COLUMN

2014.5.26 DESIGNER

物の本当の価値

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.31
最近、いろいろな所で本当の金額が分からない時があります。日本の良さは価格表示が公正で、同じ条件で品質など中身も比較できて、安心して購入や利用ができる所でした。販売する側では価格.Comなどで価格を比較され、販売金額の競争が激しくなっていています。その中で、表示する金額や中身の量で、安く見せようとする販売が目立つようになってきました。

ドラックストアなどで、ティッシュボックス5個入りの値段表示で店頭に並びますが、200枚組400枚が当たり前だったのが、180組360枚、150組300枚まで、サイズも小さい物があります。鼻をかもうとしてあれっ、なんだかサイズが小さいと思って広げてみるとサイズが小さい、、。通常サイズが244ミリ×275ミリが195ミリ×205ミリで、面積60%のサイズでした。トイレットペーパーもシングルが標準55メートルが40メートルや30メートルへ。長さだけでなく、ティッシュと同じ、幅まで小さくなってる物があります。なんだか寂しい話ですが、本当の価格が分からなくなってしまいます。

街の駐車場もどこも同じ時間の金額表示だったのが、30分200円、20分500円、15分300円、12分200円など、、1時間にしないと本当の金額の比較ができません。最大料金が12時間3000円、10時間2800円、3時間2000円など小さく書いている文字をちゃんと見ないと、支払い時に予想外の金額に驚く事があります。選ぶ側もちゃんと計算しないといけないのですが、、。消耗品もそうですが、リピーターよりも今だけの商売を優先しているような事が多くなっているような気がします。

ミラノサローネで取材中に製品の重さについて聞く事がありました。展示されていた椅子が見た目より重たかったので、なぜ?と聞くと、不思議そうな顔をして、テーブルも椅子も重くなければダメでしょう。しっかりした製品の証ですと、。良い物には適度な重量感がなければダメで、それを価値として選ばれるからとの事でした。自分で製品の良さを判断する消費者が多いからだとも聞きました。日本では搬入のしやすさから、軽くサイズがある程度小さくや、掃除のしやすさから軽い椅子が望まれる事があります。しかし、長く使えるようにする為に、強度がある堅い材料を使い、見えない箇所に手をかけて製品を作るとある程度の重量になります。テーブルも同じです。

物の本当の価値を感じるにはリピートするか、永く使わなければ分かりません。そんな長く使っていただける製品作りをしなくてはいけません。今回の開発ブログで取り寄せた、一昨年に発売の椅子の見えない木フレームの加工を見て、見えない所を手間のかかった物作りを少し嬉しく感じました。  
                               (クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)

ミラノサローネ会場でのLEMA、GIORGETTI、CASSINA、 MINOTTIの椅子。どれも重量感がありました。重さの事を聞いたのはLEMAのセールスマネージャーでした。
当社のある広尾にある時間貸駐車場の表示です。短時間の駐車時の金額と長時間駐車する場合はどれが一番安いかすぐに分かりますか?う〜ん悩んでしまいます。

2014.4.30 DESIGNER

ミラノサローネ2014

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.30
二年ぶりにミラノへ行ってきました。ミラノサローネと言えば、ミラノ市全体で開催されるイベントと思われていますが、本来はフィエラ見本市会場で開催されるミラノサローネ国際家具見本市の事です。その期間に合わせて開催される市内イベントの総称をフォーリサローネ(サローネの外)と呼ばれています。見本市会場ではミラノサローネ国際家具見本市とユーロクッチーナ国際キッチン見本市(隔年)の展示会があり、それ以外にも国際バス・トイレタリー見本市、サローネサテリテなど、国際家具見本市とは別に展示会が開催されています。正式にはミラノのフィエラ会場で開催されている各見本市と市内のイベントを見てきましたというのが正式なんでしょうね。

フィエラ会場で開催されるミラノサローネ国際家具見本市は、販売目的で世界中のバイヤーや関係者が集まります。商談する場所として、お金をかけた展示ブースはインテリアデザイナーやデコレーターが手がけ、近年はスタイルとして見せるブースが主流です。一方、市内のイベントや展示会の多くは企業や個人のPRがメインで、デザインのみの展示が多くインスタレーションが中心です。目的がはっきり違うので、その事を頭に入れて視察する必要があります。

