COLUMN

2021.7.30 DESIGNER

ロケハンで思う事

AD CODE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.122
東京オリンピックが始まり、選手達の大活躍は新型コロナ感染に沈んでいた世界を明るくしてくれています。会場に行けなくても、選手達を応援している気持ちは同じで、日本勢の大活躍に心踊る毎日です。本来なら今年はアメリカ西海岸での撮影予定だったのですが、日本での撮影になりロケハンに回っていました。今まで、ハウススタジオがメインでしたが、日本でもロケーション手配をする会社が見られるようになり、一般住居や飲食店などを時間単位で借りる選択が増えています。驚いたのは、日本では住宅にロケハンに行くだけでもお金を取られます。ロサンゼルスではお金を取られた事は無く、決めるために見せるのは当たり前のようです。お金を払ってロケハンしても、なかなか良い物件は無く悩んでいます。

先日、いつも西海岸ロケでお世話になっている、プロデューサーのYasukoさんとLINEで話していると、近所の家がハワード・ヒューズが1950年代に建てた家だったのよと。その家は、Yasukoさんの自宅の斜め前で、いつも気になっていたセンス良いミッドセンチュリーの家で、その家を建てたのが、20世紀を代表する億万長者として知られているハワード・ヒューズの家と聞いて、逆に豪邸ではない建物に驚きました。スコセッシ監督の作品「アビエイター」では、レオナルド・ディカプリオ主演で、ハワード・ヒューズの波乱に富んだ半生を描かれていています。その映画の中で撮影に使われた住宅がフランクロイド・ライトJrの設計で、当社の家具撮影を行なった住宅と同じという事もあり、ハワード·ヒューズの名前はなんとなく身近に感じていました。ウエストハリウッドはそんな家が点在しています。

新型コロナ感染で長い間ロックダウンしていたアメリカでは不動産取引が好調で、Yasukoさんの住むウエストハリウッドでも、古い住宅を壊して新しい住宅を建てる事が多くなり、ミッドセンチュリーの建物が少しずつ少なくなっています。Yasukoさんの話では、IT長者やロシアやアルメニアなどの億万長者にはミッドセンチュリーよりも、新しく建てた分かりやすいギラギラした建築が好かれるらしく、以前はミッドセンチュリー住宅をセンス良くリノベーションしたモダン建築が多かったのが、センス無い家が増えて困ると、、。その時代に現れるお金持ちの好みも変化しているようです。国籍や相手によって様々なセンスで対応するデコレーターがいるのも、アメリカのインテリア業界の奥深い所なんでしょうね。ウエストハリウッドでも好きな建物はジェームス・ディーンが亡くなるまで住んだアパートです。70年前の木造アパートが未だに使われているのもロサンゼルスならではです。

日本でも古くても雰囲気のある建物をリノベーションする事が増えてきています。アメリカのヴィンテージと同じように、今の人には昭和の雰囲気は心地よく映るのでしょう。私自身も街中にふと昭和の雰囲気を見つけると立ち止まってしまいます。9月初めに開催するアメリカ西海岸建築レポートでは今までに撮りためた200軒以上の中から、今のインテリアと思える建築を厳選してお届けしようと思っています。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左:ウエストハリウッドの山道沿いにせり出すようなハワード・ヒューズが建てた建物。下から見上げると木造で大きな屋根が特徴です。右:ジェームス・ディーンが1955年に亡くなるまで住んだアパート。70年以上経た木造アパートですが、知る人ぞ知る建物です。
左上:「アビエイター」でレオナルド・ディカプリオとケイト・ベッキンセイルがマーティン・スコセッシ監督に演技指導されています。左下:1920年代にフランクロイド・ライトJrの設計で建てられた家で、2003年に撮影をしました。右上:リビングルームでNC-016とNC-007Lのセット撮影。右下:ダイニングルームでNC-021とNC-025のセット撮影