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2025.5.30 DESIGNER
ビリオネアズ・ロウのインテリア
AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.168
先日、NHKの「ステータス」という番組でニューヨークの「Billionaires’ Row」ビリオネアズ・ロウのペントハウスの事を放送していました。ビリオネアズ・ロウは、ニューヨークマンハッタンのセントラルパークの南端近くにある住宅用の300メートルを超える超高層ビル群の事で、超高額レジデンスが並ぶ事から億万長者の列と言われています。そのビリオネア・ロウのペントハウスの最高額は360億円という事で、その最上階のペントハウスにディレクターが一晩過ごす為に奮闘すると言う番組でした。話題のニューヨークのビリオネアズ・ロウの番組なので見る事にしました。
番組内では、超高額住宅という事もありガードが固く不動産資料なども無く、住人に見せてもらおうとしても、不動産登記にも名前が掲載されないようにダミー会社になっていたり誰が住んでいるのかも分かりません。あきらめかけた時にようやく現地の購入希望の日系女性を紹介してもらい、同伴者として中を見る事ができるという内容でした。様々なハイエンドな物を取り上げている番組で、取材するディレクターは同じなのですが、Tシャツと野球帽の姿で、取材は無理だろうと思っていると、流石にハウスツアーの時にはスーツ姿で、TPOは分かっているんだと思いました。私自身も西海岸で住宅を取材する時はYASUKOさんの紹介で同伴するのですがアイロンの効いたシャツとジャケットを着て訪問します。
その番組では最高額の360億円の住宅を見る事はできなかったのですが、違うビルの80億円近いペントハウスには訪問する事が出来ました。超高層ビルでペンシルのように細長く、地震の多い日本では揺れが心配になります。エレベーターで上がる時に揺れるエレベーター内で「日本製のエレベーターでないので揺れますね」と日系女性の声で本当に揺れている事が分かります。案内人からは購入しても月の管理費と税金だけで7万ドル以上かかると聞くとディレクターはため息です。そして、それを安定的に支払う人でなければビリオネアズ・ロウの仲間に入れない世界と言われていました。先日、コラムに書いた西海岸のハイエンド戸建て住宅でも同様の経費がかかるので、アメリカの高額不動産の敷居の高さを感じました。
ペンシルよりももっと細長いビルで、狭そうに思ったのですが、ワンフロアは最大2戸で、上層階はワンフロア1戸か上下2~4フロアを占有する広い面積です。目指す部屋はエレベーターにはPHのマークがあるだけで最上階のペントハウスと分かります。エレベーターを降りると、どのビルよりも高い景色とセントラルパーク全体が見渡せます。北側に面したセントラルパークにはビルの影が長い影を落とし、自分がいかに高い位置にいるのかが分かります。目が眩みそうな高さに目を奪われながらインテリアに目を移すと、アメリカハイエンドならではのインテリアです。広い空間を埋めるだけの家具で無く、空間の中にコーナーごとに人の過ごす位置を置く、ゾーニングがしっかり考えられているようです。また、そこに置かれる家具は知っているブランドでは無く、ハイエンド家具とでも言うのでしょうか、流行にあまり左右されない落ち着きのある家具です。
柔らかなカーブした形のソファが空間の中心に置かれています。当社で3年前から展開しているキドニーソファのようにカーブしたソファが空間のメインと部屋のコーナーに置かれ、柔らかな雰囲気を出しています。2020年以降、欧米では曲線を使用した家具が多用されるようになってきました。これは、コロナ禍の息の詰まる緊張した世界から精神と感情に心地よい空間を作るために、バイオフィリックデザインという植物などの自然を感じさせる空間デザインに取り入れた事も一つと言われ、1970年~80年代の柔らかな家具が見直され復刻されている理由です。カーブした家具が生まれたのは1890年代からのアール・ヌーヴォーで、その後、1920年代~アールデコ、1950年代~ミッドセンチュリー、1970年代~ポストモダン、現代と曲線を基調とした家具デザインが精神を安定させ快適さを生む家具として使用されるようになりました。
一時期、忘れかけられていた曲線家具が近年に復活したのは、1970年代から多く使われるようになった現代ソファの基本になっている直線だけだったモジュラーソファに曲線の組合せが使われるようになったからです。広い空間の中心で存在感を演出したり、部屋の隅に心地よい空間を作るなど使いやすさも増したからかもしれません。当社のキドニーソファ/NC-075もモジュラータイプになり急に販売数が増加しました。空間の中心だけと思われていた曲線家具が部屋のコーナーで植物や照明と合わせながら設置すれば、柔らかな精神的に安らげる空間にする事も可能です。今回見た目が眩むような高さの超高層ビルからの緊張した景色を和げるような効果も考えたかもしれませんが、高さの恐怖感で緊張する空間に安らぎ感を出していました。 バスルームにも曲線のニッケルのバスタブが使われていたのも印象的でした。
ラウンジチェアも四角いデザインから柔らかな円形が人気になりつつある事も空間に安らぎと快適性を与えるからかもしれません。ホテルや旅館でも昔は馬蹄形の形を使ったのは空間の雰囲気作りだけでなく、動線などの通行性も考えてのことでした。近々開催するレイアウトと人間工学でも曲線家具を使ったレイアウトをお見せするかもしれません。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

