4月末、インテリア視察のためにイタリアミラノに伺いました。毎年開催される国際的なインテリアの祭典であるサローネでは、数多くのトレンドやブランドごとのストーリーを存分に味わうことができました。日本に戻る前にもう1箇所、フランスパリを訪れました。今回の滞在では、オルセー美術館、ルーヴル美術館、ブルス・ド・コメルス – ピノー・コレクション、ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸などを巡り、建築やアート、インテリアを中心に多くの刺激を受けました。もちろんエッフェル塔やエトワール凱旋門といったパリを象徴する場所にも足を運びました。限られた日程だったため、スケジュールはかなり詰め込み気味ででしたが(美術館のスケールもあって1日3万歩近く歩きました、、、)その分非常に濃密な時間となりました。4月下旬のパリは天候にも恵まれ、雨に降られることもなく、歩いていると少し汗ばむほどの陽気でした。歴史的な街並みの中に、現代的なデザインや新しいカルチャーが自然に溶け込んでいる空気感は、やはり現地でしか味わえない魅力があります。
今回の視察を通して特に感じたのは、デザインは単体では成立しない、ということです。美術館に展示されている作品だけでなく、建築、照明、素材、ひとの流れ、空間の余白に至るまで、すべてが一体になって空間を構成していました。どの場所も見せるための設計ではなく、どう感じてもらうかまで考えられたデザインが存在していました。印象的だった一つは、ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸です。ル・コルビュジエが提唱した近代建築の思想も多く取り入れられた住居兼ギャラリーで閑静な住宅街に佇みます。建築だけではなく、光の入り方、視線の抜け方、家具との距離感まで細かく設計されており、空間そのものが一つの作品として完結していました。ただ美しいだけではなく、「人がどう過ごすか」を軸に考えられている点にデザインに対する思いやりを強く感じました。家具づくりにおいても、これは常に重要な視点だと感じています。家具は単体で存在するものではなく、空間や人との関係性の中で本領を発揮します。どのような場所で、どのように使われ、どんな時間を過ごしていただくのか。そうした背景まで含めて考えて初めて製品化へのスタートラインに立つことができる。デザインは単に形や構造を構築するのではなく、そういった想いが必要なのだと感じました。
また、パリの街を歩いていて印象的だったのは、古いものと新しいものの共存です。何百年と使われてきた建築や家具が今も自然に街に溶け込み、その中に現代的なデザインが違和感なく存在している。流行だけを追うのではなく、長く残ることを前提に考えられているからこそ、時間が経っても価値を持ち続けているのだと思います。ルーヴル美術館の歴史ある建築とアイコニックなガラスのピラミッドは、重厚な歴史的建築の中に現代的なガラス構造が自然に溶け込み、「古いものを残しながら現代に合わせてアップデートしていく」という考え方を体現しているように感じました。2031年頃までを見据えた改修計画も進められており、歴史的建築であっても止まることなく進化を続けています。これも家具づくりにも通じる考え方であり、長く愛されるものほど、時代に合わせたアップデートが重要なのだと改めて感じました。
今回の視察では、多くの空間や作品に触れる中で、改めて本質的なデザインとは何かを考える機会になりました。見た目の美しさだけではなく、人の感覚や体験まで含めて設計していくこと。その積み重ねが、長く愛されるものづくりにつながっていくのだと感じています。これからも国内外でさまざまなものに触れながら、新しい感覚を取り入れ、より魅力的な家具づくりへと繋げていきたいと思います。(開発部 渡辺 文太)