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2024.8.30 DESIGNER
西海岸ハイエンド住宅の経費を考える
AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.159
先日開催したアメリカ西海岸のハイエンド住宅レポートはかなりの反響がありました。アンケートの中で、内と外の掃除にどのくらいかかるのか?維持する経費は?との質問がありました。掃除だけでも心配するほど大きな住宅でした。日本では1人8時間で掃除できる広さが2,000平方メートル~と言われるので、今回紹介した住宅で大きい家は土地で0.69エーカー/2,792平方メートル/845坪、建物は18,500平方フィート/1,720平方メートル/521坪あります。家の中は1人で朝から夕方まで掃除して終わるくらいでしょうか。それにベッドメイキング、洗濯等があるので、中だけのメイドさんで2人それに料理を頼むならもう1人。外の庭は毎日1人、プールは1週間に一回程度の清掃は必要となり4人は最低必要となります。普通の家ならメイド1人と庭のガーデナーが週2~3回でいい所ですが、、。
経費は?と思われるかと思いますが、ロサンゼルスの住宅でメイドをしている方の多くはラティーナと言われる南米系の方です。200軒以上住宅を回りましたが、それ以外の人種の方を見た事はありません。ロケハンやツアーで見るミドルクラスの上のクラスだと1人のメイドさんが通いで3時間来ていて、洗濯と掃除をお願いして料理は自分でするオーナーがほとんどでした。そのメイドさんはほぼ、イリーガルの不法移民の方で、相場は3時間で高くで100ドル程度だそうです。アメリカ社会はメイドや庭師、レストランの下働きの方など不法移民で成り立っているので、トランプさんの言う不法移民の締め出しをすれば、社会が成り立たなくなります。セミナーで紹介した家だと1人200ドルで4人で1日800ドル以上のお金がかかる計算です。日曜日以外来てもらうと月に300万円、年間3,600万円以上、プールの水など管理費用を入れると4,000万以上はかかるのではないでしょうか。
住宅に住むと光熱費や維持費、固定資産税などがかかってきます。今回のオープンハウスの住宅を不動産エージェントとして見てきましたが、売主は不動産エージェントに支払う手数料などに7〜8%かかり、それと個人売主であれば、販売時にキャピタルゲイン税が18.3%、合計25%以上経費がかかります。今回紹介した住宅は2,995万ドル/43億4千万円なので、748万ドル/10億8千万の経費がかかる事になります。キャピタルゲイン税は繰り延べして払う事ができるようですが驚く経費です、、。購入者は不動産購入手数料2〜3%だけで、消費税や不動産登録免許税はありませんので、購入者は優遇されています。しかし、ロサンゼルスの不動産の固定資産税は物件価格の1.25%程度で購入金額に対して毎年課税されます。今回紹介した住宅は2,995万ドル/43億4千万円なので、37万4375ドル/5,428万円が毎年住宅の固定資産税として徴収されます。固定資産税は購入金額で決まるので、同じ位の大きさでも購入金額で大きく変わります。ロスでお世話になっているYASUKOさんの家は50年前に2500万円で購入したので固定資産税は低いのですが、隣の同じ広さの新築を10億円で購入したトミー・フィルフィガーの息子さんは固定資産税は年間1,250万円支払っているそうで、YASUKOさんの家と数十倍違うそうです。
さて、今回紹介した43億4千万円の住宅に住むためにはいくら経費がかかるのでしょうか。使用人4人で年間人件費3,600万円〜、あのクラスのプールだと水代と管理で年間1,000万円〜、セントラルのエアコンなどの光熱費は月に3万ドル/435万、年間5,220万円。それに固定資産税の5.428万を加えると維持するだけで月に1,250万円、年間1億5,000万円以上の固定費がかかる事になります。それに生活費など、、。アメリカでは年収の3倍から5倍の範囲が保有できる家の金額と言われていますので、年収15億円は最低必要なのでしょうね。2軒目のベルエア通りの住宅は5年前に1,500万ドルで購入して販売価格1,950万ドルと聞いて、利益が出ると思っていましたが、諸経費と税金でトントンな感じでした。でも新築で購入した家が5年後に1.3倍の価格で販売できるのはアメリカの住宅は財産なんだなと改めて思いました。アメリカでは一生のうちに5回住まいを変えると聞きます。生まれた家、独り立ちの家、結婚した時、家族が増えた時、最後は子供が巣立った時。最後の住まいを小さな家に住み替える事で生活費を得ると。住まいに貯金をする感覚なのでしょうね。
