Recent Posts
-
2025.07.30
インテリアと現代アートの源流は
-
2025.06.30
家具レイアウトは快適性を左右します
-
2025.05.30
ビリオネアズ・ロウのインテリア
-
2025.04.30
ミラノサローネとデザインイベントを憂う
-
2025.03.31
モダン建築の修復とリノベーション
-
2025.02.27
アメリカ不動産販売の常識
-
2025.01.31
ロサンゼルス山火事と有名建築の安否
-
2024.12.26
視覚から物理的感覚へ
-
2024.11.30
広尾から六本木へ
-
2024.10.30
インテリアとつながる庭
Back Number
2025年
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2017.8.30 DESIGNER
仕立ての良さの見分け方
AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.76
最近、洋服をインターネットで購入する人が増えています。ロサンゼルスのファッションストリートのメルローズでもその影響で、かなりのブランドショップが消えました。日本でも若い人は、洋服をネットだけで購入する人が多く洋服のネット販売の売上げが急激に増えています。物の良し悪しを直接確かめずに買うのは使い捨ての時代だからでしょうか、。2018年モデルのソファの試作をしている日田市の工場の中で、作業している職人さんが張っているソファのステッチを見ながら、身近な物の仕立ての良さの条件を思い出していました。
毎日着るシャツの事です。身体に近いシャツは縫製が着心地に影響します。また、ジャケットを着なくなった夏のビジネスシーンでは、一番目線の近くで見られる事の多いシャツは、仕立ての良し悪しがよく分かります。皆さんはシャツを購入する時にどこで判断されますか?広げてみれば全体を見る事もできますが、ジャケットと違い肌に近いシャツの試着はなかなかできません。またお店では透明なケースに入っている物も多く、触る事もできません。初めて訪れる店ではなおさらです。私が見るのは形の良さもそうですが、気に入った物があれば、口から少し指を入れて布を触り布の触れ心地を感じます。トーマスメイソンなどシャツ生地を使われた物がベストですが、肌に触れる物なのでしなやかな生地を選びます。次は襟や肩のステッチと、ボタンの素材と縫い留めと少し見えるボタンホールの仕上げを見ます。
襟や袖とに入る運針と呼ばれるステッチの縫い加工は強度や着心地の良さだけでなく、仕事の丁寧さが見れる場所です。使われる布の柔らかさや番手に合わせてステッチの糸の太さと縫い幅は決められます。良いシャツはしなやかな布が多く、針が細かく入れられています。縫いが真っすぐなのは当たり前ですが、良いシャツは1センチに8針以上のステッチが入り、適度な圧で運針され洗濯しても布にシワが出にくい縫い方になっています。ボタンは貝ボタン(白蝶貝)で、留め方は十字か鳥足縫いで止められた物です。またボタンホールの縫製も細く丁寧な仕上がりかを見ます。ボタンの留め方では、十字になったクロス止めは昔は手縫いでしかできなかったのですが、機械縫いができるようになった今でも、良いシャツの基本になっています。子供の頃から父の仕立てたシャツのボタン留めが十字になっているのを見て、高校生の頃は買ったシャツのボタンを自分で取り外して十字縫いにしていました。最近ではハンドメイドの証として鳥足縫いの留め方をした物もあります。
ソファや椅子など布張りされた家具にもステッチがあります。家具に使われる布や革は耐久性を考えられていて、シャツと違い厚い物が多いので、使われる糸も太く、ステッチの運針幅も大きくなります。ステッチの種類は場所や必要な強度によって変わり、Wステッチ、片ステッチ、シングルの三種類が使われますが、仕立ての良さはステッチの幅の均一や曲がりで仕立ての良さを見る事ができます。このWステッチやシングルは幅広くする場合に使い、片ステッチは座前や背裏や馬蹄形のラウンジチェアの背の縫製など強度が必要な場所に使われます。Wステッチや片ステッチは一度シングルで縫ってから再度ミシンをかけるので倍以上の手間がかかります。その手間の縫製が均一で真っすぐに縫われているかが仕立ての良さにつながります。
家具でも洋服でも縫製された物がほとんどです。素材のネット購入では手触りやミシン目までは見えません。お店の方との会話も楽しみながら仕立ての良い物を選んで買うようにすれば、購入した物の良さも分かり大切にされると思います。そんな大切にされるような家具も職人さんと一緒に作り続けなければと思いました。来週から新しいカタログの撮影の為にロサンゼルスへ行ってきます。11月には新作と新しいカタログの発表を行います。お楽しみに!
(クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)


2017.7.28 DESIGNER
西海岸の流行は
AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.75
来週からアメリカ西海岸建築レポートが始まります。9月の新カタログに向けて撮影で使用する住宅のロケハンの模様をレポートいたします。スライド用の写真を見て、ロケハンで走った市内の事を思い出していました。2003年にロサンゼルス近郊で撮影をするようになって15年近くになります。最初に訪れた頃からファッションや車のデザインはかなり変わりましたが、住宅については様々なインテリアスタイルがあり、流行に左右されず、住まわれる方の趣味やライフスタイルに合わせて作られています。もちろんデコレーションされた小物は違いますが、、。対してレストランなどの商業施設では違います。
日本では西海岸スタイルが長く流行しています。ロサンゼルスではイタリアンなどモダンスタイルやセレブ好みのハリウッドリージェンシースタイルが商業空間で流行っていましたが、日本で言われるような西海岸スタイルと言われるラフなスタイルを商業空間にはあまり見る事はありませんでした。しかし、世界的な西海岸やアメリカンスタイルの流行によって逆輸入されたのでしょうか、先日ロケハン時に回った時に、今迄モダンスタイルだったホテルや店がナチュラルテイストの西海岸スタイルに変わっている事を多く感じました。サンタモニカやウエストハリウッドやメルローズなど流行に敏感なエリアの多くの店が変わりつつあります。
数年前まで常宿にしていたビバリーヒルズのホテルに久しぶりに泊ったのですが、有名イタリアモダン家具ブランドで統一されていたクールモダンなレストランや、クラブはナチュラルテイストに変り、ガーデンカフェは草花で溢れるカフェに変わっていました。カフェは相変わらず夜になると深夜まで音楽ガンガンのクラブにはなるのですが、夜の印象から朝や昼のインテリアになっていました。裕福な方々が住まうブレントウッドの小さなモールもナチュラルテイストで、優しげな色使いのナチュラルスタイルです。置いている食品など値段は優しくないのですが、、。肩肘張るようなモダンより気取らないナチュラルなテイストが今なんでしょうか。ナチュラルテイストと言っても西海岸スタイルと思われているラフで適当な仕上げではなく、ナチュラルでも仕上げが綺麗目のインテリアです。
車の流行はというとテスラとポルシェが増えました。一時期はセレブが環境に配慮してプリウスを乗る姿が多く見られて、沢山走っていましたが、今は電気自動車の高級車テスラです。流麗なテスラのセダンが本当に多く見られました。環境に優しくても格好良くて早いのが今の車の今なんでしょうね。ポルシェは8軒訪問した家で4軒にありました。今迄はレンジローバーやアストンマーチンを見る事が多かったのですが今は違うようです。ポルシェが世界的に販売台数を大きく伸ばしている事を実感しました。やはりアメリカはお金持ちの国なんです。ロサンゼルスと言っても局地的な話しで、定点観測した感想でした。さて、来週から西海岸レポートが始まります。今回は建築家、インテリアショップのオーナーの家など、私達の仕事に近いお仕事されている方々の自邸をお見せいたします。お楽しみに!
(クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)


2017.6.30 DESIGNER
魅力ある住宅の条件
AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.74
先日、9月に行う新カタログ撮影のロケハンでロサンゼルスへに行ってきました。取材とは違い、イメージ撮影に適した広さと家具が主役になれるインテリアの住宅を選択し、8軒を見てきました。建築家やインテリアショップオーナー、フラワーアーティストなど見応えのある住宅が多くありました。ロケハンで難しいのが行ってみないと分からない事です。インターネットで画像をチェックしてある程度絞り込んで行くのですが、実際に見るとイメージと違ったり逆に良い場合もあります。
今回感じた事は、オーナーの住まいへの愛情が家の魅力になる事を感じました。アポイントを取り、約束の時間に訪問です。朝の場合はオーナーは在宅ですが、昼は約束した時間に仕事先から帰って来られるオーナーがほとんどです。オーナーと一緒に中に入るのですが、入った瞬間にその家が良い家か分かります。ロスで150軒以上見てきた事もありますが、なんとなく本能的に分かるようになってきました。その家の良さはデザインやデコレーションだけではありません。様々なインテリアスタイルはデザイン的な好みはありますが、良い家はそのスタイルに関係ありません。掃除が行き届いているかなんです。物に溢れている部屋でも掃除がきちんとされていれば、快適で素敵な空間に見えます。メイドさんがいるから掃除されているのでは?と思われるかもしれませんが、いない家も多くあります。
