COLUMN

2020.12.28 DESIGNER

2020年の最後に思う事

AD CODE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.115
2020年は新型コロナウイルスの発生から始まり、収まるどころか感染拡大中と本当に大変な一年でした。一年を通してマスクをして、人との接触を避ける状況は人生で初めての事でした。日本の経済への影響も大きく当社でも大きな影響を受けました。当社では2月から手の消毒、ショールームの完全予約や建物内の消毒、次亜塩素酸加湿器、換気扇の新設、外食の禁止、事務所内マスクの着用はもちろん、スタッフの席を1.5メートル以上離して対策をしてきました。しかし、マスクのストレスの大きさと、発声しなければ唾液が飛散しない事から、猛暑の夏以降、各自デスクでの業務中のマスクを外す事は認め、社内の移動やミーティングにはマスク着用としました。

第三波の感染が広がる中、政府から家庭内でもマスク着用とのニュースが流れてきましたが、少し違和感を持ちました。私の母は定年間際に癌で亡くなるまで現役の看護婦長でした。家ではいつもエタノールの臭いがしていて、私にとってはエタノールの臭いは母の匂いです。自宅近くの病院で永く勤めていて、小学校での予防接種で先生と並んで同級生に注射している母を見るのは少し恥ずかしいけど、誇らしい気持ちにもなりました。実家にいる時は感じませんでしたが、インフルエンザ、はしかなど流行している時は家庭内に持ち込まないように、母も気を使ったと思います。小さい頃に街で赤痢が発生して対応した時にも家ではマスクをせずに、いつもと変わらない笑顔で夕食を作っていました。母が言っていたのは白衣とナースキャップを脱いで、通勤の洋服は家で着替えて、手をしっかり洗えば大丈夫と。結核病棟でも看護していた母なので、感染対策の知識はあったと思いますが、家ではエタノールの臭い以外は普通のお母さんでした。今、新型コロナウイルスで病院に従事されている方は、家庭でも本当に気を使われていると思います。

今、マスク無しの生活は考えられません。公共な場所ではしかたがありませんが、家庭内でのマスク着用の推奨はどうなのかと思います。母のように家に持ち込まないように気をつける事を徹底し、家庭や近しい方とは、ストレスの無い安らぎのある過ごし方ができるように、感染防止の啓蒙を行った方が良いと思います。親子で笑顔を見せられない生活なんて悲しすぎます。仕事場も感染防止をしっかり行わなければいけませんが、換気をしっかり行い、密にならない環境で飛沫がなければ、ストレスが少ない働き方ができるはずです。今は抗菌性や抗ウイルス性を持たせた機能製品が多く見られるようになりました。それを上手く使いながらストレスの無い生活が送れるはずです。

インテリアでも徐々に抗ウイルス性能を持った素材が発表されてきました。しかし、身体に密接な家具についてはあまり進んでいません。お客様からはエーディコアさんの抗菌への取り組みは早かったと言われますが、抗菌塗装や抗ウイルス仕様についてやったほうが良いのは分かるが、エーディコアさんだけの家具に抗ウイルスがあるのは説明しにくい。全ての素材や家具がそうなってくれれば良いんだけどと。たしかに当社の家具だけ抗菌や抗ウイルス性能があっても説明しにくいかもしれませんが、ファブリックだけでもお預かりすれば抗ウイルスコーティングできます。そうすれば手に触れる箇所は対策した事になりますとお答えしました。

当社で行なっている感染対策は、アクリル板の代わりの大きなPCモニター、建物内の整理整頓と定期的な消毒、ランチの外食は禁止、電車や外でカバンや荷物は絶対に床に置かない、事務所や家に帰ったら手を洗いうがいをし、家では帰ったら部屋着に着替えるです。でも、デスクや家ではマスクしないでストレスを溜めない事も感染対策としています。2021年はマスク無しで笑顔で話せる日がきっと来ると思います。それまで頑張りましょう!皆様本年もありがとうございました。1月のWebセミナーでお目にかかりましょう。(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