日本では都心を中心にマンションの価値が下がらないとも聞くようになりました。日本も資産価値が下がらないようになって欲しいものです。そういえば、YASUKOさんのウエストハリウッドの自宅が売れたと連絡がありました。YASUKOさんは早く日本に帰りたいので、今の家を大切に使ってくれる人ならと225万ドル/3億2,600万円で売ったそうです。50年前に2500万円で購入し、手入れしてきた家だからですが、相場よりかなり安く売られたとの事。私にとってはロスの実家のような存在だったので、少し寂しい気持ちです。ロサンゼルスの拠点が無くなって行く機会も減るかもしれませんが、機会があれば不動産エージェントとしてロスの高級住宅街を回ってみたいと思います。(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)


2024.7.31 DESIGNER
ロサンゼルスで不動産エージェントになる
AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.158
パリオリンピックが日本勢のメダルラッシュで盛り上がっていて寝不足の毎日です。5月に取材で訪れたロサンゼルスで次回のオリンピックが開催されますが、1932年のマラソンで作られたコースがオリンピックブルーバードとして名を残しています。この道はハリウッドからサンタモニカへ行く時や日本人街のソーテルに行く時に良く使う道で、ロス市内では珍しく真っ直ぐでなく、緩やかな坂やカーブなどある道です。ロサンゼルスの真夏にオリンピックと思われるかもしれませんが、最高気温は30度を超える日でも朝は20度を下回る日も多い爽やかな天候の場所です。酷暑の日本にいるとロサンゼルスの爽やかな天気が恋しくなります。
今回のロサンゼルスに行った目的はYASUKOさんの友人ブレアさんの不動産会社が仲介するハイエンド住宅のオープンハウスを見るためです。その他、話題のホテルやスーパーなど取材してきました。いつもは住宅オーナーにコンタクトして訪問するのですが、今回の取材方法はいつもと違います。ロサンゼルスではオープンハウスの開催日は、火曜が不動産エージェント向けの開催日で、日曜が一般向けへの開催日になっていて、オープンの時間は11時から2時の3時間の短い時間です。オープンハウスの情報はネットにUPされている訳でなく、複数の不動産会社から出た情報をそのエージェントが持っているだけなので、どこにも出ていません。一般向けのオープンハウスはその不動産会社のネットで開示されていますが、他の情報は他の不動産会社のネットから見るか、家の表に出ている看板から見るしかありません。なので一般向けは日曜の事もあり近所の方の来場が多いようです。ネット社会のアメリカでもオープンハウスの情報は少ないようです。
火曜の不動産エージェント向け日は、一社だとなかなか販売しにくい高額物件を同業者にも開示し、その不動産会社の顧客を日曜に誘致する事が目的で、日曜の一般向けでもセキュリティが守られる選ばれた方でないと困ります。以前見に行った30億円から55億円の住宅で一般向けの日曜日に来られている方は、きちんとした方が多く、ラフな服装の方はいませんでした。住宅のオープンルームへ行く際には着飾って行くのが行くのがTPOなんでしょうか、、。私自身はYASUKOさんの友人の住宅を見せていただく時にも失礼のないように、プレスの効いたシャツとパンツは着て行きます。今回はエージェント用のオープンハウスという事もあり、少し緊張しての訪問でした。みなりもそうですが、今回はいつも同行してただけるYASUKOさんが自宅販売のために忙しく、ブレアさんから渡された物件一覧の紙を持って1人でレンタカーで回る事になったからです。
