COLUMN

2013.8.28 DESIGN

お店の椅子が気になります。

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.15
職業柄、店舗やお店に入った時に店内の家具や調度品が気になる事があります。中でも椅子はデザインや座り心地など特に気になるアイテム。デザインはもちろんですが、座り心地やお店の内装や雰囲気にマッチしているかどうかも大切ですよね。

先日、河口湖近辺の「ほうとう」のお店に行った時の事。「ほうとう」がメインメニューの老舗店で、店舗はいくつかあるのですが僕が入ったのは最近オープンした新しいお店。不思議な外観で真夏の暑い最中でしたが、お店はとても繁盛していました。外観も目を引きますが、店内で気になったのが使われている椅子です。一つは曲線を活かした黒いスチールパイプの椅子。スチールパイプとソリッドの木材を削り込んで組んだ椅子ですが、木の椅子にありがちな固い当りが無く座り心地も良好で溶接もきれいです。もう一つが、針葉樹のフレームに「い草」の座面を使用したハイバックベンチ。そぼくなハンドメイドっぽいベンチに見えますが非常に精緻に作られていました。

針葉樹は手触りが柔らいのですが、素材自体も柔らかく伸縮も大きいので細かい加工には向かない強度を出し難い材料です。あまり家具には針葉樹を使いません。巷にある針葉樹の椅子等は大工さんが作ったような粗い作りになりがちです。強度を出すためにごつい部材を使って金物や木ネジ、補強材をふんだんに使って強度を出す方法を取ります。しかしこのお店のベンチは、ミニマムな部材を使い、いたってシンプルで金物等が露出しているところがありません。仕口もきれいです。デザインは素朴ですが、角度や曲線を用い脚部には細い挽きモノ(棒状の部材)まで使っています。よく見てさらに驚いたのですが、背の曲線状の格子パーツが成型合板でした。このベンチ用に型を作ってプレスしたのでしょうか・・・。座り心地も良く、シンプルな構造で軽量なので耐久性もあると思いました。

最近は飲食店で使われる椅子やテーブルのコストも厳しい場合が多くなり、家具のセレクトも悩ましいところです。でも、今回のお店のように特に高級でもなくグレード(お値段?)の高いお店でなくても、椅子や家具に時間とコストを掛けているお店があるんですね。これからも、気になるお店や家具の情報を見つけたら皆様にご紹介したいと思います。
(エーディコア・ディバイズ 企画開発/武田伸郎)

お店で使われていたハイバックのベンチとスチールパイプの椅子。
不思議な外観(他のお店は田舎屋風の店舗です)と、名物のほうとうです。