COLUMN

2021.4.28 DESIGNER

住みたい家

AD CODE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.119
先日、第93回のアカデミー賞の発表がありました。今年の作品賞はノマドランドが受賞しました。最近のアカデミー賞の受賞作品は社会的な問題作や、政治的な背景で受賞する作品が多く、娯楽として楽しめる夢のある映画が少なくなっているように感じるのは私だけでしょうか、、。高校生の時に映画部だった関係で、多くの映画を見て海外のカルチャーに出会い、スピルバーグやルーカスの映画では最新映像に驚き、名画座では古い映画のファッションやインテリアにうっとりしました。社会人になり2003年からアメリカ西海岸でカタログ撮影をするようになり、映画産業と使われる住宅の関係を知ることになりました。

それまで映画やテレビでは作られたセットの中で撮影されると思っていたのが、ロサンゼルスで撮影をするようになり、実際に住んでいる住宅や街で撮影に使われていて、自然光の中で実際に使われているからこそ、リアルな空気感のある映画になる事を知りました。当社でカタログ撮影に使用した家も、ディカプリオ主演のアビエイターや、ブラット・ピット制作で主演したマネーボールで使用されました。取材に行ったダウンタウンのアールデコのイースタンビルではプレデター2で使われていて、訪問してから、どこかで見た事のある建物だな、、と思うと映画で使われていた事が多くあります。ブラット・ピットのマネーボールもTVで見ていて、あっ、この家は行った事のある家だとすぐに分かりました。人の名前と顔を覚えるのは苦手でも、行った事のある場所と家は一瞬見ただけでも分かります。

ブラット・ピットのマネーボールで使われた家は、訪問した200軒以上のアメリカ西海岸の住宅の中で一番住みたい家はどこ?と聞かれて、そこだと言える住宅です。マリブの海が見える海岸線の丘にあり、馬小屋のある古い住宅を2010年にリノベーションし、60歳代の夫婦がお住まいでした。そのご夫婦はアリゾナに住んでいて、終いの住まいとして購入されました。2013年の夏に撮影をする時に、TVドラマ撮影のスケジュールと重なり、危うく撮影がキャンセルになるところでしたが、現地でお世話になっているプロデューサーのYASUKOさんがそのTVドラマのプロデューサーと知り合いで、スケジュールを開けていただき撮影する事ができました。

マリブの海が見渡せる庭のある家は、住宅へ続くアプローチに木漏れ日が揺れ、爽やかな風が吹き抜けるエントランスが印象的で、部屋に入った時に青い空とプール、マリブの海が目に入り、思わず声を上げました。ナチュラルな優しい色合いのインテリアは白が基調で、いつまででも居たくなる住宅でした。この感染禍の中でも安心して家族が過ごす事ができる家とはこんな空間なんだろうなと今も思い出します。清潔感溢れるインテリアはどこも居心地が良いのですが、寝室とバスルームが特に印象的で、バスルームは高い天井でその天井近くに窓があり、柔らかな光がバスルーム全体を明るくして影を作りません。リビングなど他の部屋も柔らかな光に包まれるような家で、終いの住まいとして作られたオーナーのセンスの良さを感じました。

今年はアメリカ西海岸でのカタログ撮影だったのですが、私たちがワクチン受けられる日が、いつになるか分からないのでは、ロケハンに行く事もできません。いつの日か自由に行ける日を思いながら、マリブの爽やかな風を思い出しています。夏のアメリカ西海岸建築レポートでは、今まで撮りためた建築の中から、私自身が好きな住宅、建築の紹介でもしようかなと思っています。まだ不自由な時間が続きますが、お身体に気をつけて。(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

マリブの住宅を使ったカタログ撮影カット
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左上:大きな木々の木漏れ日が爽やかなエントランス。右上:リビングの前の庭とプール。マリブの海が見渡せます。左下:リビングルーム。馬小屋だった場所にあるリビングルームで白い染色の床材が爽やかです。右下:この場所で撮影は行われました。ブラット・ピットの座っている椅子やソファはそのままで、住んでいる住宅をそのまま使用しているのが分かります。
左上:リビングから続くダイニングコーナー。シンプルなベンチだけのダイニングです。右上:現代美術館のような住宅で白い壁が陰影によって表情が変わります。左下:寝室は小さな暖炉とアートが掛けられています。右下:天井の高いバスルームで寝室と同じくらいの広さがあります。天井近くにある窓から光が柔らかに広がります。