ロサンゼルスで取材した家具デザイナーの自宅です。窓から見える緑が爽やかです。猫ちゃんも外に出れているのでしょうか、、。
上:広尾本社のオフィスの私の席です。物はほとんど置かず、片付いていると掃除がしやすく感染予防になります。左下:オフィスは2メートル以上離れた席で、大きなPCモニターはアクリル板の代わりになります。右上:戸建てビルで窓が沢山あり、部屋の角の窓を少し開けて空気を取り入れています。ステーを使うと大きく開き寒さで風邪を引くので、原始的ですが、ゴムとドアストッパーを挟んで1〜2センチ開けています。右下:反対側の窓ガラスに穴を開けて(壁に穴を開けると大工事になるので)換気扇を付けて24時間換気しています。以前はランチの臭いがなかなか取れませんでしたが、今ではすぐに無くなります。

2020.11.30 DESIGNER

モダニズム建築と感染症

AD CODE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.114
11月18日にWebを使った2021年モデルの新作発表会を開催しました。当社では、6月からZoomを使ったセミナーを4回行ってきました。感染リスクがなく、遠方のお客様へも新作をプレゼンテーションできるので便利です。Webを使った映像なら録画で良いと思いますが、ライブ感を大切にし、その時間をお客様と共有したいとの思いから続けてきました。今回もカメラとして使用したiPhoneに向かって話をするのは大変でした。ご覧いただけなかった方に発表会での話をしましょう。

今回の2021年モデルは新型コロナ感染拡大によって企画から見直す必要があり、従来のデザインを生み出す手法を変える必要がありました。これまでは、デザインの流行から今後のインテリアを考え、次に来る流行やライフスタイルを見据えたデザイン提案を行ってきました。今年は2月の感染拡大によって、住まいと働く場所が混在するプライベート空間、公共施設での感染対策など、今まであまり必要とされていなかった機能が求められるようになりました。私自身、短い時間の在宅勤務でしたが、家庭内での仕事のあり方や、仕事環境の大切さを知る事になり、中でも椅子の重要性を認識する事になりました。食事を中心とした2時間程度の快適性から4時間以上座る事の多い仕事、それもPC作業の前傾姿勢から、Webミーティングをする際の後傾姿勢まで幅広い姿勢に対応する機能的が椅子に求められます。また、消毒しやすい汚れにくいデザインも必要となります。

20世紀初頭に生まれたモダニズム建築は感染症の中で生まれたと言われています。当時、世界的に大流行していたを結核を治療するために、多く作られたサナトリウムでは白い清潔な空間に換気をするための大きな窓、埃がたまりにくく消毒のしやすいシンプルな空間にし、そこに置かれる家具は、座と背が開いていて埃がたまらず、革や合板で拭きやすく、足は足元からの感染を防ぐために、ステンレスやクロームメッキの金属が使われました。フィンランドのアルバー·アアルトがデザインした整形合板のパイミオチェアーはサナトリウムのために作られました。当時の新鋭建築家、ル·コルビジェ、ミース·ファン·デル·ローエ、アルヴァ·アアルトらが進めた建築はその他のモダニズム建築に影響を与えました。

ル·コルビジェの「光と新鮮な空気が健康には重要」と考えて設計したパリ郊外にある、代表作のサヴォア邸も感染症予防のために作られました。玄関の横に手洗い用の流しを設置し、車寄せのある地上から持ち上げ、住まいを2階からとし、光と空気を入れる換気の良い大きな窓を設けました。そして、家族が安心して過ごせる屋上庭園のある建築としたのも、その時代背景があったからです。その時代のモダニズム建築は、快適性より安心感や安全性といった新しい機能を目的に作られ、世の中にモダンデザインとして取り入れられるようになりました。

