COLUMN

2025.12.23 DESIGN

ウェグナーに見る機能とデザイン

先日、渋谷ヒカリエホールで開催されているハンス・J・ウェグナー展に行ってきました。
北欧デザインを語るうえで欠かすことのできない家具デザイナーであり、その思想やものづくりの姿勢を改めて体感できる展示でした。

ウェグナーは「家具において最も大切なのは機能性である」と語り、特に座り心地や使用されるシーンを強く意識してデザインを行ってきました。ただ美しいだけではなく、人がどのように使いどれだけの時間を共に過ごすのか、そうした視点がウェグナーの家具には一貫していると感じました。その考え方は当社の家具づくりとも重なります。人間工学に基づいた設計はもちろん、機能性を備えたファブリックの選択肢や使用シーンを想定したモジュール構成など、「どのくらい座られる椅子なのか」「どんな場所で使われるのか」を具体的に思い描きながらデザイン・規格化を行っています。見た目の美しさだけではなく永く使うことで初めて感じられる心地よさはその積み重ねこそが、本当に価値のある家具だと考えています。

また当社のトレンドに左右されないデザインには細部への徹底したこだわりがあります。使用する木材の選定、製作工程、さらには輸送コストや製作コストまで含めて考えること。デザインは外側だけを整えるものではなく内側まで含めて設計していくものだと、今回の展示を通して改めて感じました。デザインには国民性も色濃く表れると思います。私が以前デンマークに住んでいた頃、訪れたすべての工房や工場で日本製の鉋が使われてたり、日本の木工技術や家具の美しさに深い敬意を払っている姿が印象的でした。繊細で誠実な日本のものづくりは、世界でも高く評価されています。その中でも印象深かったのがウェグナー作品を専門に製造するPPモブラー社です。当時から使われている型を大切に保管し、現代の技法と組み合わせながらウェグナーの思想を現在へとつないでいます。

1950年に発表されたTHE CHAIRやベアチェアが70年以上経った今もなお愛され続けている理由は、徹底したこだわりが人々に通じているからだと思います。当社の1986年発売のCERVOも同様に人体に沿った設計やスタッキング機能など、考え抜かれたデザインによって現在も多くの場所でご採用いただいています。先日開催した40周年イベントが多くの方にご来場いただけたこともこうした積み重ねの結果だと感じています。

当社はこれからも外側のデザインはもとより、内部構造や細かなディテールに至るまで向き合い長く愛される家具づくりを続けていきたいと思います。ぜひショールームでその座り心地やストーリーを体感してみてください。(開発部 渡辺 文太)

上:ハンスウェグナー展では、コレクションからウェグナーのインタビュー、内部構造に至るまで盛りだくさんの展示でした。下:ウェグナー家具の製造を専門に行うPPモブラー社。お伺いした当時も感じましたが、今回の展示ではよりクラフトマンシップを感じ取れました。
今回の新作で発表したMD-1401、代表瀬戸が何度も何度も工場へ足を運び、細かな形状のデザイン、内部構造に使う部材までもこだわり抜いた新作です。