COLUMN

2015.11.30 DESIGN

夜更けの靴修理工房

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.43
山手線、目白駅からほど近い、線路沿いにあるお店。数年前、夜のランニング中に見つけました。夜の10時過ぎ、ひっそりと静まり返った通りに、一件だけ煌煌と明かりが点いていました。旧い民家をお店にしている風で、中には使い込まれた靴が並んでいます。日を改めて、昼間にお店を覗いてみました。

お店にはスタッフが一人、作業用のエプロンをした若い職人といった感じです。店内には、所狭しと並んだ修理を待つ靴達。ベーシックなしっかりとした靴ばかりで、オーナーもお客様も靴好きである事が窺えます。このお店は靴や鞄の修理のみを請け負うショップで、4年程前にオープンしたとのこと。オーナーは以前グラフィックデザインの仕事をしていたのですが、広義のマーケットに向けた仕事ではなく、もっとダイレクトに仕事を実感出来る仕事がしたくて転職をしたんだそうです。元々靴好きだったそうですが、4年の厳しい修行の後、一発発起してお店をオープン。靴の修理から革の染め直し、スニーカーの踵の補修等も行っていて「良いモノを永く」という思いを込めて仕事をしているそうです。

時間を経て自分に馴染んだ靴は何ものにも変えられませんが、靴の修理も量販店の靴が買えるくらい掛かります。でも、量販店の靴は長年使えるような修理には耐えられません。痛んでしまったら買い替えです。家具もそうですね、椅子やソファも同じです。ソファ等は経年でどうしてもクッション材のウレタンが劣化したり、布地が傷んだりしてメンテナンスが必要となりますが、決して安く有りません。しかし最近は、コストが掛かっても長く使い続けるお客様が増えています。資源や環境に配慮しての事なのでしょうか。製品の骨格がしっかりしていれば、メンテナンスにもしっかり応えてくれます。もちろん、靴も家具も大切にご使用いただく事が大前提ではありますが。

「良いモノを永く」というコンセプトは昔から色んなところで使われてきましたが、そういう意識がようやく根付いてきたのでしょうか。AD CORE の製品でも、10年前、それ以上前の製品を修理、メンテナンスするご依頼が増えています。「良いモノを永く」は、ブランド設立時に瀬戸が掲げたコンセプトの一つ「製品化したモノは廃番にしない」という思いが込められています。AD CORE は、今年ブランド設立30周年を迎える事が出来ましたが、これからも永くお使いいただける家具を、皆様にお届けしたいと思います。(エーディコア・ディバイズ/企画開発 武田 伸郎)

靴修理工房「glue」。22時過ぎても明かりが煌煌と灯っています。開店時間は一応20時までみたいですが・・・。

2015.10.26 DESIGN

1985年から30年後の現在

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.42
会社の通り道添いに、スバル自動車のショールームがあります。通常は新車や話題のモデルが展示してあるのですが、先日通り掛かった時に懐かしい旧車がいくつも展示されていました。僕と同じ歳のスバル360から丸目が可愛いスバル1000、往年の名車レオーネまで、ピカピカで並んでいました。中でも目を引いたのが、ちょっと未来チックな「アルシオーネ」。当時では珍しいリトラクダブル(格納式)ヘッドライトは、スーパーカーみたいで質実剛健なスバルのイメージとはちょっとかけ離れていましたがとても印象に残っています。発売が1985年、今からちょうど30年前になります。スピルバーグの映画「バックトゥザフューチャー」が公開されたのもちょうど30年前。1985年当時の高校生(主演マイケル J フォックス)が、30年前にタイムスリップするストーリーでしたね。映画で描かれていた30年後の世界が、現在の世界とどう違うのか?巷ではいろいろニュースで報道されていました。昭和生まれのオジさんからすると、1985年はそれほど前には感じないものですが・・・30年前といえばだいぶ昔のことになるのかもしれません。