今回はハイエンド住宅が並ぶベルエアとビバリーヒルズの4軒を回りましたが、1軒が新築、3軒は住み替えのためのオープンルームで、素晴らしいデコレーションと、オーナーの生活をそのまま見る事が出来ました。オープンハウスと効いて1人で大丈夫かと不安でしたが、ブレアさんの会社名を言って中に入ると、係の人がついて来る事は無く自由に見る事が出来ました。プライベートな部屋や要所には人がいますが、写真撮るのに邪魔にならないように気をつけてくれます。どの家も素晴らしい家でしたが、新築のデコレーションされた家はどこかよそよそしい印象で、住まいとして使われている家の方は人の気配と安らぎを感じます。オーナーが揃えた調度品やアートが人の気配を感じさせ、より価値があるように感じました。これが価値を上げる住まいなのかと感心しました。ミラノで見る展示会よりロスで見る住宅のインテリアに魅力を感じる事の理由がこれなんです。
ロサンゼルスで不動産エージェントになると表題に書きましたが、エージェントなったつもりでいつも以上に住宅の取材をする事が出来ました。3時間という短い時間で回るので忙しかったのですが、どの家でも前の家で一緒だった他の不動産会社の人と会うと、さっきも一緒だったねと挨拶を交わしてくれます。一軒の家では夜にシャンパンパーティをするからぜひ来てねと言われました。夜景も見てもらいたいからの理由でしたが、家を売るためにパーティーをするのもハイエンド住宅の売り方なんだと驚きました。8月21日22日のセミナーでは今回取材の住宅からホテルのようなモダン系の2軒と話題のホテル2箇所をご案内いたします。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)


2024.7.1 DESIGNER
ミラノサローネの変化
AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.157
ミラノデザインウィークレポートを先日開催しましたが、Webセミナーでの参加者の記録を更新して1500名以上のお客様に参加いただき、終了後に電話や途中退席で見れなかったのでアーカイブはありませんか?再公演はないの?のお問い合わせを多くいただき、再開催をする事になりました。その再開催も600名を越えるお客様に申し込みをいただき、反響の大きさに驚いています。他社など多くの会社がレポートを始めたのでミラノレポートを引退し、当社でないとできないレポートをしていたのですが、今年の参加者の多さを見ると、個人的には複雑な気持ちになります。当社は輸入メーカーでもミラノサローネでの出展も無くPRにはならないのにと、、。
何人かミラノレポートへ参加したお客様にお聞きすると、輸入メーカーは自社PRがメインで、素材メーカーは表面的な印象の話しなので理由が分からない事と、何よりクライアントからミラノデザインウィークの事を聞かれる事が多く、情報を獲る事は必須になってきているので、瀬戸さんの話は聞きたいのではないでしょうか。また、雑誌で紹介されていないブランドも多く紹介されるので、分かりやすいのです。と聞きました。私自身、プレスとして25年以上前から取材を行い、雑誌に紹介されていない主要ブランドを紹介してきました。ミラノ特集する雑誌では日本で販売され広告を取れるブランドしか紹介していませんでした。しかし、実際にミラノへ行くと知らない上位ブランドが多く存在し、そのブランドが注目を集めている事も知りました。
取材を進めるとデザイナーが勝手にコンセプトやデザインを出す事は無く、各社の経営者やクリエイティブディレクターがその年のテーマを決めてデザイナーに発注するのですが、そのテーマは売り先が必ずあり、その販売国の好みやターゲット層によって変化している事が分かってきました。中東、ロシアや新興国、中国や東南アジアなど販売が好調な売り先によってデザインや色、ファブリックなどが使い分けられます。商売人のイタリア人らしいターゲットをはっきりさせた製品作りです。ファッションのスーパーブランドでも同様で、販売が好調な国へのデザインをする事が売上を持続させ伸ばす事にもつながります。
