COLUMN

2022.6.30 DESIGNER

運命の出会い

AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.133
山下達郎が11年ぶりの新しいアルバム「SOFTLY」をリリースし、オリコン週間アルバムランキングで1位になりました。山下達郎は1973年活動開始で、もうすぐで50周年になることもあり、雑誌BRUTUS最新号でも山下達郎特集が組まれています。矢沢永吉、松任谷由実、桑田佳祐など65歳オーバーのアーティストの存在感がコロナ禍の中で増しています。さっそく「SOFTLY」を入手し、その中の「LOVE’S ON FIRE」のPVをYouTubeで見ましたが、山下達郎らしい都会的な曲とENDoの軽快なダンス動画は、達郎の年齢を重ねても今の空気を感じ取れる仕事は流石というしかありません。

初めて山下達郎を聞いたのは「RIDE ON TIME」で1980年大学生になった時でした。その後、1982年リリースのアルバム「FOR YOU」でファンになり、今でもiPhoneで「FOR YOU」を良く聞いています。新しい音楽は聞くようにしていますが、山下達郎の40年経た音楽が今でも新鮮でお洒落に感じるのは本当に凄いと思ってしまいます。大学生の時に感じた新鮮さと時間を経ても色褪せないセンスは私自身の仕事の手本にもなっています。昔は音楽を聴くのはレコード盤から入れたカセットテープで、山下達郎のアルバム「FOR YOU」もレコードジャケットを見て、なんて格好良いグラフィックデザインなんだと感心し、デザインの仕事でこんな方と仕事ができればと憧れていました。若い時は雑誌やレコードジャケットでデザインセンスを吸収するしかありません。ファッション雑誌の「流行通信」もその頃センスを磨くために良く見ていました。

社会人で家具のデザインをするようになり、家具デザインだけでなく、カタログ作りや撮影などPRする仕事も物作り同様、とても重要な事を感じて、様々な分野の方と一緒に仕事をするようになりました。2000年から高原宏さんというグラフィックデザイナーの方と仕事をするようになり、当社の広告やカタログ、海外撮影のディレクションなど多くの仕事をご一緒してきました。私自身、何をされていたより、今の仕事が重要だと思っていたので、高原さんが何の仕事をされてきたのかあまり聞いた事はありませんでした。何年か経ってふとした話から、高原さんが山下達郎や宇崎竜童のレコードジャケットを昔から手がけられていて、流行通信のアートディレクターをされていたと聞いて、本当にびっくりしました。学生時代に憧れた山下達郎の「FOR YOU」も高原さんの仕事で、その方と偶然仕事を一緒にしていた事に運命を感じると同時に、お互い引き合っていた事を感じました。

高原さんからいつか聞いた事ですが「FOR YOU」のジャケットデザインをする前、レコーディングスタジオで山下達郎さんからヘッドフォンを渡されて「自分がこだわっている音を聞いて欲しい」と言われて何回も聴いたそうです。残念ながら高原さんにはそのこだわりは分からなかったそうですが、それだけ音へのこだわりを高原さんへ教えたかったんだと思われたそうです。一緒に仕事をしてものすごく勉強になったそうです。瀬戸さんと仕事をしていてこだわりの部分と達郎さんが一緒だなと思った事が何度もあったと。達郎さんは職人気質が非常に強く、自分の中で消化した独自の理論があり勉強になりますが、瀬戸さんと話をしていると同じだなと何度も思ったと、、。憧れの山下達郎と一緒と言われて嬉しく思った事を思い出しました。

高原さんは温厚な人柄で人の話をじっくり聞いて仕事をされる方で尊敬できる人の一人です。「BRUTUS」山下達郎特集の中にお名前が出てきます。撮影のカメラマンの丸山さんやフランス人のドミニックさんやロスのプロデューサーのYASUKOさんなど尊敬する方々と仕事ができる事に運命を感じる日々です。コロナ禍で会えない日々が続いていますが、そろそろ海外ロケハンを兼ねた取材に行こうかと思っています。(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左上:山下達郎1982年リリースのレコードアルバム「FOR YOU」裏を見ると高原さんのお名前がありました。他に「甘く危険な香り」「高気圧ガール」1983年の「クリスマス・イヴ」「RIDE ON TIME」など多くのデザインを手がけています。左下:アメリカ西海岸をはじめ撮影には必ず立ち会ってディレクションされます。右上:初めてアメリカでロケ撮影したカットで、1923年にフランク・ロイド・ライトJrが設計した住宅です。右下:毎年開催している納入写真コンテストの審査もお願いしています。中はフォトグラファーの丸山さん。

