COLUMN

2024.4.30 DESIGNER

ミラノサローネの楽しみ

AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.155
今年もミラノサローネとデザインウィークへ行ってきました。昨年からスタッフ研修も再開しミラノを歩いてきました。今年のフィエラ会場の家具見本市とキッチン見本市は会場のレイアウトが初めて正反対になり、人気ブランドが集まる館が一番奥になり、手前が人気の無い館とキッチン館になったので、長い通路を歩く人並みが長く、奥まで歩くと1.5キロと距離も長く大変でした。一番奥の館に行くためには外周を回るバスに乗れば楽なのですが、知られていなくてガラガラでした。このフィエラ会場で開催されてからずっと同じレイアウトだったのを反対にしたのは、会場の奥にはあまり人が行かず閑散としていた事から、不公平感を無くすためという事でした。建物館内のレイアウトは見本市会場に顔が効くブランドが中心手前だったのは変わらなかったのですが、、。

フィエラ会場で昨年から始まったブースでの事前登録制、顧客のみの入館と入場制限が多くなり、事前登録していても会場をスタッフが案内する方式が多くなり、待たされ入り口で登録作業をするために、以前の3倍くらい時間のかかる視察です。高価なチケット(3回で50ユーロ)なのに、顧客しか入れないブランドがあるのには、やはり違和感しかありません。どのブランドも名刺による手入力を省くために、登録用のQRコードから登録させる方法は効率化で仕方がない事ですが、親切なブランドではフィエラ会場の入場券を購入時のインフォメーションを利用して、それを読み込んでいました。入場を制限していて、かなり時間を並んで入れたブースでも上顧客用のエリアがあり、半分しか見られない所も少なくありません。ますます、差別化が進んでいるサローネです。日本でも航空会社の優先搭乗やラウンジなど顧客の差別化が普通になってきましたが、世界ではもっと進んでいるようです。実際、購入する事が無い私達には優先される理由もありませんが、、。市内で開催されるデザインウィークでも登録制になっている所が多く、長い列の最後にQRコードを掲げていて、それからスマホでの登録が始まるので、よけいに時間がかかってしまい長蛇の列です。その列を見て入場を諦めた所もかなりありました。ミラノ市内がディズニーランドになったようです。高額になったホテル宿泊料のせいで、長期滞在が難しくなった中、行くべきブランドを前もって定めるのも、視察旅行の重要な準備になりました。

いつもこの時期のミラノで楽しみにしているのが、車と各ブランドのインテリアシーンの作りです。車はミラノ中心に停まる車と色を見るとヨーロッパの旬な自動車の傾向を見る事ができる事と、主要メーカーがこの時期にイベントを行っているからです。今年のミラノ中心街では目新しい自動車の傾向を見る事はあまり無く、自動車メーカーのイベントもあまり興味深い物がありませんでした。電気自動車への移行が停滞している事と戦争による景気の停滞が原因のようです。一方、楽しみにしているインテリアシーンでカラーもそうですが、使用される花や植物です。植物は観葉植物というより植木のような巨大な植物です。緑の少ないミラノだからか、綺麗に手入れされた植物を置いたイベントを見ると、より良く見えています。フィエラ会場では短期間での展示会なのに、ブース内に生き生きした巨大な植物に驚き、運搬をどうしたんだろうといつも思います。朝のオープン直後に目指す館に入ると、大きなジョウロを持った植木職人さんや花屋さんが沢山出てきました。毎朝、手入れをしているから、あのような巨大な植物や花が生き生きと管理できているのかと感心しました。

今年のミラノの植物はいつも以上に巨大な植物が置かれたブースも多く、観葉植物というより街路樹というほどです。中でも花が盛りの街路樹をどうやって花を落とさずに持ち込んだのかも不思議です。自然光が入らないブース内では植物用の波長を持つLEDライトを当てられたりと、普通の人には気が付かない工夫もされていました。観葉植物として置かれた物で、今年気になったのはクワズイモやモンテスラやゴムの木など、70年から80年代に流行った濃い色の葉の大きな南洋植物です。ぽってりしたボリューム感のあるソファに合うように巨大な葉のモンテスラが雰囲気を出していました。昨年行ったロサンゼルスの新しいホテルでもモンテスラやゴムが使われていましたが、インテリアは家具や照明だけでなく、植物も重要なインテリアアイテムで、その時代に合わせたイメージで組み合わされます。一時廃れていたゴムの木やトラノオやモンテスラ、ベンジャミンなど、観葉植物が流通し始めた頃の植物が見直されてきたのは、1970年代をイメージしたインテリアが昨年から来ているせいなのでしょう。日本で言えば昭和のノスタルジックな印象でしょうか。あと、今まで見た事の無い植物はススキのような稲のような枯れ草が多く植えられていました。何の意味なのかは分かりません、、。

インテリアは空間だけでも家具だけでも成り立ちません。アート、小物、照明、そして植物もトータルで合わせてスタイルになります。上位のブランドだけが作る空気感を感じる事がミラノサローネ時期の楽しみでもあります。昨年から復活したミラノレポートを今回も開催予定をしています。今年のカラーやデコレーションや植物の組み合わせをレポートしたいと思います。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左上:ベッドブランドFULUのブースでかなり高い樹木が植えられていて、ピンクの花が咲いていました。枝を折らずにどうやって運搬したのか本当に不思議です。右上:Poriformのブースでガーデンをイメージしてナチュラル樹木に見えるトネリコが置かれる。左下:市内の水栓ブランドのGESSIのショールーム:地下の展示場で、壁の植物には植物用のLEDが当てられています。右下:audiの展示イベントで車の周りに置かれた植木。植栽と思ったら石畳の上に置かれた植物ポッドでした。
左上:収納ブランドLEMAのブース。部屋を仕切るように、巨大なクワズイモやモンテスラが大きな木の樽の鉢に植えられ置かれる。右上:今回、いろいろな場所で見られた枯れ草に見えるススキ。半分枯れた植物はノスタルジックに見えるのか、、。左下:Minottiブース内に置かれたモンステラ・デリシオーサ。大きな葉が広がります。右下:復刻されたスパルパのソファにはモンテスラが似合います。