残念ながら、日本はそのターゲットからは外れている事も知り、有名ベッドブランドでは日本の家具会社に出していたけど、真似され終わってしまうからあまり販売したくないとの事も聞きました。その事を知り、ミラノでは各ブランドの営業責任者やディレクターからそのターゲットを聞くようになりました。毎年定点観測として同じ上位ブランドを回り、その際に昨年は〇〇への販売が好調と聞いたけど、その後はどうなんですか?と聞くと、分かってる人だと思われ、本当の話を聞く事ができるようになりました。そうやってレポートを続け最大で全国30箇所へPCとプロジェクターを持参してレポート周りをしていました。それが、再評価されたようで、少し嬉しく思っています。
ミラノサローネ(見本市会場での展示会)を40年近く見ていて感じた変化は、この20年で変わったのは製品の見せ方で、単品で製品だけを見せる展示から、インテリアをスタイルとして見せる方法です。単品で見せる方法はシンプルな空間に作品的に置かれデザイナー色を強めた見せ方でしたが、スタイルとして見せる方法はインテリアを作り上げた空間で単品ではなく、空間バランスを重要視した見せ方です。インテリアに使われる製品は単品の物だけの使い方ではありません。上位のブランドは私達は製品を販売しているのではなく、スタイルを売っているのです。というブランドが増えていきました。ブランドの売上が伸びてきた事もあり、今のミラノサローネ見本市会場での展示はインテリアのしつらえをしたスタイル展示がメインになり、多くの集客しているブースはスタイル展示でになって、旧来の製品だけを見せているブースは閑散としていました。
私自身デザイナーとして仕事をしてきましたが、いつの頃からか肩書きがクリエィティブディレクターになりました。家具はデザインしていますが、単品としての物でなく、インテリア空間に調和するスタイルを大切にしています。アメリカでの建築巡りをしていると家具はプロダクトとして存在しているのではなく、空間の中に存在していることを認識されられ、市場に出て初めてトレンドになる事を再認識させられます。再開催のミラノレポートは本編に当社のPRは全くありません。最後の営業PRを最後までお聞き下さいませ。(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)


2024.5.30 DESIGNER
適正価格をロサンゼルスで考える
AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.156
ミラノから帰った翌週にアメリカ、ロサンゼルスへ行ってきました。敬愛するプロデューサーYASUKOさんの日本帰国が1年伸び夏までになるという事を聞き、最後の建築取材チャンスとして行ってきました。カタログ撮影が始まったのは2008年で、2年に一度の撮影とそのロケハンや毎年開催していた建築ツアーで30回以上ロサンゼルスを訪れていて、住宅では250ヶ所以上を取材してきました。今回は一年ぶりのロスで、いつものようにレンタカーを借りて、住宅だけでなく、話題のホテルや高級スーパーマーケットも見てきました。
今回、アメリカでの物価上昇は驚きました。特に驚いたのは、ウエストハリウッドでのホテル駐車代が昨年の$55から$65になり、TDMという宿泊税はヨーロッパでも徴収されるので納得できますが、市職員を守る税/City Warker Protection$10やアーバンアメニティ料$35などというホテル代に入っているのでは?という料金が別になり毎日徴収、それぞれ課税され、ホテル予約サイトで予約した金額以外が30%以上現地で取られるようになった事です。毎日清掃してくれない部屋のホテル代も上昇し、レンタカー代やガソリン代の上昇も少し驚きます。現地での飲食などの滞在費は昨年も上昇していたので、覚悟はしていましたが、それを上回りました。アメリカでは必須のレンタカーに必要なガソリンのレギュラーがウエストハリウッドでは$6.5でロス市内の多くは$5.5でした。1ガロンは3.78リッターなので、1リッターで1.45ドル(約230円)と日本よりかなり高く、円安でも日本よりかなり高い金額です。