2020年は新たな感染症との戦いが続いています。しかし、20世紀初頭と違うのは、病気の正体が分かっており、消毒などの対策が取れる事です。また、抗菌剤だけでなく抗ウイルス剤を使用した安全性の機能も持たせる事ができます。それを活かし快適性を犠牲にしないデザインも可能になっています。当社の2021年モデルはその機能性と快適性が最大限に活かせるデザインを目指しました。東京、大阪、名古屋の各ショールームでは展示が始まっています。ぜひお座りいただいて快適性をお確かめ下さい。新型コロナに負けないように頑張りましょう!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

右上下:サヴォア邸。ル・コルビジェが1928に設計。玄関に手洗い場があり外からの感染予防対策があり、2階から住居部分で大きな窓は光の取り込みと換気の為で、屋上には家族が過ごせる庭園があります。左上下:パイミオのサナトリウム。アルヴァ・アアルトによって1928年に設計されたフィンランドにあるパイミオの結核療養所。パイオミチェアーは感染予防のために成型合板が使われました。
2021年モデル CHAIR:MD-1101A 脚部とアーム、背など手の触れる箇所には抗菌のポリウレタン塗装が塗布され、汚れにくく消毒しやすくなっています。TABLE:MD-1102 天板は対薬品性が高いガラスやセラミックが使われます。脚部については抗菌塗装が標準化され、CAHIRとTABLE共に抗ウイルス塗装がオプションで追加できます。

2020.10.30 DESIGNER

製品が生まれるまで~今

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.113
6月のメルマガでも触れましたが、新しい事に出会いながら世の中は進んでいます。私自身の仕事のデザイン仕事でも同じで、仕事の進め方が大きく変わってきました。デザイナーの仕事は長い間、頭の中でデザインする物を立体に考え、それを2次元の三面図に書く事でした。それがこの数年でCADやプリンターなど3D化が進んでいます。

私自身、社会人になってから心がけてきたのは工場の方とのコミュニケーションです。しかし、今年はコロナ禍もあり、いつもとは違う仕事の進め方をする必要がありました。私の仕事の進め方は図面を渡すだけでなく、工場の職人さんとのやり取りや、試作の途中で手触りや座った印象など試作途中に感じることが重要です。出来上がった試作を工場から送ってもらい、修正を加えて返送して進める方法が一般的なのでしょうが、出来上がった物では、修正するのに時間がかかったり、イメージを伝えるには限界があるからです。それが今年は工場への訪問をする事は出来ませんでした。Webカメラを使ったり、製品試作を往復させての検証をするしかなく、今年の新作のイメージの伝え方を考える必要がありました。

若い頃は、鉛筆を使ったスケッチから始まり、それを元にした1/5模型を作りプロポーションを確認し、ドラフターを使ったトレーシングペーパーに原寸図を手書きして青焼き。それが20年以上前からはPCを使用した作図に変わっています。この数年は、模型製作に3Dプリンターを使うようになりました。4年前からスタッフに加わった開発部のトミーのおかげで、新しい機器を使えるようになり、スケッチから3Dの立体画像で確認し、CAD図面化、3Dプリンターで模型や部分パーツの原寸模型を製作できるようになりました。模型を手作りする楽しさは無くなりましたが、かなり精密な模型ができるので、工場へ三面図だけでなく模型も送り、立体的な造形とイメージを伝える事ができるようになりました。

以前は、模型は木材や発泡材を削り、成型合板ならボール紙を重ねて圧着して、本物に近いイメージで模型作りを進めて、途中でデザイン変更などしながら模型を完成していました。3Dプリンターでは、ABS樹脂などの棒状のフィラメントを溶かして積層させ形を作ります。樹脂なので硬くて後からは削りにくいので、データを最初からしっかり作る事が必要となります。形状がリアルに出るので、イメージを確認するには便利な機械です。時間的に3Dプリンターだから早くできるという訳ではなく、どちらも数日かかります。以前は模型の削り粉にまみれて作っていましたが、今ではトミーがデータを作ってくれて、3Dプリンターが忙しく動いてくれるだけので助かるのですが、、。

