2026.09.30|

DESIGNER

地球に優しいものづくりは当たり前に

D CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.184
7月26日に発生したネパールの大規模土石流では多くの方が亡くなり、今でも捜索が続いています。ネットで流れるニュースは、最初はフェイクニュースかと思うほどの衝撃映像で、川を流れ下る土石流が人々を飲み込む映像に恐怖を覚えました。その映像を見ながら、2017年7月7日に九州北部を襲った豪雨を思い出しました。大分県と熊本県を襲った豪雨の当日、大分県の日田市にある工場へ出張する予定で向かいましたが、高速道路や一般道も通行止めでたどり着けず、翌日、回り道をしながら、やっとの思いで日田市内を訪れました。山から流れた樹木が橋や鉄橋を押し流し、被害の大きさと状況を目の当たりにして、その場に立ち尽くしたことを今でも鮮明に思い出します。災害を引き起こしているのは地球環境の変動ですが、直接的な要因は、森林の手入れが追いつかず、山が荒れていたことだと後で知りました。その時から、当社の環境問題への取り組みが本格的に始まりました。当社でも何かできないか、小さなことでも構わないから取り組んでいかなくてはたいへんなことになる。今からでも遅くないと……。

世の中ではSDGsのマークが見られるようになり、SDGsのマークを使うのは大企業がするべきことなのかなと思っていたのですが、大水害を目の当たりにし、地球環境に悪いと思われることはやめるという取り組みを、当社でも進めていこうと心に決めました。まず始めたのは梱包材の見直しで、石油由来の素材から地球環境に優しい素材へ変更することにしました。椅子やソファの養生材をビニール袋から不織布へ変更し、その不織布も自然由来で土に還る素材としました。テーブルなどの養生材は発泡スチロールから再生紙に変更し、養生用テープやエアパッキンなど、どうしても石油由来になる素材にはリサイクルされた素材を使用するなど、徹底した見直しを行いました。しかし、一番たいへんだったのは、協力していただいているすべての工場で取り扱いがなく入手が困難だったことや、素材のコストアップなど、さまざまな理由でなかなか進まなかったことです。当社ではコストアップしても構わないという強い意志を示し、進めることにしました。説得する際には、数年後には家具業界でもそれが当たり前になっているはずだと説明しました。あれから10年近くになりますが、家具業界ではなかなか進んでいないのが実情です。

その後、2020年からは二酸化炭素削減のために、家具本体の素材の見直しを行い、南洋材など海外からの輸入材の削減に取り組みました。ソファの骨格を作る材は、それまではラワン材と呼ばれる東南アジア産の木材(フタバガキ科などの広葉樹の総称)を合板にしたラワン合板を使用していました。その合板は、4000キロ以上離れた東南アジアで伐採された材を合板に加工し、船で運ばれ、日本の港に着いてから、地方にある家具工場まで数百キロ運ばれます。その合板を、大分県日田市にあるソファ工場の近くの合板工場で作られた針葉樹合板に切り替えることにしました。その合板工場では、半径100キロ以内で伐採された杉やヒノキ材だけを使用しています。主に使われるのは、建築材に不向きで、二酸化炭素を吸収できなくなった大径木で、これを合板に加工しています。12ミリ以上の主材に使用しているラワン合板を、すべてその工場で作られた針葉樹合板に切り替えることにしました。その時にもあったのが、材料が現在のルートでは入手困難であること、コストアップ、節の多さ、強度不足など、さまざまな理由から、工場が使いたがらないという問題です。強度がラワン合板より少し劣るのであれば、12ミリ合板を24ミリにすることで同等の強度を保てます。当然、コストアップしても構わないと、強行して仕様変更を行いました。

その時に同時に行ったのは、主材の見直しだけではありません。ソファの骨格を覆う薄板を、再生紙を使用した板材に変更したり、バネの上のクッション材にリサイクルされたリボンデッドフォームを80%以上使用したり、置きクッションの中身をポリ綿から、ウレタンフォームの製造時に出た端材に変更したりするなど、徹底したカーボンニュートラル化を実施しました。今では、当社で販売されるソファは、新たな石油由来素材の使用率を極限まで減らした製品になっています。二酸化炭素を吸収する森林の杉やヒノキなどの針葉樹を伐採してカーボンニュートラルになるのは不思議に思われるかもしれませんが、針葉樹は二酸化炭素をセルロースという物質に変えて体内に吸収します。しかし、杉などは40年以上経つと二酸化炭素を吸収しなくなります。そのため、計画的な森林管理が重要になります。また、その材を燃やすのではなく、住宅や家具として使用することによって、二酸化炭素を固定することになります。当社のソファは外国産の材を極力減らし、工場近くで育った針葉樹を使用することで、輸入時の二酸化炭素排出を抑えています。さらに、二酸化炭素を固定した材を使用することによって、カーボンニュートラルを実現しています。

当社では、1985年から不要な製品を作らない受注生産を行っており、廃棄製品のゼロ化を実現するとともに、製品を廃盤にせず、息の長いデザインと製品化を行ってきました。そして、中身や梱包材についても、環境に優しい製品化を行っています。最近のイラン情勢によるナフサ不足からビニール袋不足が生じましたが、当社では自然由来の不織布を使用していたため、まったく影響はありませんでした。当社の取り組みを続けていて良かったと思える時でした。関東では豪雨災害が続き、今も34日以上にわたって雨が続いています。ますます環境への配慮が求められる時代になると思います。この秋の新作では、新しい取り組みとしてクッションの素材を一新します。試作の最終段階に来ています。地球に優しいデザインと性能をお見せできると思います。お楽しみに!(クリエイティブディレクター 瀬戸 昇)

左上:MD-3211ソファのフレーム。ほぼすべてが国内産材料で作られています。フレームは杉・ヒノキの針葉樹合板で、背には再生紙を使用しています。座のバネは大分県日田市の金属工場で、脚部のアルミ脚はリサイクルアルミ材を使用して山形市で鋳造されています。左下:大分の最新の合板工場で、排煙や臭いなども出ないように環境に配慮した工場です。右上:大径木だけでなく、間伐材に近い小径木など、さまざまなサイズの木材が使用されます。材木の保管場所から汚泥が流出して環境に影響を及ぼさないよう、材木置き場にもごみがありません。右下:合板プレスライン。工場内もごみ一つない工場で、製造の際に出る木皮や端材は乾燥用の燃料として使用されています。
2017年7月7日に発生した九州北部豪雨では、山林から多くの針葉樹が土石流と一緒に流されました。上:多量に流れ出た針葉樹。20万本が流出したと言われています。下:日田市の花月川橋梁は、橋梁ごと流されました。前日の夜間に流出し、現地に行った際には、テレビの取材が来たばかりでした。日田駅から先の久大本線の復旧には1年以上かかりました。工場はこの現場から歩いてすぐのところにあり、堤防が決壊していたら、なくなっていたところでした。寸前のところで、木材をせき止めていた鉄橋が流され、難を免れたそうです。
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