レストランチップはヨーロッパではそんなに気にしなくても良かったのですが、ロスでは驚く上昇して、高くても18%だったのが、今は通常20%で高級店では25%になっていました。もっと驚いたのが、サービスを受けないテイクアウトの店でも支払いの画面にチップが15%、18%、20%と選ぶ所があり何のチップ?と思いましたが、支払う本人を前にしてノーチップのボタンを押すのに躊躇しました。それがレストランでは請求明細の下に18%=$⚪︎、20%=$⚪︎、25%=$⚪︎とそれよりも高く明記してあり、税金と合わせると30%以上プラスされた金額になってしまいます。現地の方に聞くと、レストランチップ%が上がっているけど、持ち帰りの支払いでの画面にチップが表示されるようになり、みんな驚いていていて、笑顔だけもお金取られるようになってしまったと、、。物価が2倍になったが、所得も2倍なので、生活は変わった印象は無いが、所得上昇が低い移民や低所得者は困窮しているとも聞きました。
ロスでは話題になっているセレブ御用達の高級スーパーのErewhon/エレウォンへ行ってきました。ロスといえばオーガニック系スーパーマケットが人気で、一番安いのがプライベートブランドを多く販売しているTrader Joe’s/トレーダー・ジョーズで、エコバッグが人気で日本でも持って歩いている人を見かけます。その上には大店舗展開するWhole Foods/ホールフーズがあります。価格的には物によりますが、同じ石鹸や水ではトレーダー・ジョーズが1とするとホールフーズが2倍、エレウォンは3倍〜5倍という感じの値付けです。日本では同じ品物ではメーカーが決めた希望小売価格が上限で安いスーパーでも半額にはなっていません。海外では値決めは販売店が決めるので、同じ物でも価格もまったく違う事が普通ですが、エレウォンは別格で、そこまでの差は見た事がありません。
エレウォンはロサンゼルスに本社があり、8店舗展開する高級スーパーマーケットで、1966年に日本人の久司道夫とアメリカ人の2人がボストンで設立しました。久司道夫はマクロビオティックの先駆者で発展普及にも努めた方で、ボストンの1店舗だけの店でしたが、2011年にトニー・アントッチが買収して健康食品に特化した店舗をロサンゼルスを中心に展開をしています。フェアファックス、シルバーレイクやカルバー・シティなど若いお金持ちが住む街にあり、店の大きさはトレーダー・ジョーズ位の店ですが、狭い通路に商品がぎっしり整頓されて置かれていました。訪問した店はカルバー・シティのアマゾンスタジオ近くに2022年出店した店です。カルバー・シティはロサンゼルス空港やベニスビーチにも近く、アマゾンやグーグルやアップル社のロス本社があるエリアで、若いIT長者があつまる場所です。
エレウォンはヘイリー・ビーバー(ジャスティン・ビーバーの妻)などとコラボが有名で、ヘイリーレシピのスムージーなど人気です。また、昨年前のロスでのバレンシアガのファッションショーでエレウォンのペーパーバッグやドリンクを持って歩かせるなど、セレブやインフルエンサーなどへのPRも力を入れており、その人たちに憧れる若者に人気になっています。ちょうど昼頃という事もあり、エレウォンが入る建物の周りの外でエレウォンのロゴが入ったドリンクでランチする若者が多くいました。中に入ると、商品が生き生きとして見えます。照明の当て方と彩りが良いのでしょう。野菜売り場で取るのをためらう位きっちり整理と彩を考えた陳列で、エレウォンマークの入ったドリンクやナッツ類など隙間無く置かれています。一番驚いたのは、置かれた商品のマークや名前が前を向いて整理されていて、日本のスーパーでも見ない置き方です。商品の置き方を感心しながら、値札を見ると16オンス/450ccのジュースが11〜15ドル(2,000円〜)450ccの水$2.99(520円)56g入トルティーアチップス$7.99(1,400円)ランチサラダ20ドル(3,500円)12個入りトイレットパーパー$17.99(3,200円)と手が出る物がありません。