2022.5.31 DESIGNER

SDG’s的な素材を考える

AD CODE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.132

先日、バーチャルスニーカーが150万で売れた事がニュースになっていました。リアルに履く事ができない、CG画像のバーチャルスニーカーで、所有する事だけが目的で、メタバースと言われる架空空間で自分のアバター(分身)に履かせることができるスニーカーです。いくらシリアル番号があり、自分しか所有できないと言っても、PC画像内だけの物に150万を支払う市場があることに驚きと理解できないと思いました。リアルな世界で仕事をしている私などには理解できない事ですが、2次流通と言われる転売では数倍以上の値段で取引がされているようです。CGなので素材劣化の心配はありませんが、、。

リアルなスニーカーでも2次流通は増えていて、有名ブランドの人気モデルの手に入りにくい特別モデルだと購入後すぐに数十倍で転売されています。今はそれを狙って利益目的に転売する人たちも多くいるようです。スニーカー趣味の人には2足購入して1足は保管用として使用せずに飾っているそうです。以前もブログに書いたことがありますが、今のスニーカーには発泡ポリウレタンが多く使われていて、水分と化合物が化学反応を起こし紫外線で進行をさせ、加水分解してボロボロになってしまいます。履かずに大切にしまっておいたスニーカーのソールが履いた瞬間に崩れてしまった話をよく聞きますし、私自身も経験があります。この加水分解はポリウレタン素材には必ず起こる現象なので、加工された瞬間から劣化は始まります。今でもこの加水分解の劣化は持つ時間が長くはなってきましたが、防ぐ事はできず、平均耐用何数は製造から3~5年と言われていますので、消耗品として理解するしかないようです。

車の世界では、1980年~90年代の車が人気で、転売目的で高く取引がされていて、ハコスカやフェアレディZのようなネオクラッシックカーだけでなく、スカイラインGT-R34、マツダRX7といった比較的年数の新しいスポーツカーなど程度の良い車は1千万円を越える金額で取引がされるようになりました。これはアメリカに25年ルールというクラッシックカー登録制度があり、登録から25年以上経た車は右ハンドル輸入禁止解除だけでなく、関税、排気ガス規制も対象外になりアメリカを走れるようになり、映画スピードで人気になった90年代の日本車が若者を中心に人気で、投資の対象にもなっているからです。しかし、旧車で問題になっているのが、スニーカーで問題になっている化学合成パーツです。その時代の車はダッシュボードだけでなく、コンソールやドア内側、ハンドルやシフトノブまで発泡ウレタンが使用されていて、表面のべとつきや形状崩れなど、室内の多くが劣化が進んでいます。また、その時代のアフターパーツが無く代わりの物が手に入らない事です。

私が乗っているカルマンギアは比較的新しい年代はあまり残っていません。これは樹脂パーツの使用が多く、修理やアフターパーツが無いからです。足回りやエンジンなど金属の物はアフターパーツがあるので、交換や修理すれば良いのですが、樹脂パーツはありません。樹脂パーツは金属型で大量に作ると安く製造できますが、金属型が無くなれば、作ろうにも作れないからです。よほどの人気車でなければ、再生品もありません。先日、フランス車のシトロエンの日本ミーティングが行われましたが、2CVやクラッシックDSは多く、日本で1980年代に一番売れたBXという車種の方が少なかったそうです。ネオクラッシックというだけで購入すると大変な目にあう事になります。アフターパーツが多いか、修理できる工場があるか、自分で修理できるか、よく調べて購入しましょう。今、販売されている車は性能も良く壊れにくくなっていますが、液晶モニター、LEDランプや発泡ウレタンなど劣化する機械や素材がメインで、30年後に存在する車は無いのではないでしょうか、、。

