D CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.185
毎年、秋に発表する新製品で悩むのが、木部塗装やファブリックの組み合わせです。デザインや構造を考えるのは慣れてはいますが、白い紙の上で鉛筆でスケッチしてきたせいか、製品に使用する塗装色やファブリックを決めるのが、いつも最後になって苦手です。特にカタログ撮影用に製作する製品は、カタログやホームページで長く使用するので、いつも保守的な色を使うことになってしまいます。インテリアの中に置かれる家具は、空間の色に合わせられることが多く、新しいトレンドのヒントを探すのですが、アメリカ西海岸でカタログ撮影を続けていたことと、アメリカのデコレーターの仕事が世界のトレンドになることが多く、アメリカ建築のインテリアに使われる色を気にすることが多くなっています。
日本と違い、アメリカ建築の内装の多くはドライウォールに水性ペイントで塗装されています。アメリカの建築はリノベーションが70%以上を占め、一般住宅はDIYとして自ら補修や再塗装をして使い続けています。ロサンゼルスの多くの中間層以上の家では、通いのメイドさんはもちろん、南米出身でラティーナと呼ばれる方々に、庭仕事や修繕などの日々の雑用をお願いしています。日本で工務店さんにお願いするよりずっと安く、なんでも引き受けてもらえます。ロスでお世話になったプロデューサーの靖子さんの家でも、出入りの修繕を頼む方がいて、電気工事からドアや階段の修繕、外壁塗装だけでなく、室内の壁や床の塗り直しまでこなします。そういった方々がいるおかげで、西海岸の住宅は100年以上たってもきれいに保たれています。もちろん一般家庭でも室内塗装は普通に行われ、クロス貼りは本布で高級住宅の寝室に使われるか、ビニールクロスはトイレなど部屋の一部にしか使われていません。クロス貼りと違い、塗装の方が安価で気軽にリフォームできることも人気の理由かもしれません。
アメリカのホームセンターに行かれた方は、見たことがあると思いますが、DIYとは思えないような建材やドア、キッチン、巨大冷蔵庫、衛生機器など、一軒丸ごと家が建つ材料がそろっています。特に販売されている工具類は丈夫な物が多く、私はドライバーや車用の工具などは必ず買って帰ります。これらの工具は本当に丈夫で、20年以上使ってもぜんぜんダメになりません。ホームセンターで驚くのは、塗料売り場の大きさと種類の多さです。巨大なものは5ガロン(19リットル)入りのバケツで塗料を売っているのですが、それも数千色の中から選べます。塗装専門窓口があるホームセンターでは、色番号を指定するとその場で調合してサンプルを作ってくれ、色が決まると巨大なバケツに入れて販売してくれます。アメリカの室内用塗料の市場は2026年には3兆円と言われますが、日本では10分の1の2千億円ほどと言われています。アメリカのホームセンターでの塗料売上の割合は、大型家電の冷蔵庫と並ぶ1位だそうです。
アメリカの2027年のインテリアカラーは?と調べると、各塗料メーカーが2027年トレンドカラーのカラー・オブ・ザ・イヤーとして、10月中旬に発表していました。3,500以上の色を販売する高品質な室内用塗料メーカーとして人気のBenjamin Moore(ベンジャミン・ムーア)の2027年のカラー・オブ・ザ・イヤーは「Webster Green HC-130/ウェブスター・グリーン」。汎用性が高く、存在感のあるこの色は、柔らかなブルーとピンクに、深みのある銅色、オリーブ色、バーガンディ色を組み合わせたグリーンで、落ち着きを保ちながらも色彩を添え、デザインに個性を与え、あらゆる空間に静かな優雅さをもたらすそうです。日本の伝統色でいえば緑青(ろくしょう)をくすませたようなグリーンは、日本ではあまり使われない色ですが、この数年、ミラノサローネのファブリックでグリーン系が多く使われていることを思い出しました。たしかに、温かみのあるグリーンはクラシックだけでなく、モダンな空間にも合うように思いました。
北米で最大の建築用塗料メーカーであるSherwin-Williams(シャーウィン・ウィリアムズ)の2027年カラー・オブ・ザ・イヤーは「Celery SW 6421/セロリ」。明瞭さと快適さが融合した、軽やかでハーブのようなグリーンで、新鮮な視点と優雅さを体現しています。かすかに黄色みを帯びたこの柔らかく落ち着いたグリーンで、軽やかなパステルカラーと、地に足の着いたハーブのような色合いの絶妙なバランスを実現しています。こちらのグリーンは、緑青(ろくしょう)を明るくしたようなグリーンです。北米最大級のホームデポで独占販売されている内外装用塗料を製造しているBehr Paint(ベアー)のカラー・オブ・ザ・イヤーは「Grounded T27-01/グラウンデッド」。ブラウンがかったオリーブグリーンで、苔のようなオリーブ色に、土のような茶色のニュアンスが加わった色は、日常の空間を自分だけの聖域へと変え、静かに生命を宿す自然の重層的な複雑さを反映しているそうです。北米第2位のPPGインダストリーズ社傘下の塗料メーカー、Glidden(グリッデン)のカラー・オブ・ザ・イヤーは「Artifact/アーチファクト」。温かみのあるスモーキーブルーで、親しみやすく落ち着いた色合いです。空間の個性を損なうことなく、空間をリフレッシュさせる効果があるそうです。
今年のアメリカの塗料メーカーの2027年カラー・オブ・ザ・イヤーは、落ち着いたグリーン系やブルー系が多いように感じました。特徴があって目立つというより、柔らかな落ち着いたニュートラルカラーに合わせ、調和させるための色でした。デザインと同じように、柔らかな安定をインテリアに必要としているように思います。アメリカの塗料メーカーの塗装色を見ると、微妙な変化の色が並び、昔よく使った印刷用のDICの色見本を見ているようで、この組み合わせを考えているデコレーターはすごいなと思いました。2027年モデルの新作発表会のインビテーションカードには、ウェブスター・グリーンを使用しました。当社の製品は環境に配慮したやさしい製品へと進化しています。発表会でお待ちしています。お楽しみに!(クリエイティブディレクター 瀬戸 昇)