AD CORE がファニチャーブランドとして誕生したのが1985年。ブランド発足30周年を迎える事ができました。発足当初 AD CORE は、それまでの業界にはない色んな事にトライしてきました。異素材を組み合わせたハイブリットの椅子や在庫を持たずにオーダーをいただいてから生産する受注生産システム、「3ヶ月連続で新製品を発表」なんてこともやった事が有りました。当時のコンセプトが「21世紀まで作り続けられる家具」。いつの間にか21世紀も過ぎ、発足から30年が経過しました。当時、ベストセラーだった弊社の看板製品「CERVO」も、カフェブーム全盛時の爆発的な生産数には及びませんが、未だ人気の製品です。製品アイテムもたくさん増えましたが、いくつもの時代を乗り越え、どの製品も未だ現役です。

デザイナーの瀬戸が思い描いてきた、使い捨てでは無いデザイン。「家具」は、プロダクト製品の中でも懐古主義的ではない時代を超えて残り続けるマスターピースになりえるジャンルです。古ければ良しとするヴィンテージの世界観とも異なり、昔のデザインでも現代にフィットし、生き続ける事が出来ます。若い頃「○○名作家具が誕生から数十年!!」なんて目にするたび「すごいなぁ」と、感心していたものですが、AD COREが30年という節目を迎えた今、そんな理想の世界にちょっとだけ近づけたのでしょうか。これからも、1年1年を重ねて、新たな歴史を重ねてがんばりたいと思います。(エーディコア・ディバイズ/企画開発 武田 伸郎)

1985年誕生のスバル アルシオーネ。懐かしい。
発足当時のAD CORE CERVO のビジュアルです。懐かしいけど旧くない?

2015.9.25 DESIGN

西海岸カタログ撮影記 その1

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.41
今月の初め、アメリカはロスアンゼルスにてカタログの撮影を行ってきました。この間視察に行ったと思ったら、あっという間に撮影本番がやってきた感じです。今回は出発前に製品も倉庫に無事入庫し、ちょっと一安心しての渡航でしたが(一度、撮影前日の夜まで、荷物が引き取れない緊急事態がありました・・・)それでも何が起こるか分かりません。入念な準備をして、LAへ向かいました。

ロスへ着いて早々に不測の事態が発生です。下見の時にあれ程大丈夫と言っていたのに、撮影1件目の住宅の内装やあつらえが完成していませんでした。現地に着いて早々現地の確認、きれいに片付いてはいませんでしたが、何とか撮影は出来そうでした。瀬戸が綿密に組んだスケジュールのもと、荷物の確認や備品の調達、モノの移動や段取りを踏まえて撮影に臨みました。

撮影は2日間。2件の住宅をお借りしています。限られた時間内で予定のカットを撮り終え、元の状態に戻さなくてはいけません。僕が最も注意するのは、時間内に撮影が完了するようにモノの移動や準備、現場の段取りを進める事です。現場の工程を頭に入れて、撮影を妨げないようにモノを移動、時間のロスが無いように何度も頭の中でシュミレーションします。(とはいうものの、なかなか思い通りにはいかないのですが)

作業を手伝ってくれるのが、頭領のラウールさんをはじめとする力持ちのスタッフ達。はじめは荒っぽい仕事ぶりでしたが(カッターが手元に無かったりすると、なんでも歯で噛み切ろうとするんです・・・)、身振り手振りでコミュニケーションを取りながら、2日目には段取りを踏まえて指示をしなくても動いてくれるようになりました。

皆さんの協力も有り、無事撮影を完了する事が出来ました。下見の時はロスらしからぬ最悪の天候でしたが、今回はなんとか天候も持ってくれました。(撮影の翌日からピーカンだったのですが)これからカタログ製作の最終追い込みです。11月の新作展示会で、皆様にお配りする予定です。今から皆さんに、カタログを見ていただくのが楽しみです。(エーディコア・ディバイズ/企画開発 武田 伸郎)