エレウォンオリジナルの瓶入りのジュースは上記の金額に瓶代$3(500円)の保証金が必要で返却すると返金されます。なので、ドリンクやナッツ類は購入時に保証金がかかります。(年間$200支払うエレウォン会員になると10%割引になる)最初に書いたヘイリーがコラボ開発したストロベリー・グレイズ・スキン・スムージーは20オンス/562cc$19(3,300円税込)です、、。外で食べている若者のランチは6,000円以上はしているのでしょう。中を見ながら歩いていると、何かお手伝いしましょうか?お困りの事はありませんか?と銀座のデパ地下にも無いようなスマートな接客です。ここまでするからこの値段なのかと少し納得です。でも、コットンのエコバッグが$50(8,700円)で少し良いエコバッグが$135(23,500円)とはエコバッグではないよな、、と思いながらスムージーコーナーを見ると、意識高い系に見える若い人が並んでいました。
金額を見ると買う気にならなかった自分の経済感覚では、エレウォンの良さと売れている理由が見つからなかったので、YASUKOさんの友人でゴールデングローブ賞の審査員をしているYUKIさんにエレウォンの事を聞くと、エレウォンのマークが付いたドリンクを持つ事がカッコ良く思い、自分はこれを買えるだけの収入があるんだとファッション感覚で見せたい人で、$20のドリンクを高いと思わない意識高い系の人が買うんでしょうね。セレブの中にはエレウォンに行った?値段見た?、誰々の親が子供にエレウォンカードをプレゼントしたんだってと、笑い話になる位だからセレブでも経済感覚のある人は行かないし、私は同じ品質の物が1/3以下で買えるトレーダー・ジョーズに行くわ、、と。綺麗な陳列の事を聞くと、たしかに綺麗だわ、でも、あれだけのお金を取るのだから当たり前よね。と手厳しいい答えでした。ディーン&デルーカやスタバが日本に入ってきた時に、バッグやマグカップを持った若者が多かった事を思い出しました。今回、行ったスーパーではトレーダー・ジョーズが高年齢層が多く、ホールフーズでは中年齢層、エレウォンは若年層と来客層が違う事は感じ取れました。適正価格をお客様層によって変えるのがアメリカです。
今回、取材に回った住宅は業者向けのオープンハウスで30億から50億の金額が付いていました。こんな家で生活する人にとってはエレウォンで買うスムージーなど金額は関係ないんだろうなと、思いながら取材を続けました。円安もありますが、ベルエアやビバリーヒルズの邸宅街を車を走らせながら、アメリカの富裕層人口は世界一なんだなと思いました。庶民の私にとっては、In-N-Out Burger /イン・アンド・アウト・バーガーのチーズセットが値上がりして$8.55(1,500円税込)なっていても、この品質でこの金額ならOKだなと勝手に納得、、。でも、日本がんばれ!と心の中では叫んでいました。来週はミラノレポートが開催されますが、8月には今回のロスの取材をお伝えします。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)


2024.4.30 DESIGNER
ミラノサローネの楽しみ
AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.155
今年もミラノサローネとデザインウィークへ行ってきました。昨年からスタッフ研修も再開しミラノを歩いてきました。今年のフィエラ会場の家具見本市とキッチン見本市は会場のレイアウトが初めて正反対になり、人気ブランドが集まる館が一番奥になり、手前が人気の無い館とキッチン館になったので、長い通路を歩く人並みが長く、奥まで歩くと1.5キロと距離も長く大変でした。一番奥の館に行くためには外周を回るバスに乗れば楽なのですが、知られていなくてガラガラでした。このフィエラ会場で開催されてからずっと同じレイアウトだったのを反対にしたのは、会場の奥にはあまり人が行かず閑散としていた事から、不公平感を無くすためという事でした。建物館内のレイアウトは見本市会場に顔が効くブランドが中心手前だったのは変わらなかったのですが、、。