家具の世界ではビニールレザーは最強で長持ちすると思われている方が多いのですが、ポリウレタンが使われた柔らかい人工皮革は加水分解が起きやすく、起きにくいと言われる塩化ビニールも数年後には固くなる事が多くあります。化学化合物の劣化は仕方がなく、その都度、張り替えなどメンテナンスを行えば良いのですが、結局は高い物になってしまいます。革はSDG’s的に悪者と言っている人もいますが、牛肉を食べる以上必ず取れる天然素材で、堅牢でメンテナンス次第で長持ちします。靴もポリウレタンでなく、ソールにゴムを使った製品であれば、手入れすれば長持ちしますし、自然由来の素材の素材であれば環境にも優しい物になります。使い捨てでなく、何年使えるかを考えて素材選びをするのもSDG’sの大切な責任の一つです。(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左:1985年から37年間所有している1962年のカルマンギア。インテリアもダッシュボードの上のみウレタン製でほどんどが塗装で、ハンドルも塗装なので直せます。右:1972年以降のカルマンギア。バンパーやウインカーが違いますが、内装は鉄板部分は無く樹脂パーツで覆われています。ハンドルはウレタン樹脂ですが、オリジナルは交換されている物が多く残っていません。ビニールレザーのシートも劣化して硬いものが多くあり、この時代のワーゲンを維持するのは逆に大変です。
今、中古市場で1980年代以降の中古車市場では距離の少ない改造されていないスポーツカーの価格が高騰しています。しかし、内装の劣化が問題にもなっており、樹脂劣化の修復職人もいます。左上:日産・フェアレディZS30型系 (1969年 - 1978年) 日本の中古車市場でも1000万以上。左下:トヨタ・スープラ A80型(1993年-2002年)中古車市場では300万~800万。右上:日産・スカイラインGT-RR34型(1999年 - 2002年)中古車市場では1500万~2500万。右下:マツダ・RX-7 FD3S型(1991年-2003年)中古車市場では300万~1100万

2022.4.28 DESIGNER

西海岸ロケハンの思い出

AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.131
まだ新型コロナ感染が収束しませんが、欧米ではマスク着用義務解除の動きが加速しています。日本では新型コロナを感染症法上の引き下げを検討する動きが出てきました。今後、引き下げになると予防接種や医療費が自己負担になる事もあり、自己での予防の必要性はより重要になりますが、、。でも、そうなると世界との移動もある程度自由になり海外旅行への夢も広がります。美容室で髪を切りながら雑誌を見ていると、見た事のある場所を使っての広告写真がありました。スパーブランドの広告写真の多くは世界統一広告が多く、そのブランドの今の販売ターゲットが見えるので、広告を見るのもこれからのデザインの方向性を感じる大切な時間です。

これはミラノサローネの展示会も同じで、販売先のニーズが企画とデザインに反映されるので、世界的なトレンドとはまた違った方向性の製品が発表される事が多くあります。これはサローネ取材を続けていた時に必ず、今のメインの販売先とターゲットを先に聞くようになってから、そのデザインを理解する事ができました。ロシア、ドバイが好調なのはロシアの富裕層がドバイにも家を持ち、そこへの販売するためのデザインだったり、最近は中国が好調なら中国人の方が好むデザインを取り込むなど、イタリア人ビジネスを理解する事ができました。ハリウッド映画に最近中国の俳優が多く使われるようになったのも、映画を中国に売り込むための手法です。これは、バブル時代に経済で世界を席巻していた日本をイメージした映画が多く作られた手法と同じです。

美容室で見た雑誌の広告はイタリアのブルネロ・クリチネリです。ブルネロ・クチネリは1978年、イタリア・ペルージャで創業したラグジュアリーブランドで、カラーカシミヤを使用したニットブランドでスタートました。ブランドのコンセプトは、スポーツシックラグジュアリーで、イタリアの職人技術を大切にしたスーツ、ジャケット、シューズ&バッグやアクセサリーをはじめ、最近では、クッションやブランケット、キャンドル、ダイニングアイテムなどライフスタイルコレクションも展開しています。その広告を日本でも見かけるようになり、ロロピアーナと同じようにスーパーブランドでなくても、高価格帯の製品が売れるようになったのかと思っていました。

