2026.08.29|

DESIGN

20年前の製品をこれからもつくり続けるために

先日、これまで約20年間にわたり当社の金物製品を製造していただいていた工場から、製造機械の老朽化により今後の生産を継続することが難しいとの相談がありました。長年お願いしてきた工場での製造を終え、新たな金物工場で生産を引き継ぐことになりました。長い年月の中で製品そのものはもちろん、製造方法や設備も大きく変化しています。

今回改めて当時の図面と現物を確認してみると、20年前に描かれた詳細図は手書きで、実際の製品を測定してみると、図面上の寸法と現物には数ミリ単位の違いもありました。当時の開発が間違っていたということではありませんが、20年前は現在のように3D CADやCGを使って完成形状を画面上で簡単に確認できる環境ではありませんでした。当時は工場の職人さんが図面をもとに加工し、実際の現物を確認しながら当社の開発担当と打ち合わせや微調整を重ねて製品を完成させていました。いわゆる現物合わせの要素も多く、長年の経験や職人さんの技術によって成立していた部分も大きかったのだと思います。もちろん人の手による製造にも大きな強みがあります。細かな寸法変更や治具の調整、特注品への対応など、その場の状況に応じて柔軟に対応できることは、職人さんによる製造ならではの良さです。一方で、時代が変わるにつれて製造現場を取り巻く環境も大きく変化しています。

新しくお願いするの金物製造工場では、ロボットアームによる溶接やCADデータをもとに複雑な曲げ加工を自動で行うマルチベンダー機など、製造設備そのものが大きく進化しています。こうした設備を使うことで、加工精度を安定させ、同じ製品を高い再現性で生産することが可能になりました。ただし近年では、製造業全体で人材不足や設備の老朽化が課題となっています。古い機械を維持するための部品をつくっていたメーカー自体が廃業してしまい、修理したくても必要な部品が手に入らないというケースも増えています。長年続いてきた製品を、これまでとまったく同じ方法でつくり続けることが少しずつ難しくなっているのも現実です。以前は柔軟に対応できていたことが、設備や人材の問題によって難しくなってきています。今回の工場変更では、これまでの製品をそのまま新しい工場へ移すという考え方ではなく、新しい工場の設備や加工方法に合わせて構造そのものを一からすり合わせることにしました。新しい設備だからこそ可能になる加工や、品質をさらに向上させられるという点も多く、それぞれの特性を理解した上で製品に合った製造方法を選ぶことが重要です。

今回は20年前の図面をもとに、新しい工場で製造するためのCADデータを新しく作成しました。ところが、CAD上で正確に寸法を入力していくと、手書きの図面では気づかなかった寸法同士の辻褄が合わない部分も見つかります(CADは良くも悪くも、入力した寸法を正確に表現します、、、)。実際につくってみると、今度は加工上の公差や溶接によるわずかな歪みなど、図面だけでは分からない部分が出てきます。一度試作をつくって終わり、というわけにはいきません。従来品と並べて見比べ、寸法や形状、仕上がりを確認し、必要であればまた図面を修正して試作を行う。この繰り返しによって、従来の製品をできるだけ忠実に再現しながらさらに品質を高めていきます。20年前の製品を20年前とまったく同じ方法でつくり直すのではなく、製品の形状や品質を再確認し現在の設備と技術でもう一度製品をつくり直していきます。

今期で41年目の当社では、長くご愛用いただいている製品をできる限り廃盤にせず、これからもつくり続けていくことを大切にしています。何年も前に生まれた製品を現在も変わらずお客様に届ける、そのためには、昔の技術をそのまま残すだけではなく時代に合わせて製造方法や設備を更新して柔軟に対応していくことも必要です。長く使える家具をつくるためには、長くつくり続けられる仕組みも必要です。これからも長く製品をつくり続けていくために、従来品の良さをしっかりと引き継ぎながら製品開発や品質向上を進めていきたいと思います。

左:製品形状や守りたい重要な箇所の確認では工場の方々との製品に対する思いをリンクさせないといけません。左:最新の機械でのパイプのカットや曲げは精密な寸法管理の元、形状をスピーディーに作り出していきます。
機械や加工方法は各工場にそれぞれ得意不得意が発生します。複雑な曲げが得意な工場や、試作が得意な工場など、用途によってお願いする場所を選定する必要があります。
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