最近は、CAD図面とモデルを工場へ送り、模型から製作工程や張りのイメージを見ながら製作を進めるので、ほぼイメージ通りの試作が完成します。2021年モデルの椅子でも一次試作でイメージ通りの完成になり、最後の座り心地で数ミリのクッション材の形状変更と指触りの分かる面取りの変更だけで済みました。でも、この数ミリが大きいんです、、。今回の椅子の試作は一度も工場へ行かずでの完成でしたが、試作途中の椅子を社に送ってもらい全スタッフに座ってもらいましたが、今までの椅子の中で一番座り心地が良いと評判です。ソファはそうはいかずに工場へ行きましたが、いつもの半分の工場出張になりました。

2021年モデルは、安心と安全をテーマに製品作りを行い、機能的にも完成度の高い新製品になりました。今年ほどモニターを見ながらの設計にこんなに時間をかけた事はなく、頭の中のデジタル化が少し進んでアナログとデジタルが融合してきたようで、ペンダコが消えた指を見ながら工場が恋しくなっています。いよいよ11月18日にWebでの発表会。製品プレゼンテーションも新しい試みをしてみようと思っています。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左上:新作のテーブルの詳細写真です。展示会前なので全てはお見せできませんが、15ミリのガラスを受けるパーツ。左下:3Dプリンターで作られたパーツ。右上:3Dプリンンターで作れば何もしなくてもいいと思われる方もいるかもしれませんが、樹脂のフィラメントを積層して出来るので、積層面が荒く、これを削って綺麗にします。右下:表面をサンダーで削って仕上げると綺麗になります。
左上:新作椅子のイメージ写真です。背の合板と無垢板のカーブが綺麗です。左下:3Dプリンター模型ではここまで作る事が可能で、完成前に撮影イメージを検討する事も可能です。右:2019年モデルのアクリルチェアのTA-002も3Dプリンターを使って模型を作り検討しました。三次元形状を検討する際は本当に便利です。

2020.9.30 DESIGNER

ラグジュアリーカーのインテリアトレンド

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.112
先日、カーコーティング会社の広告写真撮影のため、広尾本社のショールームガレージと愛車のカルマンギアを貸し出ししました。他人に車を磨いて頂くのは初めての事で、プロの磨きテクニックと溶けるような艶に惚れ惚れとしました。磨かれている時間にボディと同じ塗装のインテリアパネルを自分で磨いていたのですが、磨けば磨くほどピカピカしていく塗装を見て嬉しくなりました。

本社のある広尾の日赤通りは、青山方面への抜け道になっているので、高級車が多く通ります。当社の前はコーナー立ち上がり後の直線になる緩い坂道になっていて、立ち上がりに吹かすエンジン音がうるさく、イタリアのスーパーカーなど走ると爆音です。その多くが艶消し塗装のマットな姿をしていて、爆音と艶の無いボディは不気味で好きになれません。カーコーティングの方が作業しながら、ああいった艶消しの車の多くはフィルムが貼られた物も多くある事と、実際の艶消し塗装の場合は当てたり擦ったりして傷の修理が出来ずに大変で、洗車する喜びは無いですよ。そして、夜は他車から視認しにくいから本当に危ないんですよと、、。

車好きなので新車発表のニュースをチェックする事が多いのですが、先日発表されたロールスロイス・ゴーストやメルセデスベンツ最上位クラスのSクラスのインテリアを見て少し驚きました。どちらも艶消しのオープンポアやセミオープンポアの木目導管が見える仕上げです。ロールスロイスやジャガーなど、イギリス車の上位ブランドは希少木材に厚い塗装を施し、鏡面に磨きあげたインテリアパネルが特徴でもありましたが、新モデルではアッシュやウォールナットの艶消し仕上げです。太陽光の乱反射を防ぎ安全性はあるのですが、ラグジュアリーカーに導管の見える艶消しのオープンポア塗装にウッドパネルは合うのでしょうか。