そのブルネロ・クリチネリの広告で使用されていたのが、ロサンゼルスのハリウッドの崖上にピエール・コーニッグが1958年に設計し建てたケーススタディハウスNo22のスタール邸です。ここにはアメリカ西海岸で撮影をスタートする2006年に最初にロケハンした住宅で、その後、当社のツアーでは何度も訪れている場所なので、すぐに分かりました。ファッションテイストはアメリカン・トラディショナル。撮影場所からもアメリカがターゲットなのは理解できます。新型コロナ感染でスペイン風邪以上の死者数を出したアメリカではいち早く経済活動をスタートさせました。好調なアメリカを販売先のターゲットとした販売戦略なのでしょうか、、。スタール邸は何度もファッションブランドの広告に使われ、今でも世界で一番有名な住宅として知られています。久しぶりに見た広告写真にスタール邸が使われていて懐かしく思いました。

初めて訪問した2006年にはスタールの奥様がご存命で、ご主人とピエール・コーニッグの事、家の歴史など説明していただき、実際の住まいとして使われているスタール邸を見る事が出来たのは夢のような時間でした。日本建築が源流のカリフォルニアスタイルの住宅で、全ての窓が引き戸になっていて、室内に立って初めて眼下に見える景色とインテリアの融合が、まさしく日本建築から来ている事を感じました。スタール邸にはその後、何度も訪問していますが、奥様がお亡くなりになって息子さんが相続し、有料公開をされていましたが、今は他の団体が所有し予約制で1時間$60~$90の有料ツアーでの公開になっているようです。今は新型コロナの影響でツアー中止になっていますが、いずれ再開されるのではないでしょうか。

海外ファッションブランドではパンデミック終息後を見据え、リアルに人と会い語り合える、当たり前だった日々の幸せを再認識し、改めてエレガントなウェアに身を包む大切さを、素材感や作りの良さからを感じさせる広告が増えているように感じます。リモートで出歩く事が少なくなり、ファッションがイージーでラフになっているように思います。そろそろ大人のエレガントを楽しみませんか。当社でも素材感を感じるファブリックや上質な製品が出るようになってきています。来月のレイアウトセミナーではエレガントな姿勢や導線をお話ししようかと考えています。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左:ブルネロ・クリチネリの広告写真。ケーススタディハウスNo22のスタール邸で撮影した事はすぐに分かりました。スタール邸もロケハンした、ロサンゼルスで最初に撮影した時にウエストハリウッドにお住まいのYASUKOさんの自宅で愛猫のイチロー君を使って撮影しました。スツールに使用したのはロロピアーナのカシミアファブリックです。
ピエール・コーニッグが1958年に設計し建てたケーススタディハウスNo22のスタール邸。全ての窓ガラスがスライド式で玄関が無く、どこからでも中へ入れます。崖の上にある家で、手すりも無い室内から崖上の庭にリュウゼツランの花が咲いているのが印象的でした。

2022.3.30 DESIGNER

アメリカ最高額の住宅の裏話

AD CODE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.130
東京では桜が満開を過きました。今年の桜は花のつきが良く明治通りぞいは桜のトンネルになりました。春になってもヨーロッパではロシアのウクライナ侵攻が続いており、暗い雲が世の中を覆っています。物価が上がり、ガソリン価格も上昇が続いています。ヨーロッパではイタリアが1リッター260円を超えて、ドイツでも200円後半になったと聞きました。その中、アメリカ不動産住宅市場は高額物件を中心に活況が続いているようです。先日、地上波TVで「全米史上最大・最高額の豪邸」の見出しが気になって見ると、ロサンゼルスの高級住宅地ベルエアに建つ330億円の住宅を、サンフランシスコ在住の野沢直子さんがレポートをしていました。撮影が1時間以内だったので、全ては紹介しきれていませんでしたが相当な豪邸でした。