愛情が注がれている家は特に床が綺麗です。その他の空間も綺麗なのは当たり前なのですが、自分の家に愛情を持っているオーナーは、家の歴史やアート、家具の事も知っていてきちんと説明もされる方が多く感じます。欧米ではインテリアは知性の表現と言われますが本当にそうなんです。今回のロケハンでもオーナーの愛情を感じる家が多かったのですが、お金はあるけど家にはあまり興味なさそうな方もいて、その家はなんとなくまとまりがなく、片付けもあまりされていなく、その家に居ても快適さを感じません。3軒の家に犬がいたのですが、家と同じで綺麗な家には綺麗にされているワンちゃん。愛情が感じない家のワンちゃんは手入れがされていなく臭く、元気がありません。愛情豊かな方は家にもペットにも優しく、だから空間も快適になるんだなと、、なんとなく感じました。インテリアショップのオーナーの家はエクレクティックスタイルで物に溢れている空間だったのですが、ワンちゃんも綺麗でとても気持ちよい空間になっていました。ミラノで取材している時に家の綺麗さを聞いた時に、掃除は家族の為にしていると聞いた事を思い出しました。私自身、仕事場もそうですが、気持ち良い空間に保たなければと思いました。
1月~4月に全国で開催したVol12,西海岸レポートでアンケートをお願いした住宅の人気ランキング1位から3位まで発表いたします。600名のお客様からいただいたアンケート結果内容は、今回のロケハン候補を選定する時に参考にさせて頂きました。8月初めには今回のロケハンのレポートセミナーを開催いたします。気持ち良い家はどの家だったのか皆様も感じてみませんか。(クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)



2017.5.31 DESIGNER
ミュージックPV
AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.73
当社のカタログは2005年より2年に一度、アメリカ西海岸でイメージ写真の撮影を行っています。今年は9月に海外で撮影する予定で、撮影する建物を探しに6月6日よりロケハン、ロケーションハンティングに行ってきます。ロサンゼルスは西海岸スタイルの家ばかりと思われている方もいるかもしれませんが、当社の西海岸レポートを見て頂いた方はお分かりですが、クラッシック、ヴィンテージ、モダン、スパニッシュ、フレンチなど様々なスタイルの家があり、映画や雑誌の撮影などロサンゼルスエリアでは世界中のテイストの撮影をする事が可能です。
撮影に行き始めた頃は撮影に使用する家のデジタル写真情報が少なく、日本からロサンゼルスの撮影プロデューサーのYASUKOさんにイメージを伝えて、現地に行って初めて見る家をロケハンしていました。イメージ通りの家を見た時は、撮影コーディネーターの仕事に感心しました。現在は、YASUKOさんの事務所の元スタッフだった方のロケーション会社にお願いしているのですが、そのロケーション会社のデータベースには数百軒の登録があります。現在はそのサイトから見て気に入った家をリクエストして、現地でロケハンするのですが、先にサイトで写真を見れるのはいいのですが、写真が修正され過ぎていて、現地に行くと狭かったり、イメージと違う事があります。きれいに修正された家の本質を見極める事をしないといけなくなったのは、少し大変です。その時に基準になるのが、家具とアートです。きちんとした物が使われている家は、作りも良く、センス良くまとまっています。そのアートや家具を見極めるYASUKOさんの知識にも助けられます。
YouTubeでファッション情報や海外の最新曲をチェックする事が好きなのですが、そのプロモーションビデオ・PVで見た事のある家を見かける事が多くなってきました。この数ヶ月の中では、2011年に訪問したジョン・ラトナー設計の家で、ロバート・デニーロと若手俳優のマッコール・ロンバルディが対談する、Ermenegildo Zegna のショートムービーが撮られていたり、2012年のロケハンで訪問した家ではジョン・ニューマンのCome And Get ItのPV。2011年の撮影で使用した家では、ザ・ウィークエンド ft ダフト・パンクのPV。昨年訪問し、先日のレポートで紹介したマリブの家ではマルーン5のCold ftのPVが撮影や、レクサスの新しいクーペのLCのカタログ撮影がされていました。どの家もスタイリッシュで映像にピッタリの家です。住まいとして使用されている住宅を借りての撮影だからリアリティのある映像が撮れるのでしょう。
家を借りて撮影するにはスタジオと同じように、レンタル料金がかかります。1日11時間で数千ドルから1万ドルを越える家もあります。現在のアメリカは好景気で、成功した若い人に世代交代する家が多く、またプロパティブームで住宅取得された家など、新しいオーナーに変わりつつあり不動産が高騰しています。その関係で撮影に貸す金額も高騰しており、家を探すのも難しくなってきました。レクサスブランドのトヨタのような大企業なら安いものだと思いますが、当社のような規模の会社には、、。それでも良い撮影住宅の候補は何軒か見つかりつつあります。来週からロサンゼルスでのロケハンで、きっと良い家に出会えるように期待しています。夏にはそのロケハンの模様をレポートとしてお見せできると思います。ご期待下さい。(クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)
●画像はクリックすると拡大されます。



2017.4.28 DESIGNER
ミラノサローネも差別化?
AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.72
三年ぶりにミラノへ行ってきました。4月4日から9日まで開催されたフィエラ会場のミラノサローネと、市内で行われる様々なデザインイベントのデザインウィークです。今回は混雑を避けるために7日の後半から回りました。イタリアでは空港や鉄道のストの影響を受けた方も多かったのではないでしょうか。この時期に合わせるように行われるストは本当に迷惑です。
ミラノで見ていたテレビのCNNでは、ユナイテッド航空のオーバーブッキングで乗客の引きずり出されるニュースが何度も流され、航空会社のビジネスクラスとエコノミーのクラスでの差別化なども話されていました。三年ぶりの見本市会場では、差別化されたブースが上位のブランドの多くに見られました。入場する際に受付をしないと入れない登録制や、エリアをVIP用と一般用と分けていて、まるで飛行機のエコノミーとビジネスです。VIPの中でもより上位顧客用のファーストエリアもあり、露骨な感じがしました。三年前までは、上位ブランドではミノッティだけだったのですが、今年は上位ブランドのほとんどがこの手法を取った展示方法でした。
VIP用エリアは空いていてゆっくり見て座る事は出来ますが、一般用エリアは混んでいて、座る事も見る事もなかなかできません。私はプレスカウンターで申請して、中でゆっくり写真を撮り座る事は出来たのですが、ミノッティではいつもの広報担当が辞めてしまい、日本の代理店を通せと入らせてもらえませんでした。そこで、一般用エリアに入ったのですが、人混みの中で製品を見る事は出来ませんでした。この手法を取るブースの中には、VIP用のエリアが一般の倍の広さの所もあり、本当に今の飛行機の中のビジネスクラスのようです。ブランドの中には展示ブースをガラス張りにして、その外で展示だけは見られる所もあり、中にいて写真を撮っていると、ガラス外からの視線を感じ、動物園の動物になったような気持ちになりました。混雑している一般ブースを見ると入れて良かったと優越感にも浸れますが、なんだか人を差別してるようで、デザイナーとしては、複雑な気持ちになります。でも、この人出では、商談など売上げに直結する見本市会場では購入していただくお客様をより大切にする事は仕方ないかなとも思います。
市内のデザインイベントでは企業PRの展示が多く、そういった差別化された展示はあまり見られません。エルメスやルイ・ヴィトンなどのスーパーブランドもインテリアに関する展示を行っていたのですが、さすがスーパーブランド、誰に対してもスマートな対応で感心します。ルイ・ヴィトンでは東京で昨年開催されたボンボヤージュ展と同じように、係員が通り過ぎる人に声をかけながら、説明をしていました。その一人に声をかけられて、話を聞いていると、「こちらにどうぞ」とドアを開けて別室へ。中に入ると私達だけで、、外では触る事のできなかった作品を触れたり座る事ができ、説明もしてくれます。なんてスマートな接客なんだと感心します。あとで会場を見ていると、それっぽいお客様を見つけては中に案内しています。さすがスーパーブランド、皆さんには知られないようにさりげない差別化をしていました。なんだか世の中、顧客第一主義、、。クラス分け、、。世界中に広がっているどこかの国の自国第一主義のような印象を肌で感じたミラノでした。日本ではクラス分け差別を感じる事はありませんが、イタリアでは身なりで人を判断する事を感じます。つま先から頭まで視線が往復している事を何度も感じました。それなので、イタリアではスーツにネクタイをして歩くようになります。ロサンゼルスのラフな格好の方が私には合っているんですが、、。
肝心なサローネと市内イベントはどうだったかというと、見本市会場の作り込まれた展示やデコレーションはいつもながら素晴らしく、グリーン等の使い方が大胆なブースが多く、和を感じさせるインテリアが印象的でした。しかし、どのブースもグレイッシュな色合いでみんな同じに見え、写真整理をしていてもすぐにどこのブランドか思い出せません。向いている方向は同じなのでしょうが、クラス分けされた展示手法だけが記憶に残ったミラノでした。今回のミラノはレポートセミナーはしませんが、私自身が、興味を持った35カ所のインテリアやデコレーションの写真を収録したCDを販売します。お楽しみに!
(クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)
●画像はクリックすると拡大されます。