9月1日に発表されたロールスロイス・ゴーストのデザインコンセプトはPost Opulence/ポスト・オピュレンス(脱贅沢)で、これ見よがしな表現ではなく、素材の本質的な価値によって定義つけられるミニマルな美学を追求したとの事です。インテリア素材は上質なハーフ・ハイドのレザーをできるだけシンプルなステッチで仕上げられ、ウッドパネルはパルダオ材、アッシュ材やウォールナット材の素材感を出したセミオープンポア塗装仕上げが新しく追加になりました。ゴーストはロールスロイスの中でもエントリーモデルですが3500万以上する車です。ロールスロイスを好む新しい富裕層が脱贅沢を望むかは分かりませんが、ラグジュアリーカーの新しいインテリア提案です。

9月2日にはメルセデスベンツSクラスがフルモデルチェンジして7代目が発表されました。メルセデスの最高クラス車で、世界の上級車がベンチマークとする車です。ハイテクとラグジュアリーの融合をテーマに創られたインテリアには、高級ヨットのデザイン要素が取り入れられ、ウッドパネルにはポプラウッドの艶消しブラック塗装のオープンポア仕上げが標準となり、ウォールナットにアルミラインが入った艶消し装飾ベニアの選択も可能です。現在、メルセデスベンツの新型車の上級モデルについてインテリアパネルはウッドの艶消しで導管が浮き出るオープンポア仕上げが標準になってます。

木の素材感を感じるオープン仕上げは家具については常識になっていて、艶消しのオープン仕上げは傷が目立ちにくく、使いやすい仕上がりです。当社の家具用の塗装は3分ツヤ有りのセミープンポア仕上げと、全消しのオープンポア仕上げがあり、現在全ての塗装は抗菌コート仕上げになっています。11月には抗ウイルス塗装を施した素材感を大切にした新作家具を発表します。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左上下:ロールスロイス・ゴーストのインテリア。、パルダオ材の突き板のマット塗装のオープンポア仕上げです。シートのハーフ・ハイドレザーが使われたシートやドアパネルはステッチをできるだけ無くして仕上げられています。右上下:メルセデスベンツSクラスW223のインテリア。ウォールナットにアルミラインが入った艶消し装飾合板はヨットのイメージ。艶消しのセミオープンポア仕上げ。
左上下:1962年のカルマンギア。久しぶりに磨きこまれて綺麗になりました。インテリアは外装と同じ鉄板に塗装されたものです。ボディと同じで磨けますし、傷もつきにくい。右上下:先日発売になったマイナーチェンジされたメルセデスベンツEクラスのインテリア。マイナーチェンジで鏡面からマットなアッシュ材に。艶消しのオープンポア仕上げで板理の導管がはっきりしています。

2020.8.31 DESIGNER

家と車の関係

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.111
海外へ自由に行けなくなり半年が経とうとしています。私自身、海外出張だけでなく国内出張も少なくなり、リアルに見る事よりも、PC画面を通して見ることが多くなってきました。そんな中、グーグルマップを使ったマップアドベンチャーなどバーチャル旅行が人気になっています。マップアドベンチャーはグーグル社の世界の有名観光地を音声サービスと共に回るサービスで、自分でストリートビューを使って海外に行った気分になれると人気です。