その後、ロス撮影でお世話になっているYASUKOさんの友人で、高級不動産を扱うブレアさんのホームページに掲載されているかもと、見てみるとベルエアの住宅として掲載されていました。取り扱い物件だった事に驚きましたが、2月28日から3月3日までの入札物件として、2億9500万ドル(354億円)の価格がつけられていました。場所はビバリーヒルズよりハイエンドなベルエアにあり、そのもっとも山の上にある敷地は105,000スクエアフィート(9754平方メートル)でロス市内が360度見渡せます。寝室は21部屋、バスルームが45と1/2、駐車場は50台分との表記でした。バスルームが寝室数より多いのはリビングやプールにあるのはもちろんですが、寝室に2つあるので必然と部屋数より多くなります。ホテルのような建物の規模に対して寝室が少ないと思ったのですが、フォーマルリビングやダイニングも複数あり、いくつ部屋があるのかサイトからもよく分かりません。

テレビでは4レーンある本格的ボウリング場や5つのプール、シアタールーム、キャンディ用の部屋は紹介されていましたが、実際にはリビングスペースだけで20箇所以上、ダイニングもそれに近い数があり、フルサービスのビューティーサロンとウェルネススパ、巨大なスポーツジムもあります。ジムだけならロスの住宅なら当たり前ですが、その中にスムージーやプロテインをサービスする為の大きなカウンターバーがあります。ボウリング場の隣にはゴルフ練習場や屋上にパターゴルフもあり、ガレージは50台の駐車スペースがあり入り口にはバレーサービス用の待合室もあります。普通なら5つ星ホテルの中にある施設が全てあるような住宅で、中を歩くだけで疲れてしまいそうな規模です。いったい何の目的で建てられたのかと思う規模で、ホテルや企業の宿泊施設として使用できそうですが、ベルエアの住宅地にあるため、個人邸としての利用しか出来ません。どんな人がどんな目的で作ったのかを調べてみました。

この住宅は映画プロデューサーから不動産開発業者に転向したナイル・ニアミにより10年以上かけて開発されました。ニアミが全米一豪華な住宅を目指して計画したのですが、2019年完成時に建築構造的問題などの工事遅れなどでコストが増加し5億ドル(当時550億円)で販売をしました。今でもそうですが、1億ドル以上の物件はなかなか売れません。結局、破産しこの住宅は裁判所命令の管財人の管理となっていました。今年になり2月28日から3月3日まで入札販売として希望価格2億9500万ドル(354億円)の値が付けられましたが、最高入札額は1億2600万ドル(151億2000万)で落札されました。当初の金額からは72.5%の値下がりなのでかなりのお得物件です。オークション手数料を合計すると1億4100万ドル(169億2000万)になり、超高額な住宅には間違いありません。購入者はアメリカのファストファッションブランド、Fashion Nova CEOのリチャード・シャギアンです。

Fashion Novaは私自身全く知らないブランドで、アメリカで5つの実店舗しかないスーパーファストファッションブランドです。ファストファッションは落ち目と言われていましたが、Fashion Novaは2006年にインスタグラムを中心としたソーシャルメディアマーケティングを利用したPR活動で売上を伸ばしているブランドで、モデルや有名人、一般に近いインフルエンサーと言われる人たちに有料でPRさせたり、無料配布での広報活動をし、ネット販売がメインのブランドです。スーパーモデルなどを使用せずに、太めアメリカ人のリアルサイズを見せた売り方と身の丈にあった価格が好感を得て若い世代に売上を伸ばしているようです。それでも手数料入れて170億円の住宅を購入できるとは、、。151億円の家だと年間の固定資産税1.25%だけでも2億近く毎年支払う事になります。それにメイド、ガーデナー、プールメンテナンスなど維持費は想像を絶します。それとプールの水道代、、。

