先日開催いたしました当社のオンラインセミナー「ミラノサローネレポート」には、2日間で1500名を超える多くのお客様にお申し込みいただきました。ご参加ありがとうございました。リアルタイムでご視聴いただき、この場を借りて御礼申し上げます。今回は私もミラノサローネを視察するためイタリア・ミラノを訪れました。最新の家具やインテリアデザインに触れることはもちろんですが、展示会場だけでなく、実際にミラノの街を歩くことで見えてくる発見も数多くありました。
ミラノの街を歩いていると、歴史ある建築物が数多く残され普段歩いている東京とは全く違う風景なことに気づきます。何百年も前に建てられたであろう建物が現代でも当たり前のように使われ、住宅はもちろんカフェやショップ、オフィスとして人々の暮らしに溶け込んでいます。その中に時折現れる新しい建築は、むしろ新鮮に見えるほどでした。ヨーロッパで古い建物が多く残る背景には、石やレンガ、コンクリートを用いた堅牢な建築であることや、日本ほど地震が多くないことが理由だそうです。歴史的建造物を保護する制度や法律も整っています。しかし、実際に現地を歩いて感じたのは、それだけでは説明できない文化的な価値観の存在です。特に印象的だったのが、市内を走るトラムでした。最新車両もありますしたが、長年使われてきた古い車両(サビだらけの外観で、いかにも長く使われている個体)も現役で活躍していました。大切に整備されながら街の風景の一部として受け入れられている姿を見ていると、法や制度での制約にとどまることのない「古いものを活かし続ける」という考え方が人々の暮らしに根付いているように感じました。
日本の街並みは少し異なります。木造建築を中心に発展してきた歴史や、地震・台風など自然災害への対応、戦後の急速な都市開発などを背景に、建て替えを前提としたスクラップ&ビルドの文化が形成されてきました。東京を歩けば、新しい高層ビルや再開発が次々と進み、常に街が更新されています。もちろん、どちらが優れているという話ではありません。近年の日本でもリノベーションや既存建築の活用が広がり、「ストック活用」という考え方は着実に浸透しています。一方で、ヨーロッパでは古いものに新たな価値を与えながら使い続ける文化が色濃く残っています。そうした人々の価値観そのものが、街並みや暮らし方の違いとして表れているように思いました。また、この考え方は環境負荷の低減という観点からも注目されています。建物の構造体を活かしながら改修を行うことは、新築に比べて資源やエネルギーの消費を抑えることにつながります。長く使うことそのものが価値になるという発想は、今後ますます重要になっていくのかもしれません。
私たちの家具づくりも、この考え方に通じる部分があります。当社では見た目のデザインだけでなく、長く使い続けていただける構造や内部仕様にもこだわっています。また、多くの製品でメンテナンスや張り替えに対応しており、長年ご愛用いただいているお客様から修理のご依頼をいただくことも数多くあります。先日も20年以上前に納品した製品のメンテナンス・リペアを行いました。時を経て再び活躍する姿を見ると、とても嬉しく感じます。流行を追うだけでなく、長く愛されること、使い続けることで価値が深まること、ミラノの街を歩きながら改めてその大切さを実感しました。これからも、お客様に安心して長く使っていただける家具づくりを続けていきます。(開発部 渡辺)