グーグルマップが無かった頃には、ミラノサローネなど海外の取材には、市販されている折りたたみマップとイベント住所を見ながらマークしたり、初めての土地ではホテルで市内マップをもらって部屋で行動計画を立てたものです。今でもその癖が抜けずにグーグルマップを見ながら旅の計画を立てる事にしています。グーグルマップを使い出して以前と違うのは、移動の所要時間の検索が楽になったのはもちろんですが、衛星写真とストリートビューで事前にそこの画像を見る事ができる事です。これは初めて行った感動は薄れますが、行ってから「しまった、、」と後悔する事も少なくなりました。インテリアまでは見れませんが、外観で想像する楽しみは増えました。カタログ撮影のロケハンをする時や、視察ツアー先を決めるにもグーグルマップはなくてはならないものになっています。

9月2日のオンラインセミナーの「Space with garden」では、今まで取材した200箇所以上から、庭とインテリアの関係が感じられる住宅を、2012年から今年1月に取材した6箇所を選びました。久しぶりに見る写真をフォトショップを使って再修正とスライド画像を再編集しましたが、その家がどうなっているのかをグーグルマップを使って再確認しました。グーグルマップのストリートビューは撮影時の年月日が明示されているので、いつの状況か分かるようになっています。6箇所とも今も存在して取材時の姿を留めていることを確認しました。

その中でも印象深かったのは、アメリカモダン建築の巨匠リチャード・ノイトラが設計したサンタモニカにある1947年に建てられた住宅です。有名音楽プロデューサーが所有していて、その方のお父さんが収納家具工場を経営していた時にノイトラ建築の家具をメインに手がけ、その家もお父さんの工場で作られた収納家具が使われているという事で、1980年から所有されて大切に住まわれていました。壁に飾られているアートも素晴らしかったのですが、中に使われている置き家具もコルビジェ住宅にあった家具やヴィンテージ家具ばかりで、収集するセンスにも驚かされました。

その家を取材したのは2012年で、再度ストリートビューで訪問しましたが、新しいコレクションを手に入れている事が分かりました。以前は家の前に置かれていた車は1990年のBMW8シリーズで、良い趣味をしているなと思っていましたが、今、停車しているのは白いポルシェ911の1964年初期型901です。ナローポルシェと言われる幅の狭い初期型で、コレクターズアイテムになっていて、投資の対象にもなっています。ストリートビューで見ても程度が良いのが分かります。マドンナやプリンスを見出した音楽プロデューサーだっただけあり、さすがのセンスです。アメリカ西海岸の住宅でヴィンテージ趣味の住宅では建物と庭の一体感も関心しますが、建物の年代に合わせた車もデコレーションの一部として使われ、インテリアのデコレーションと同様、外観と庭、小物の一体感も感じる事が多くあります。

以前、レイ・キャピーが設計した1957年の住宅では、1957年のギターとポルシェ356が置かれていました。コンセントやスイッチまでもオリジナル仕様が住宅の価値を高めて、高額で取引される住宅の条件として徹底したリノベーションが行われる事と、その為に取り壊される建築から様々な材料がリサイクル販売されている事を知りました。ヴィンテージカーと同じで、長く使われる為のパーツ産業も充実していました。日本では復元された建築に新しいコンセントやスイッチが使われる事が多く、年代に合っていないしつらえも気になる事が多く、せっかくの復元がもったいないと感じる事があります。

今回のセミナーでは様々な年代とデザインに合わせ作られた庭とインテリアの関係をお見せできればと思っています。庭とインテリアの融合したカリフォルニアスタイルの住宅、これからのインテリアのヒントがあるかもしれません。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

上左:アメリカモダン建築の巨匠リチャード・ノイトラが設計したサンタモニカにある1947年に建てられたた住宅。2012年に訪問した時には1990年のBMW8シリーズを大切に乗られていました。下:グーグルマップのストリートビューで見た今年の家。ガレージ前にナローポルシェ911が置かれていました。
マリブの山の上に建つ近未来的に見える住宅。ガレージの前には1967年のシェルビーGT500エノレアが停まっていました。家は1993年建築なので、年代は合っていませんが、近未来的なデザインが住宅によくマッチしていました。