この数年は、期間中のホテル代の高騰は驚くばかりで、一昨年に高騰して一泊¥57,000だったホテルが¥77,000になっており、宿泊することを止めました、、。期間外なら¥10,000程度なので、ちょっと驚くような金額です。来年はミラノ万博開催で、年間通して高騰したホテル代になってしまうのでしょう。DUOMO近くのデパート、リナシャンテもスーパーブランドのセレクトショップになり、お土産コーナーの食品売り場もとても手の出る価格ではありません。そこで売っていたキャンディやチョコレートは、市内のスーパーマーケットで売っている物の倍以上の金額がついていました。これじゃ、普通の人は買えないなあ、、と思って見回すと、ロシア系、アラブ系、アジア系の人しかいません。買う人がいればその値付けをするイタリア商魂を感じて、何も買わずに出てしまいました。こんな事しているとミラノを訪れる人はいなくなってしまうのではないでしょうか、、。

今年のミラノはどうったのかというと、ホテルの高騰も影響したのか、人が少なかったように思いました。フィエラ見本市会場では人気ブースはいつも以上の混雑で、そうでもないブースは閑散としていて、市内イベントは寂しい人出だったように感じました。この数年続く景気の低迷で、ミラノ市内を訪れる人は確実に少なくなっているようです。デザインはどうだったかと言うと、一言で表現するのは本当に難しく、販売先の国やターゲットによって各社デザインや見せ方を変えているので一言では言えません。ターゲットをしぼったデザインと、そのスタイルの見せ方ができているブランドが好調のように感じました。好調ブランドの素材や色使いは独自で見るものがあります。ミラノレポートは今回、個人的な目線で厳選したレポートをする事になりました。CDも販売する予定ですので、お楽しみに!
(クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)

左上:ミラノサローネ国際家具見本市のあるフィエラ会場の入り口。今年は人出が少ないように感じます。右上:国際キッチン見本市。人気のブースのキッチンは人が多く、写真が撮れません。下:家具見本市のブースは有名デザイナーの手によるブースデザインです。インテリアスタイルの見せ方のブーズはお金がかかっています。インテリアの仕事をしている人ならミラノサローネ国際家具見本市のブース展示を見るだけでもデコレーションや色使いなど参考になります。
デザインイベントが多いトルトナエリアです。左上:中心的存在のSUPERSTUDIO PU入館が登録制になって人が少なくなりました。右上:フランス車メーカープジョーのインスタレーション。車とは関係ありませんが、デザイン性を高めるためのインスタレーションが行われていました。左下:デザインイベントで作られた作品が並ぶ。今は作品だけを並べてもあまり人が立ち止まりません。右下:ゾナトルトナは工場跡地だった所で、そこで様々なイベントが開催されています。

2014.3.31 DESIGNER

素材の産地は

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.29
3月も終わりです。東日本大震災の大変さや辛い事を思い出した方も多かったのではないでしょうか。3年前の3月、年度末の繁忙期に東北の交通が麻痺し、山形にある協力工場からの荷物が出荷できず、お客様にご迷惑をおかけしました。お客様に納期変更の依頼や、トラックをチャーターし新潟経由で材料や物資を運び、帰りに製品を持ち帰る手配など、社員全員が対応に追われた日々を思い出しました。その時の納期変更を快くお受けいただいたお客様、電力が無く、ガソリン、材料も底をつく中、作っていただいた工場の方々に本当に感謝しました。あの頃は日本が一体になり、胸を熱くする日々でした。その後、農作物に対する放射能の問題、それに対する風評被害があり、放射能の検査を行い安心して物流ができるシステムを各団体が作り上げ、日本の生産管理のレベルの高さから、安心して物を購入できるようになりました。

しかし、先日、広島の協力工場へ行った時の事、少し考えさせられる話を聞きました。その工場は老舗の箱物工場で、当社のデスクを試作していただいています。日本の箱物の多くは湿度の高い日本の気候に合うように、内部に桐材を使用しています。桐材の多くは海外産ですが、高級な物には国産の桐、その中でも会津桐は木面の細かさ、白さや光沢、水を通さない気密性の高さからブランド材として使用を表記する材料でしたが、その工場の取引先から「会津桐を使うな」との声があり、その材料が使えなくなっているとの話でした。会津桐の産地は、会津でも福島県大沼郡三島町という新潟との県境で放射能の飛散の無かった地域なのですが、福島県だからという事でした。調べると、喜多方市にある桐の博物館が経営難で昨年閉館していました。原発事故の風評被害だそうです。