フィエラ会場で昨年から始まったブースでの事前登録制、顧客のみの入館と入場制限が多くなり、事前登録していても会場をスタッフが案内する方式が多くなり、待たされ入り口で登録作業をするために、以前の3倍くらい時間のかかる視察です。高価なチケット(3回で50ユーロ)なのに、顧客しか入れないブランドがあるのには、やはり違和感しかありません。どのブランドも名刺による手入力を省くために、登録用のQRコードから登録させる方法は効率化で仕方がない事ですが、親切なブランドではフィエラ会場の入場券を購入時のインフォメーションを利用して、それを読み込んでいました。入場を制限していて、かなり時間を並んで入れたブースでも上顧客用のエリアがあり、半分しか見られない所も少なくありません。ますます、差別化が進んでいるサローネです。日本でも航空会社の優先搭乗やラウンジなど顧客の差別化が普通になってきましたが、世界ではもっと進んでいるようです。実際、購入する事が無い私達には優先される理由もありませんが、、。市内で開催されるデザインウィークでも登録制になっている所が多く、長い列の最後にQRコードを掲げていて、それからスマホでの登録が始まるので、よけいに時間がかかってしまい長蛇の列です。その列を見て入場を諦めた所もかなりありました。ミラノ市内がディズニーランドになったようです。高額になったホテル宿泊料のせいで、長期滞在が難しくなった中、行くべきブランドを前もって定めるのも、視察旅行の重要な準備になりました。
いつもこの時期のミラノで楽しみにしているのが、車と各ブランドのインテリアシーンの作りです。車はミラノ中心に停まる車と色を見るとヨーロッパの旬な自動車の傾向を見る事ができる事と、主要メーカーがこの時期にイベントを行っているからです。今年のミラノ中心街では目新しい自動車の傾向を見る事はあまり無く、自動車メーカーのイベントもあまり興味深い物がありませんでした。電気自動車への移行が停滞している事と戦争による景気の停滞が原因のようです。一方、楽しみにしているインテリアシーンでカラーもそうですが、使用される花や植物です。植物は観葉植物というより植木のような巨大な植物です。緑の少ないミラノだからか、綺麗に手入れされた植物を置いたイベントを見ると、より良く見えています。フィエラ会場では短期間での展示会なのに、ブース内に生き生きした巨大な植物に驚き、運搬をどうしたんだろうといつも思います。朝のオープン直後に目指す館に入ると、大きなジョウロを持った植木職人さんや花屋さんが沢山出てきました。毎朝、手入れをしているから、あのような巨大な植物や花が生き生きと管理できているのかと感心しました。
今年のミラノの植物はいつも以上に巨大な植物が置かれたブースも多く、観葉植物というより街路樹というほどです。中でも花が盛りの街路樹をどうやって花を落とさずに持ち込んだのかも不思議です。自然光が入らないブース内では植物用の波長を持つLEDライトを当てられたりと、普通の人には気が付かない工夫もされていました。観葉植物として置かれた物で、今年気になったのはクワズイモやモンテスラやゴムの木など、70年から80年代に流行った濃い色の葉の大きな南洋植物です。ぽってりしたボリューム感のあるソファに合うように巨大な葉のモンテスラが雰囲気を出していました。昨年行ったロサンゼルスの新しいホテルでもモンテスラやゴムが使われていましたが、インテリアは家具や照明だけでなく、植物も重要なインテリアアイテムで、その時代に合わせたイメージで組み合わされます。一時廃れていたゴムの木やトラノオやモンテスラ、ベンジャミンなど、観葉植物が流通し始めた頃の植物が見直されてきたのは、1970年代をイメージしたインテリアが昨年から来ているせいなのでしょう。日本で言えば昭和のノスタルジックな印象でしょうか。あと、今まで見た事の無い植物はススキのような稲のような枯れ草が多く植えられていました。何の意味なのかは分かりません、、。
インテリアは空間だけでも家具だけでも成り立ちません。アート、小物、照明、そして植物もトータルで合わせてスタイルになります。上位のブランドだけが作る空気感を感じる事がミラノサローネ時期の楽しみでもあります。昨年から復活したミラノレポートを今回も開催予定をしています。今年のカラーやデコレーションや植物の組み合わせをレポートしたいと思います。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

