COLUMN

2024.2.27 DESIGN

カーボンニュートラルな社会実現へ向けて

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.142

先日、明治22年創業の130年以上の歴史ある建築木材の加工工場を視察してまいりました。エーディコア・ディバイズで一昨年から取り組んでいる国産針葉樹合板の活用ですが、2024年のモデルでは内部構造を100%針葉樹合板を使ったソファMD-3211ソファを発表しました。SDGs、カーボンニュートラルな社会の実現に向けた製品作りの一環ですが、そんなブランドの姿勢に共感いただいた方から「同じ思いを持った木材加工の工場があり面白い資材も開発しています」とご紹介いただき工場を訪問することになりました。

岐阜地方の緑豊かな工業団地内の広大な敷地内に工場はありました。オフィスにご案内いただき、お互いの企業理念やブランドコンセプトをお話ししました。歴史のある工場なので、明治から始まる日本の西欧化から昭和の高度成長期、そして21世紀に入り国産材の需要の低迷期など、日本の木材加工の歴史を辿ってきているわけですが現在取り組んでいるのがカーボンニュートラルな社会への挑戦、環境にできるだけ負荷をかけない「地球環境にとって意味のある木材利用」でした。企業理念も独創的ですが社長もちょっと変わった経歴の持ち主で、ドイツに滞在した経歴があり「ドイツ気候療法士」の資格をお持ちでした。(ドイツでは生活の中に公園が必須のお国柄で、行政的な視点から公園のプランを景観や緑化だけでなく、人間の健康にいかに良い影響を与えるかを計画するのが気候療法士なのだそうです)そんなユニークな会社から提案いただいたのが、圧密加工で硬く改良された国産のスギやヒノキ材でした。

2000年頃から国産材の利用率が低迷し森林の荒廃が増加、それに伴い自然災害の発生や地球温暖化、森林の環境保全が問題視されるようになりました。そこで開発されたのが国産針葉樹の圧密材です。国産材のスギやヒノキは柔らかく優しい肌触りが魅力ですが、比重が軽く強度が低いため建築や家具には不向きとされてきました。その弱点を木材を圧縮することにより広葉樹と同程度の硬さと強度を持たせ使用範囲を広げようという試みです。実際、圧密材を手にすると針葉樹とは異なりずっしりとした重量感があります。表面強度も硬く広葉樹と変わらない質感を感じます。材料のスペックも広葉樹のカバやナラ材と同程度のデータが得られています。国産のスギ、ヒノキの圧密材は、全国の庁舎や学校などでフローリングや建材で使用されている他、一部の家具製品にも使われていますが、工場の取扱量としてはほんの一握りが現状のようです。国産のスギやヒノキの使用が広がれば、地産地消のカーボンニュートラルな社会実現に繋がり、森林保全が進み自然災害の対策や環境保護にもなると思うのですが、コストの問題もあり活用を広げていくのは難しいようです。弊社で取り組んだ国産針葉樹合板も、生産をお願いしている工場から「強度が不安」と今までと違う資材を用いることに抵抗を受けました。新しい試みを進めるにはテストを繰り返しながら、工夫を重ねて一歩一歩進めていくことが大切なのだと思います。

工場の方から「圧密材の活用を広げるためにアイデアやリクエストをぜひお願いします」とオファーをいただきました。これからの汎用性を考えると、スギ・ヒノキの木理や木目のデザイン性の活かし方もポイントになるのでは、と感じました。スギ、ヒノキの圧密材をインテリアや家具に使用するとどうしても「和」の印象を持たれるように思います。(当社の針葉樹合板はソファの内部構造に用いているため意匠的には影響は出ません)それも、デザインや工夫次第で活路を見出せるのではないかと思います。今回の訪問にあたり、これからもカーボンニュートラルな社会の実現に向けて国産材の活用のために情報共有することにしました。今後も新しいニュースを皆様にお送りできればと思います(開発 武田伸郎)

130年以上の歴史を誇る木材加工の工場。画像の工場は2018年から稼働している住宅用のプレカット加工工場。CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)を構造体に用いた広大な広さの工場
左上:工場で加工された建築資材は1棟ごとに積み上げられます。工場からは岐阜地方の山並みが望めます。 左下:打ち合わせルームに使用されているスギの圧密材フローリング 右:着色を施した圧密材のテーブル天板。表面硬度もあり、強度的な不安はありません。