材木については警戒区域や計画的避難地域での材木の出荷は制限されており流通していません。また、木材自体には空気中に拡散した放射能を取込んで蓄える性質は無く、水分や養分を吸い上げるのも表皮に近い辺材で、材料に使える心材は木質化していてその機能はありません。汚染地域でサンプリングした木の樹皮を測定して数値が高かったとのニュースから木本体が、放射能が含まれていると思われているようです。ましてや汚染地域から遠く離れた地域の材を同じと思われては困ります。そのような風評被害で、日本の伝統工芸が窮地に追い込まれ、それに使うための材も流通できなくなっています。その話を聞いたのが、広島の工場だったというのも複雑な思いでした。

当社の製品は日本国内、東北の山形、九州の大分で製造しています。材料は国内で作られたフォースターの合板、ヨーロッパ、北米の物がメインで森林循環型の木材を使用し、安心できる塗料、接着剤を使用しています。産地不明の材料を使うのではなく、きちんとした管理された材料を使う事が、安心できる製品になると思います。それができるのは日本の工場だからです。震災後3年を経て、物作りは素材からという事を再認識しました。地域だけで判断するのではなく、管理された素材を使った安心した材料か製品かをメーカーに聞いて判断下さい。
                               (クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)

NEO CLASSICO NC-018 エグゼクティブデスク 天板トップには天然素材のリノリウムを使用。天板にはフラップ式の扉と電源コンセントを付け、可動式のオリジナルの照明スタンドが備えられています。 引出し内部には桐材を使用しています。輸入桐ですが。会津桐がきれいで良いのですが、、。
オリジナルの照明スタンドの可動式のレールには紫檀が使われます。堅く歪みません。当社の全ての照明には調光式のスイッチが使われています。

2014.2.28 DESIGNER

これからのファッションは

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.28
先日、いつも行く洋服屋さんで私と同じくらいの年齢の店長と70年代後半の話になりました。前回のブログで書いた、スケートボードを久しぶりに出した事を話をしたら、ボードやパーツの話になり、盛り上がってしまい、ファッションの話になりました。ついこの前まではケネディ特集があったり、60年代といっていたような気がしたのですが、ファッションの今は70年代後半になっています。ファッション誌ではスケートボーダー特集をしていたり、スタジャンや、アランセーターやカウチンセーターの記事があったり、70年後半そのものです。それを知らない世代に新しいファッションとして受け入れられているようです。でも、それをそのままではなく、カッティングやデザインを今の時代に置き換えて出しています。

盛り上がった私達のそばで、私の担当の20代後半の子はキョトンとした顔で見ています。自分の生まれる前の事なので、流行っていた頃のイメージがつかめないのでしょう。私自身も若い頃に50~60年代の、ファッションに憧れていたけど、実際どうだったかは想像でしかできません。今から思うと、中学から高校時代はアメリカ東海岸のアイビー、プレッピーファッションが来て、その後西海岸のアメリカンファッションになり、カウチンセーターやスタジャンだった記憶です。アイビーファッションは親の世代なので、記憶にはまったく無かったのですが、格好良く感じて取り入れていて、その後の西海岸ファッションに凄く新しい印象を受けました。その後のDCブランド、アルマーニファッションも、。

その頃、新しく感じていたファッションがまた再燃しているのは不思議な感じですが、一度経験している者として、若い世代よりはアドバンテージがあるように感じます。インテリアの世界でもその頃のデザインが気になります。本業のデザインでも若い世代には負ける気がしないのは、その経験があるからなのでしょうね。想像の世界ではなく、実際の経験があります。私と同じ世代のアラフィフ世代の方も同じではないでしょうか?でも、そろそろまったく違う新しいデザインの方向性を見つけなければいけないのですが、、。

ウールリッチのシャツ、アランセーター、スタジャンなど久しぶりに引っ張り出してみましたが、サイズ感が少し違うかな、、。少しお直ししないと。                 (クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)