テレビでレポーターが1時間かけても半分も紹介できないくらいの規模の住宅です。主寝室だけでも都内の億ション以上の広さで、画像を見ながら想像はしますが、あまりの規模で疲れてしまいました。オークションでの米国の最高販売額の2倍以上、世界記録よりもほぼ50%高い価格の住宅ですが、快適性は?掃除するだけで大変と考えるのは庶民なんでしょうか、、。夢の中のような住まいですが、想像できる規模の住宅が実際には快適なように思います。今年か来年にはアメリカ西海岸ツアーは開催したいと思っています。ここまでの規模は見学できませんが、リアルな住まいをお見せできるように今から探さないと、、。
(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左上:ベルエアの山頂にあるThe One。3階でそんなに大きく見えませんが、天井が高く9754平方メートルの巨大な建物です。左下:エントランスにはアートが置かれた池があり、その中の大理石のアプローチを進みます。ドアは自動ドアです。右下:回転するアートが置かれたエントランススペースで白い大理石の床に空が映ります。右上:白い大理石が続く最初のフォーマルリビング。巨大なソファセットが2セット置かれます。
左上:天井が吹き抜けになっている書斎。天井までの高いシェルフです。左下:アームチェアが16脚置かれたフォーマルダイニング。向こうのガラス収納はワインが数千本入るワインセラー。右上:ファミリーリビング。壁は鏡面のローズウッドの収納でヴィンテージのプレイボーイ誌の表紙が飾られる。右下:5つあるプールのうちガーデンプールに面したプールリビング。壁は巨大なモニター。プールの周りには20台のガーデン寝椅子が置かれます。
左上:シャンプー台が完備されたビューティサロン。3人まで使えるようになっています。美容師も完備、、。左下:巨大なスポーツジム。奥には8人まで座れるスムージーやプロテインを飲むカウンターバーがあります。右上:25メートル以上ある本格的な室内プール。壁面側には長いベンチが置かれます。右下:4レーンのボウリング場で、モニターも完備した本格的なレーンで、ボウリングシューズも各サイズ完備。
左上:巨大なドルビーシアター。40人ゆったりと座れるリクライニングソファが置かれ、普通のシネコンのサイズ以上あります。右上:プールに浮かぶ丸いソファセットが置かれたクラブ施設。建物に中にはダンスフロアがあります。下:21ある寝室はソファセットが置かれテラスやプールがある部屋まであります。メイドさんが何人必要なのでしょうか、、。

2022.2.28 DESIGNER

これからの電気自動車

AD CODE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.129
何回か車について書いてきましたが、小さな頃からクルマ好きで、新車が出るとネットチェックはかかせません。半導体不足や新型コロナ感染禍で自動車の納品が遅れ、輸入ディーラーではショールームへの展示車も不足している状況で、人気車では4年待ちなどの驚く話を耳にしたりします。昔はディーラー在庫の中から選ぶ事ができたのが、今は乗り換え時期の一年以上前にオーダーする必要になっています。また、故障や事故によるパーツ在庫も不足していて、私自身もパーツ不足からバンパー修理するのに半年もかかってしましました。今後、自動車購入はリセールバリューだけでなく、修理期間などのサービス対応も選択基準にいれなければと実感しました。

自動車雑誌のサイトで気になったのが、韓国の自動車メーカーのヒュンダイがヒョンデとして日本へ再上陸し、水素自動車と電気自動車を販売するニュースです。ヒュンダイ自動車は日本国内で乗用車を販売していましたが、2009年に販売不振で撤退しています。この時は日本車の品質と、デザインと価格に対してパフォーマンスが足らなかった事が一番の理由です。その後、韓国国内での反日感情からの不買運動など、両国間での国としてのイメージが悪化し、再上陸はできませんでした。その後、ヒョンデはデザインだけでなく性能や品質を大きく進化させました。ヨーロッパでのWRC(世界ラリー選手権)では2019-20212年連続ワールドチャンピオンになり、昨年はトヨタと最後までポイント争いをして2位になりました。その影響もあり、販売台数はヨーロッパでトヨタを上回り、北米ではホンダを上回っています。

今回、再上陸するヒョンデの電気自動車「アイオニック5」のデザインをネットで見て気になり、原宿に出来た期間限定のポップアップスペース「ヒョンデ ハウス 原宿」を見てきました。ミラノサローネに行けなくなって2年以上、車の展示イベントに行っていなかったので楽しみでした。「ヒョンデ ハウス 原宿」は、ヒョンデが掲げている「LIFE MOVES.」ZEV(ゼロエミッション・ビークル)から生まれるサステナブルで創造的な新しいライフスタイルを表現し、体験してもらうスペースです。JR原宿駅前のジング原宿内に900平方メートルの⾯積を利⽤し作られていました。山手線の向こう代々木体育館側から見ると建物にLIFE MOVES.の文字とアイオニックの写真がラッピングされています。