撮影現場の裏側。ここは持ち込んだ製品の開梱場所。
今回作業を共にした皆さん。真ん中が頭領のラウールさん。
撮影後期。瀬戸のポートレート撮影風景をお見せします。

2015.8.27 DESIGN

素材としての「樹」

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.40
あんなに暑かった夏が、あっという間に秋の気配。まだ8月というのに、ちょっとひんやりした風を感じたりすると、ちょっと拍子抜けした気分になります。この間まで、真夏の日差しを避けるように、街路樹の影を伝いながら歩いていた事を忘れてしまいそうです。東京の都心でも、立派な街路樹が有る通りがたくさん有ります。久しぶりに見た甲州街道は、トンネルのように生い茂った巨大なケヤキ並木に驚きました。広尾本社近くの明治通りの桜並木も、とってもきれいですよね。

私達の廻りには、街路樹や公園など身近なところに「樹」が存在しています。ところがこの身近な樹、樹木として立っている樹と「素材」として使用する「木材」のとらえ方が、なかなか難しいようです。私も素材として様々な樹木は見てきましたが、生木として立っている樹を見た事があまりありません。国産材が本当に減っている昨今、ますます見る機会が無くなってくると思われます。

今年の夏、福島の旧堀切邸を見る機会がありました。(江戸時代から続く豪商、国家と地域に多大な貢献をした堀切家の旧邸)1775年建築の土蔵や、近代和風住宅の「主屋」など、歴史的価値の高い建物がきれいに整備されていてとても見応えが有りました。さらに目を引いたのが、庭に植えられた国産樹木の数々。「シラカシ」や「ヤマザクラ」など、今ではほとんど見る事がない樹木を見る事が出来ました。製材された素材で見るのとはまた違った印象を受けます。
散歩のとき、旅行のときなど樹木を見る機会がある時は、「どんな樹なのか」「どんな材料?」なんて事をちょっと考えみてはいかがでしょうか。かえでの樹なら「メープルに近いかな?」、楢の樹があったら、今流行の「オーク材?」なんて眺めて見て下さい。きっと楽しいと思いますよ。(エーディコア・ディバイズ/企画開発 武田 伸郎)

庭園も素敵な旧堀切邸。見学無料です。
それぞれの樹には、樹種名がつけてあります。左が「ヤマザクラ」、右が「シラカシ」。

2015.7.29 DESIGN

ニューモデル・スタジオ撮影完了!!

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.39
うだるような日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。今週、2日に渡り、新製品のスタジオ撮影を行ってきました。荷物の整理や積み込み、荷下ろしで大汗はかきましたが、スタジオに籠った2日間は、外の猛暑もシャットアウト状態で撮影作業に終始していました。

ロケの場合はもちろんですが、撮影は段取りが命。製品の確認とカット数、香盤表を準備して撮影に臨みました。今回の撮影も、気心の知れたいつものスタッフ、カメラマンの方にお願いしていたので、カット数が増えて若干時間は押してしまいましたがほぼ予定通りに進みました。昔のフイルムで撮影していた時代は、絶対失敗が許されない状況でしたので、息も詰まるようなピリピリした現場でしたが、最近は全てデジタル。多少の修正なら後加工が出来るので、気持ち的には楽になったような気がします。とはいうものの、撮影する製品は、現物をビシッとしたいもの。瀬戸は、縫製のラインやクッションの納まり、ファブリックの毛羽立ちや皺、影の表情や材質の見え方まで目を光らせます。本番前に、瀬戸が製品をなでると(セットすると)全体が「シャキッ」とします。クッションやアームの角、下端を揃えるなど、ちょっとした事で見栄えが大きく変わります。デジタル撮影といえども、本物の製品としてキチンと見てもらいたい気持ちは、昔も今も変わりませんからね。

皆様に発表する前なので、製品の詳細はお見せ出来ませんが、撮影風景をチラッと紹介させていただきます。秋の新作展示会をお楽しみに!!(エーディコア・ディバイズ/企画開発 武田 伸郎)

スタジオの白いホリゾントに製品を置いて撮影画像をチェック
モニターを見ながら製品の見え方を確認します。