アランセーター:高校生の時、両親のロンドン旅行のお土産に、買ってきてもらいました。35年前のセーターですが、まだまだ着れます。アランセーターは漁に出る夫の無事と豊漁を願う女たちの祈りの意味が込められていると言われていますが、アラン諸島の漁業基地に出入りしていたスコットランド人家族のガンジーセーターがベースとなり、そこにアメリカ帰りの天才的編み手の女性が持つ技巧が融合し、島独特の派手好みの美的感覚から広がりました。編み手の組織化や仕上がりレベルの標準化など、売れる商品としての生産態勢を整え、家内制手工業としての形態を作り上げたそうです。そのアランセーターに注目したのが、1956年のクリスチャン・ディオールだったそうです。雑誌「ヴォーグ」や「ハーパーズ・バザー」は、このパリの最新トレンドをアメリカに伝えて、その後の大流行になったそうです。今では観光で生計が立つようになったアラン島では編む人が少なくなり年間400枚程度になり、貴重な物になってきました。ウールシャツ:Woolrichのシャツで脱脂していないウールで作られています。これも35年経っても現役です。
アランセーターに手作りのタグが、、。Woolrichのタグのデザインは変わりました。今、人気が再燃しているようです。アメリカで購入したスタジャンはかなり色が変色しています。袖口や本体はウールですが、化繊も入っているからでしょうか、ボロボロになっています。ウールだけのセーターやシャツはなんにもなっていませんが、アクリルなどは35年経つと劣化するのですね。下のレーシングジャケットは70年代の物をLAのスワップミートで10年ほど前に手に入れました。あまり着る機会はありません。

2014.1.31 DESIGNER

自分の始まりを思い起こす

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.27
1月も末ですが、本年初めてのブログです。本年もよろしくお願します。もう一ヶ月経ったのですね。1月はアメリカ西海岸セミナーで飛び回っていました。あと少しで千秋楽です。十数回、この季節に休む事無く、最後までセミナーできる身体に育ててくれた両親に感謝します。

先日、雑誌社の取材を受けました。自分自身の話をする時、に必ずデザイナーを志したきっかけを聞かれます。忙しい毎日に、なんでこの仕事をしようと思ったのか?なんて忘れかけていました。改めて言葉にしてみるとと思い出します。私がデザインの仕事をしようと思ったのは、アメリカにきっかけがありました。高校1年生の時に初めて見たアメリカ西海岸の文化を紹介した雑誌「ポパイ」に影響され、スケートボードやモトクロスバイク、ジョギングなどの新しいスポーツやそのファッションを格好良いと感じ、自分に取り入れました。

スケートボードには本当にのめり込んで、高校2年生の時、プロになろうと思い、武者修行に渡米したのですが、結局は諦める事に、、。その時に肌で感じた、アメリカの巨大なショッピングセンターや公共の建物、ポップアート、、。とりわけ街全体にエアコンが効いている巨大な街のようなモールに驚き、そのインテリアデザイン、置かれている様々な家具等のデザインに、なんだか魅力を感じ、帰国する時にはそんな物の形を作る仕事をしたい、その勉強をしようと思っていました。親にとっては、渡米前とは、全く違った志を抱いて帰国した子供には呆れた事だと思います。その経験がなければ、今の自分は無かったでしょう。今思えば、アメリカに行かせてくれた親に感謝です。

高校2年生からずっと今の仕事を目指してきたので、飽きやすい性格の自分がよく持ったものです。久しぶりに、自分の始まりを思い起こす事をして、その時に目指した仕事ができているかを思うと、まだまだ頑張らないと、、と思いました。恥ずかしいのですが、高校生の時に思ったのがNYの5番街に店を出す事です。それまで頑張れるかどうか、、。年の始めに自分の始まりを思い起こす事もいいかもしれません。
(クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)

久しぶりに出したスケートボード。板:Deck(デッキ)は1976年モデルのSIMS Lonnie Toft Model(シムス ロニー・トフトモデル)です。アメリカで手に入れたその頃の人気スケートボーダーのプロ用です。白とグリーンのWheel (ウィール)はランページ、ボウル用のハードで、付いている赤いWheelはソフトなストリート用です。Wheel の中心にあるベアリングもこだわり日本製のNTN製に交換しました。もう一つ大切なパーツはTruck (トラック)Wheelの中心にある金属のターンする為のパーツです。Truck&Truck を付けました。こんなふうにパーツを選ぶのも楽しかった思い出です。
赤黒の滑り止めも考えて貼りました。その頃は日本にプロ用モデルなどあまり入っていなくて、渡米してから購入しました。製材所でアルバイトしたお金をつぎ込んで手に入れました。たしか$500以上したような記憶が、、。すごく高価な物でした。右側のバッグはスケボー用のディバッグ。これを背負って毎日スケートボード場に通いました。その頃はロングヘアで真っ黒に日焼けして、アメリカではインディアンと間違われました、、。