建物内の一階は3部の展示に分かれていて、1部はLIFE MOVES.に共鳴する4⼈のクリエイターとともに、⾃由で豊かな暮らしのアイデアを創りだす「LIFE MOVES. People」展⽰ギャラリーで、3週ごとに展示が入れ替わります。訪問した時は建築家・長坂常氏の住まう「旅する住まい」で、木製フレームにナイロン布をグラスフィバー樹種で張ったカヤックのようなモバイルハウスを展示。2部はパラメティック ピクセルとして電気自動車「アイオニック5」のデザインコンセプト、パラメトリックピクセルをイメージしたの鏡と映像のインスタレーション空間。3部は実車の展示と車に使用したサステナブルな素材の展示がありました。2階は会員登録すれば入れるカフェラウンジになっていました。

展示されていたアイオニック5の外観はシャープでオリガミのようなエッジの効いた造形で、ひと昔前なら市販前のコンセプトカーに見えるくらい、カッコ良いけど販売するにはかなりの社内的手直しがあるだろうと思えるような思い切ったデザインです。ロングベース車体は、今の売れ筋なっているSUV風で、ドアハンドルは平面で乗降時にポップアップする機能です。仕事がら気になっていたインテリアデザインもコンセプトカーそのままの印象で、手の触れる素材感や、革張りシートのエッジに施されるパイピングには素材違いのファブリックが使われるなど、とても丁寧に作られた仕上がりでした。運転席と助手席には脚乗せのオットマンがあり、停車時のリラックッスモードに使われます。スイッチ類は使いやすく残されており、テスラやメルセデスベンツのCクラスのように大きなタブレットだけがある味気ないダッシュボードではありません。

インテリアに使用される素材は、亜麻仁油を使って加工された革や、植物油から作った塗料が使われたスイッチ類、サトウキビから抽出された糸や、リサイクルペット樹脂からを使ったファブリックなど、サスティナブルな素材が使われています。この辺りは環境問題に敏感な若い世代には共感を持たれそうです。電気自動車メーカーのアメリカのテスラは自動車をスマートフォンやPCのような電気製品的な物作りをしていますが、アイオニック5については未来的な外観デザインの中に環境的を配慮してエコフレンドリーな優しいインテリアを融合させていました。車の出来は素晴らしく韓国の車でなければ、売れるのではないでしょうか。実際、ヨーロッパではドイツでカーオブザイヤーを取り、電気自動車のシェアも上位になっています。韓国での反日感情が収まり、お互い友好的になれれば、日本メーカーの脅威になるのではないでしょうか。

新型コロナ禍で鎖国状態が続き、世界のデザインや、物に触れる機会が少なくなっています。携帯電話のように、世界から取り残されないようにしなければいけません。オリンピックは終わりましたが、日本頑張れ!と思いました。当社も2022年からサステナブルな製品作りに舵を切っています。今年はよりエコフレンドリーな素材を取り入れた製品企画をしなくては、、。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左上:JR原宿駅前のジング原宿でのポップアップスペース「ヒョンデ ハウス 原宿」。右上:建築家・長坂常氏の住まう「旅する住まい」。木製フレームにナイロン布をグラスフィバー樹種で張ったカヤックのようなモバイルハウスを展示。左下:パラメティック ピクセルとして電気自動車「アイオニック5」のデザインコンセプトインスタレーション。右下:展示車両を触れるエリア。
左上:電気自動車「アイオニック5」。 L4,635㎜×W1.890×H1.645とかなり大きい。展示車両はグラビティゴールドマットという艶消しのゴールド。マットな塗装がエッジを際立たせています。価格は479万円~589万円で120万程度の補助金がある。左下:試乗車。外で見るとマットなボディがセラミックように見えます。ドアハンドルがポップアップしています。右上:本革の白で、外観と違い柔らかな印象です。運転席、助手席はリラックスモードで脚置きが出ます。右下:インテリアに使用されている素材はサステナブルな素材で、白革シートの後面はエコファブリックが使われていて、通常車の後面は人工レザーが使われますが、今はこのほうが、好感を持てます。