AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.180
今年も4月のミラノデザインウィークへ行ってきました。24歳の時からミラノサローネへ行っているので、もう40年通っていることになります。最初は市内中心近くにあった見本市会場のフィエラ・ミラノ・シティで行われる国際家具見本市で、Duomoから7駅の便利な場所にありました。その会場までは9月に開催されていて、最後に行った年は真夏のように暑くクーラーのない会場はブースを照らすハロゲンライトの照明で、建物内がサウナのような温度だったことを覚えています。(その頃はミラノ市内のショップでもクーラーがないのは当たり前でした)2005年からミラノ市郊外の今のフィエラ・ミラノ・ローで開催されるようになり、暑さからは開放されましたが、地下鉄でDuomoから17駅と30分くらい遠くなり、会場も巨大で歩くことが大変になりました。そしてその頃から元工場跡で開催されるトルトナエリアやミラノ市内中心に様々なイベントが行われるようになり、世界中から人が集まるようになりました。
ミラノサローネはドイツ、ケルンで開催されるケルン国際家具見本市と2大家具見本市として知られ、同時に開催されるキッチン展は隔年でイタリアとドイツで別年に開催されるようになり、ミラノサローネでキッチン展が行われる年はインテリアコーディネーターの方が多く行かれるようになりました。この数年、このドイツとの共同的なキッチン展が崩れ始め、ドイツのキッチンブランドはミラノ市内でのショールーム展示に力を入れて、フィエラ会場には出なくなっています。そのため年々、館内のスペースが余るようになり、今年も通路が広くなり余ったスペースを隠すような幕が張られるようになりました。昨年の照明展も同様でした。家具ブランドも同じで、主要ブランドが多く出展していたフィエラ会場も市内へショールームをオープンさせ常設展示をするようになり、10年前まで訪問していた主要メーカーが半減しました。
これは展示会場での高騰する出展料や巨大なブースを設置するコストよりも市内でショールームを出す方が経費的に良いという判断です。昔は世界中からバイヤーが集まり、その1週間に1年の売上を作るための展示会で、購入するために見るバイヤーも、販売する側も真剣で、初日から3日間のバイヤーデー(一般人は入館不可)では真剣に販売目的の熱気が感じられました。今は、主要ブランドは世界エリアでエージェントが決まっており、主要都市にはフランチャイズの代理店があり、新規での仕入れが不可能になり、やりとりも決済もインターネットから簡単にできるようになったので、展示会の見せ方もバイヤー主流からユーザーへのイメージを見せる場へと変わりました。そのイメージの見せ方に人が集まるようになり、市内イベントではその集客を見込んで、デザインのお祭り的な期間となり、家具ブランド以外のインスタレーションなどブランド広告のイベントが多くなり、それに多くの人が集まるようになりホテル代高騰を招きました。
この数年、サローネ時期の渡航経費の高騰には困りますが、今年は円安が進みユーロが2割程度上がったこともあり、この数年宿泊しているホテルが一昨年一泊6万円程度だったのが昨年は9.3万円になり、今年は12万円以上になってしまいました。当社がミラノサローネツアーを開催していた15年前には2万円台だった頃から比べると異常な金額です。そのため、今年は日程をいつもの初日の水曜から三日間滞在を、金曜から日曜の一般デーにしてホテル代を少しでも安くしました。(最終日の日曜の宿泊代は半額に下がる)そして、私だけはサローネ開催時期の後の様子を見るために三日間延泊をして市内を回ることにしました。最終日の日曜に回るのも初めてでしたが、サローネ期間が終わってからのミラノは40年通って初めてのことです。最終日の日曜はファッションブランドのイベントは長蛇の列で入館は諦めましたが、日本でも知られる有名家具ブランドのショールームは閑散としていました。一般市民は家具ショールームには興味がないんだなと、、。
月曜から1/5の宿泊代になった同じホテルでは、急に朝食会場が混み出しました。サローネ期間では席が満席になることはありませんでしたが、通常のビジネスマンで一杯になり賑わっていました。たしかに仕事での出張でホテル代は10万円以上は出せないし、ホテルも日本のビジネスホテルグレードなので、普段はビジネス客が使用するホテルだったんです。サローネ期間が終わってから街を歩いて驚いたのが、あれだけ賑わっていた街中が閑散としていて、家具やキッチンブランドのショールームでは入館規制もなく、誰もいなくなった入口から普通に入り、中では普段の時間に戻ってゆったりと仕事をしているスタッフが少しいるだけで、見放題、座り放題、写真の撮り放題でした。ブレラにある人気キッチンブランドも期間中は長蛇の列でこの数年見ることも諦めたり、入れても人が多くて写真も撮るどころではなかったのですが、あの喧騒はどこに、、。
デザインウィーク期間中しか知らなかったこともありますが、こんなに静かに歩けるミラノだったんだと初めて知りました。来年からは期間中にショールーム以外を回り、終わってからショールームを回って歩こうと思いました。新作もそのまま展示しているし、ゆったりとインテリアや製品を見ることができます。お祭りのようなインスタレーションを見るのもいいのですが、それが仕事に役立つのかと考えると、期間中だけ楽しく見える万博的な展示を見ることよりも、有意義な時間を過ごせそうです。期間中に行く人が減れば、ホテル代も少しは下がるのではないでしょうか、、。さて、今年のミラノデザインウィークのレポートはゆったりとした空間で撮影した写真が多くあり、見応えのあるレポートができそうです。お楽しみに!(クリエイティブディレクター 瀬戸 昇)