックイーンの男らしさのファッションやライフスタイルは色褪せません。

インテリアはモダン過ぎても人間らしさが失われる事を感じさせてくれたのは「ぼくの伯父さん」。

「ぼくの伯父さん・Mon Oncle」、ジャック・タチ監督・脚本による1958年のフランス映画で第31回アカデミー賞外国語映画賞を受賞。50年代のミニマルデザインと未来的な働き方を風刺した映画です。主人公の父親でプラスチック工場社長のアルペル氏の自宅は、超モダン住宅で、学生時代に初めて見た時はこのモダン建築の住宅に魅せられました。しかし、下町のアパートのてっぺんの部屋に住み、自由な生き方を好む伯父さんは、この家が心地悪く描かれていました。学生時代にはあまり理解できませんでしたが、今の歳になり、今の時代ではこの伯父さんの気持ちが良く理解できます。

「007シリーズ」ジェームズボンド役のショーン・コネリーとダニエル・クレイグの2人が主役の映画はインテリアも参考になります。他にも好きな映画は沢山あるのですが、紹介しきれないので、、、。その時代の新しいインテリアを見せる映画は沢山あります。それをリアリティある舞台にするのが、インテリアに携わる人々の仕事です。大作映画や漫画が原題の映画もいいのですが、ファッションやインテリアを見るための映画もたまにはいかがでしょうか。秋の新作の企画に入らないといけません。さて、次のテーマは何に、、。  (クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇) 左:「北北西に進路を取れ・North by Northwest」の最後のシーンに出て来る家はセットで作られました。映画の中でもセットと思えない完成度の高さです。右:「裏窓・Rear Window」のジェームズ・ステュアート役の主人公の家は普通のアパートの設定ですが、スタンドライトの照明で居心地が良さそうです。グレース・ケリーのファッションは素敵で最後のシーンのデニムに赤いボタンダウンは最高でした。 左:「太陽がいっぱい・Plein soleil」主演のアラン・ドロンはこの映画でスターになりました。劇中でのシャツの着こなしは本当に綺麗でした。右:「ブリット・Bullitt」のスティーブ・マックイーンは無骨さだけでなく、繊細な印象もあり、ステンカラーコートの着こなしが格好良かった。
左:「ぼくの伯父さん・Mon Oncle」のモダン住宅はジャック・ラグランジュによって設計されました。映画の中で主人公のぼくと伯父さんが居心地悪そうにしているのが印象的でした。右:007シリーズの「ダイヤモンドは永遠に」パームスプリングにあるジョン・ラトナーの住宅で撮影されました。

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